日本、フィリピンに614億円のODA
2012/03/29
最大案件は中部ルソン接続道路278億円
洪水被害緩和やミンダナオ農業支援なども
3月29日マニラにおいて、卜部敏直駐フィリピン日本国大使とフィリピンのアルバート・デル・ロサリオ外務大臣との間で,総額614億1,300万円を限度とする下記の円借款6件(計590億1,900万円)及び無償資金協力2件(計23億9,400万円)に関する交換公文の署名を行った。対象案件の概要,背景,期待される効果は以下のとおり。
1.円借款
(1)中部ルソン接続高速道路計画(227億9,600万円)
マニラから北方100km圏に位置し,産業の集積による発展が見込まれる中部ルソンの都市タルラックとカバナツアンを連結する高速道路及びインターチェンジを建設するものである。カバナツアン・マニラ首都圏間の所要時間が大幅に短縮され、中部ルソン地域とマニラ首都圏間の物流の改善を図ることで、中部ルソンの経済開発に寄与することが期待される。
(2)幹線道路バイパス計画(Ⅱ)(45億9,100万円)
マニラ首都圏と北部近郊都市を結ぶ通勤・物流のボトルネックとなっているプラリデル市周辺においてバイパス道路を建設し、既に供与済みのフェーズⅠ(2002年度円借款)と併せ、プラリデル市周辺の渋滞緩和、輸送能力・効率向上を図り、マニラ首都圏及び北部近郊地域の経済社会開発に寄与することが期待される。
(3)パッシグ・マリキナ川河川改修計画(Ⅲ)(118億3,600万円)
マニラ首都圏は沿岸低地地域のため、洪水の深刻な影響を受けてきているマニラ首都圏内を貫流するパッシグ・マリキナ川において、日本の優れた防災技術を活かし,構造物(護岸建設・改修,浚渫,堤防建設)及び非構造物(流域情報ウェブサイト構築,ハザードマップ作成,啓発活動等)への洪水対策を行い、既に供与済みのフェーズⅠ、Ⅱ(1999年度,2006年度円借款)と併せ、マニラ首都圏の洪水被害の軽減を図り、同地域の安定的な経済発展に寄与することが期待される。
(4)洪水リスク管理計画(カガヤン川,タゴロアン川,イムス川)(75億4,600万円)
大規模穀倉地や産業集積地を抱えるカガヤン川、タゴロアン川及びイムス川の3河川流域において,構造物(護岸,堤防,排水施設,遊水池の建設等)及び非構造物(ハザードマップ作成等)への洪水対策を行い、3流域における河岸侵食や氾濫等の洪水被害の軽減を図ることで、これら地域の持続的・安定的な経済発展に寄与することが期待される。
(5)灌漑セクター改修・改善計画(61億8,700万円)
フィリピンの11地域において既存灌漑施設の改修,施設運営維持管理のための水利組合の強化、営農支援等を実施する。灌漑施設の維持管理体制強化を図り、持続的な灌漑システムの確立を通じて、灌漑面積の拡大や農作物生産高の向上により、食料供給の安定化と農民の所得向上に寄与することが期待される
(6)ミンダナオ持続的農地改革・農業開発計画(60億6,300万円)
ミンダナオ地域における農業インフラ整備(市場アクセス道路、橋梁、灌漑施設、収穫後処理施設、村落給水施設)を行い、作付率、収穫量、市場へのアクセス等の向上を図る。フィリピン政府の農地改革(小規模農家への農地配分や公用地への入植)を支援し、ミンダナオ地域における小規模農家の生産性向上、農業生産の拡大と所得向上を図ることで,同地域の持続的発展に寄与することが期待る。
<供与条件>
上記(1)、(2)、(4)、(5)、(6)について
(ア)金利:年1.40%(コンサルティング・サービス部分は0.01%)
(イ)償還期間:30年(10年の据置期間を含む。)
(ウ)調達条件:一般アンタイド
上記(3)について
本邦技術活用条件(STEP)
(ア)金利:年0.20%(コンサルティング・サービス部分は0.01%)
(イ)償還期間40年(10年の据置期間を含む。)
(ウ)調達条件:タイド
2.無償資金協力
(1)広域防災システム整備計画(10億円)
フィリピンでの地震・津波に係る災害リスク軽減・管理対策の支援のため、日本の測定機材(地震計,潮位計等)や予警報装置等防災関連機材を整備するものである。フィリピンでの地震・津波等災害発生時の情報収集能力が向上し、災害関係機関及び一般市民への災害情報伝達の迅速化が図られる。また、日本も各種の観測データがリアルタイムで入手することができるようになり、津波予測の精度向上が可能となることから、日本の防災対策にも貢献することが期待される。
(2)第二次農地改革地域橋梁整備計画(13億9,400万円)
台風の常襲地域であるルソン島東部オーロラ州で、現在橋梁が存在しないために渡河の大部分をボートに依存しているウミライ川河口に位置するウミライ地区において、橋梁及びその取付道路を建設するものである。台風通過時期など河川の増水・洪水時に対岸への交通途絶が発生していた地点で、災害時にも対岸への避難や保健医療施設へのアクセスが確保できるようになり、周辺地域住民の生活環境改善に資することが期待される。
上記の円借款(3)と(4)と無償資金協力案件(1)と(2)は、2009年12月に発表した気候変動対策に関する日本の2012年までの途上国支援の一環として実施することとした案件である。日本は、COP17で得られた成果を踏まえ、すべての主要国による公平かつ実効性のある国際枠組みの構築に向け、フィリピンと引き続き気候変動分野で連携していく方針である(12年3月29日の日本外務省発表より)。