日本企業の海外進出意欲、過去最高に

2012/03/05

特に中国、タイなどに関心:ジェトロ調査結果
採算為替レートは1ドル85円、1ユーロ115円

 日本貿易振興機構(ジェトロ)は2011年11月~12月にかけて、日本企業9,357社(うち中小企業は82.7%)に対し、輸出や海外投資などの海外事業展開についてアンケートを実施した(有効回答数2,769社、回答率29.6%)。

 そして、3月1日にその調査結果を発表した。主要なポイントは以下の通り。
1.海外ビジネスは中国などアジアを中心に展開
・アンケート対象企業の輸出先は中国が最も多く、次いでタイ、台湾、韓国、米国と続く。海外拠点の所在地も中国が最多で、2位の米国以下を大きく引き離している。中国への拠点保有割合は大企業が72.6%と高いが、中小企業も28.7%と他国を大きく上回っている。形態別では販売及び生産拠点が多いが、中国に研究開発拠点や統括拠点を置く企業が増えている。

2.食品分野で「今後輸出を検討する」が突出
・輸出の今後(3年程度)については、「拡大を図る」が全体の50.3%を占め、「現在行っていないが今後行いたい」と合わせ60%の企業が輸出に意欲を示している。ターゲット市場に中国を挙げる割合が68.9%で最も高く、次いで米国、インド、インドネシアが高い。
・業種別では医薬品・化粧品、精密機械、飲食料品などで輸出志向が高く、特に飲食料品で「今後輸出を検討する」と回答した企業が多い。

3.海外事業の拡大を図る企業は引き続き増加
・今後(3年程度)の海外での事業展開方針(新規投資、既存拠点の拡充)について海外事業の拡大を図ると回答した企業は73.2%と前回調査(69.0%)から増加。比較可能な08年度以降、増加が継続している。
・企業規模別では、中小企業は前回調査の66.0%から71.4%と初めて7割を超え、大企業(76.8%)に迫る勢いとなった。
・事業規模の拡大を図る機能(販売、生産、研究開発など)では、販売機能の拡大を図る企業が76.3%と最も多い。国・地域別には、中国を重視する企業の比率が最も高く、タイが地域統括拠点など一部の機能を除いて中国に次いで2位となった。

4.東日本大震災、タイの洪水は海外ビジネスに影響
・震災により、貿易に携わる企業の41.5%が影響を受けた。具体的には15.8%の企業は供給網混乱により、14.5%の企業は輸出先国の輸入規制により、輸出が滞った。タイで発生した洪水被害は、タイに輸出や直接投資する企業の67.2%に影響を与えた。

5.採算為替レート(回答企業の中央値)は1ドル85円、1ユーロ115円
・回答企業の中でも、中小企業の採算円レート(85.0円/ドル、115.0円/ユーロ:回答企業の中央値)は、ドル、ユーロともに大企業(80.0円/ドル、110.0円/ユーロ:同)と比較して、円安に位置しているだけに、業績への悪影響が懸念される。

 なお、中国、タイ、インドネシア、ベトナム、インド、タイなどが事業拡大拠点として注目される中で、フィリピンに対する関心度は依然薄いという結果となった。今後(3年程度)に海外で拡大する機能と国・地域という質問に対する回答(複数回答)において、販売機能、生産(汎用品)、生産(高付加価値品)、物流機能、研究開発機能(基礎研究)、研究開発機能(新製品開発)、研究開発機能(現地市場向け仕様変更)、地域統括機能という全項目で、フィリピンは上位10位の圏外であった
 
 この調査はジェトロメンバー企業(ジェトロのサービスを利用する会員)を対象に2002年度より開始し今回で11回目となる。今回は対象企業を拡充、ジェトロメンバー企業3,178社に、各地域の貿易関連団体のリスト等を活用し6,179社を追加した(12年3月1日のジェトロ発表より)。