フィリピン経済、底堅さや有望性に注目度高まる

2012/02/05

政府、今年の成長率目標(5~6%)達成に自信

 1月30日に発表されたフィリピンの2011年実質GDP成長率は3.7%で前年の7.6%から鈍化した。この景気減速は世界的な動きであり、フィリピン経済は、好調な家計消費支出などにより底堅い成長を続けたともいえる。


 フィリピン政府は、2012年のGDP成長率に関して、2011年に比べかなり高くなると楽観的に見ている。2011年の急減速を受けて現時点での予想は5~6%成長となっているが、2012年予算案の前提条件として、GDP成長率は5.5~6.5%と想定されている。

 楽観予想の根拠として、まず、公共事業拡大や官民連携(PPP)事業の本格化による建設・インフラ投資の増加が挙げられている。2011年は歳出抑制で財政赤字が予想以上のピッチで削減されたと見られることから、景気刺激のための歳出拡大の余地が拡がったことも根拠の一つとなっている。民間ベースでも、BPO(アウトソーシング)ビルや住宅建設が一段と活発化すると見込んでいる。
 さらに、インフレ沈静化にともなう家計支出の一段の拡大、主要国景気の底打ちに伴うエレクトロニクス等の輸出回復、2013年の選挙特需が年後半から顕在化し、飲食料、広告支出などが増加しそうなことなども挙げられている。

 なお、国家統計調整委員会の概算では、2011年の一人当たり名目GDPは前年比6.1%増の10万1,601ペソ(算出人口数は同1.9%増の9,580万人)。ペソ対米ドルレートの年末値43.840ペソで換算すると約2,318米ドルということになる。2年連続での2,000米ドル超となり、20年前の1991年の797ドル(IMF統計数値)の約2.9倍、10年前の971ドル(同)から約2.4倍となっている。
 
 統計が出揃っている2010年実績比較では、日本やシンガポールの約20分の1、マレーシアの4分の1、タイの4割程度の水準にとどまっているが、モータリゼーション(自動車生産や普及の本格化)スタートの目途とされる2,000米ドルをかなり上回ってきたことは注目される。IMFでは、フィリピンでは2016年に2,906米ドルに達し、消費が爆発的に伸びるようになるとされている3,000米ドルにほぼ到達すると予想している。

 フィリピン一人当たり名目GDP(米ドル)推移(単位:米ドル)  

1991

2001年

02

03

04

05

06

07

08

09

10

11

797

971

1,014

1,025

1,094

1,209

1,405

1,684

1,919

1,827

2,123

2,318

  (出所:国際通貨基金資料より作成、2011年数値のみフィリピン統計調整委員会速報値)
  
いずれにしても、フィリピン経済は、リーマンショックで近隣諸国の多くがマイナス成長を余儀なくされた2009年もプラス成長を維持、欧州債務問題などで世界が揺れた2011年も底堅く推移した。

 一時は成長率で周辺国に差をつけられたり追い抜かれたりしたが、最近のフィリピン経済は見かけよりも打たれ強くなっている。また、海外就労者(OFW)からの送金に支えられる経済は二枚腰ともいえる。海外からの送金に依存してしまうことで国内経済基盤整備が遅れるというモラルハザード防止が今後の課題ではあるが、その底堅さ、今後の有望性に対して国際的な評価が高まり見直しが行われつつある。

 例えば、BRICsに続く「VIP」(ベトナム・インドネシア・フィリピン)の1カ国として注目されるようになっている。最近では、世界的な金融機関HSBCの調査レポート「グローバルリサーチ」において、フィリピンGDPは2050年に現在の15倍に拡大、世界第16位、東南アジア最大の経済大国になると試算されたと大々的に報じられている。