フィリピンの実質賃金安く、労働力の質高いとの分析
2012/02/28
人口増で今後の賃金も抑制的、英語力も魅力
フィリピン投資環境視察ミッション報告書発表
駐日フィリピン大使館と日本アセアンセンターは、2月6日~11日に、電気電子産業を中心とする製造業関係者を対象にしたフィリピン投資環境視察ミッションを派遣した。
派遣先はマニラ及び近郊でフィリピン半導体電子産業協会、 ラグナ地区工業団地や日系電子企業、フィリピン経済区庁(PEZA)などを訪問した。
日本アセアンセンターは、このほど、フィリピン投資環境視察ミッションに関する報告書を発表した。報告書では、訪問先の状況やそこで得た知識や情報を詳細に紹介している。そして、次のようにまとめを行っている(以下:ほぼ原文のまま)
『日本からフィリピンへの投資は、他のアセアン諸国との比較で必ずしも大きくはないが、今回のミッションでは、投資優遇の枠組みとして、PEZAの制度がよく機能していることが理解できるとともに、フィリピンがいくつもの点で優れた投資先であることが再認識させられた。十数年前のPEZA制度発足後、いくたびかの世界的な不況をもものともせず一貫して投資が伸び続けている事実がそのことを物語っているようである。
人件費の面でも、最低賃金はアセアンの中で必ずしも最低の部類には入らないが、社会保障など法定の経費が低いことから、実質的には最低賃金に近いレベルで労働者を雇用できること、米国が残した教育制度のおかげで技術者やマネージャークラスの人材が豊富に供給されていることから、賃金の面で相対的に他のアセアン諸国などと比べて競争力があること、ほとんどの人が英語を話しコミュニケーションが容易であることなどが重要な点と思われる。
経済成長が続く中、今後の賃金がどうなっていくかということであるが、他のアセアン諸国との決定的な違いが出生率の高さである。そもそも失業率が7%程度と高い中で、人口ピラミッドが釣鐘型になっているため人手不足が起こりにくく、多少の経済成長が続いてもそのような人口構造上、賃金が上がりにくいのが中国やベトナムとの違いといわれているようである。
また、英語を話すメリットにはさまざまなことがあるが、中にはインドなど他の成長市場への将来の進出のため、人材を養成する目的を持ってフィリピンに進出する企業もあるそうだ。
なお、今回訪問したPEZA工業団地の最低分譲面積は1万平方メートル弱から1万平方メートル程度のようであるが、活発な投資を背景に大規模な用地が不足している一方で、余っている土地には中小企業に適した小規模のものもあるというような情報もあった。価格は、一概には言えないようであるが、今回訪問したところでは、平米あたり90ドル弱程度との話もああった。また、レンタル工場は、工業団地によるが、工場の土地面積が2千前後から4千平米程度で、賃料は平米当たり毎月200ペソ弱から200ペソ台前半程度との話であった。
なお、フィリピンというと必ずその安全性が問題になるが、普通の人が普通に生活している分には全く問題はなく、日本人の現地サラリーマンが殺されたことがないという事実がそれを物語っているといわれているようである』(12年2月23日の日本アセアンセンター発表より)。