住友鉱出資のニッケル・アジア、出荷51%増加
2012/01/12
10月のタガニート襲撃事件克服、好調維持
三菱商事(上海)有限公司と販売契約締結
フィリピンの有力ニッケル鉱山会社であるニッケル・アジア・コーポレーション社(ナック社)が、2011年の出荷動向を発表した。
ナック社の2011のニッケル鉱石出荷額は121億ペソに達し、前年の80億ペソから51%の大幅増加となった。出荷数量は1,040万トンで、前年同期の830万トンから25%の増加となった。このニッケル鉱石出荷の大幅増加主要因は、中国での需要が好調に推移していることである。
ロンドン金属取引所(LME)でのニッケル市況はやや伸び悩みとなった。しかし、中国向け中低位ニッケル鉱石の出荷価格は必ずしもLME市況の動きを反映しない。この中国向けの中低位鉱石の出荷価格が、需要増加を背景に平均で約35%上昇したことなどで、出荷額は数量以上の大幅増加となった。
また、日本の得意先である住友金属鉱山と大平洋金属との間での値決め方式が変更され、両社向けへの出荷価格が値上げされたことも寄与した。ちなみに、2011年の両社への出荷量は83万2千トン、総収入に占める比率は19%であった。2012年の両社への出荷量は130万トンに達すると見込まれる。
なお、ナック社は、三菱商事(上海)有限公司との間で代理店契約を締結、2012年には約80万トンの鉱石供給を行うことになっている。今後、三菱商事(上海)有限公司の強力なネットワークがナック社の中国戦略に大きく寄与することが期待される。
ナック社は世界有数のニッケル資源国であるフィリピンにおいて、最大規模のニッケル鉱石生産を行う鉱山会社である。2006年2月に、それまで個別に経営されていたサモラグループ傘下のニッケル鉱山会社の資本を統合し、経営資源を集中させることにより、経営の一層の効率化を実現するために設立された。
そして、ナック社は、住友金属鉱山の重要な戦略パートナーである。ナック社傘下には、住友金属鉱山のフィリピン子会社であるコーラルベイ・ニッケル社(CBNC)へ出資するとともにニッケル鉱石を供給しているリオツバ・ニッケル・マイニング社がある。
住友金属鉱山は2009年8月にナック社に資本参加、2011年6月末時点で100%子会社である住友金属鉱山フィリピン・ホールディングス(SMMPH)を通じて、ナック社株式約19.7%(個別株主名が明示されている分)を保有している。
また、ナック社は昨年10月3日に武装勢力の襲撃を受けて、操業一時停止を余儀なくされたタガニート・マイニング・コーポレーション(TMC)の親会社である。襲撃事件を克服し、事業拡大を続けているといえよう(12年1月11日のフィリピン証券取引所回覧0271-2012号などより)。