9カ月間の経常収支黒字、25%減の51億ドル

2011/12/19

OFW送金が急増の貿易赤字を埋め経常黒字継続

経常黒字対GDP比率は3.1%(前年同期4.7%)

 フィリピン中央銀行は12月19日、2011年第3四半期(7~9月)の国際総合収支(速報値)を発表した。


 [2011年第3四半期の国際総合収支動向]
 第3四半期の経常収支の黒字は前年同期比40.1%減の20億3,300万ドルで、対GNI比は2.8%、対GDP比は3.7%だった。海外フィリピン人就労者(OFW)送金が同8.5%増の53億ドルで、物資・サービス貿易赤字額25億8,800万ドルの2倍以上に達していることで、経常収支が黒字に維持されている。また、資本金融収支の黒字は同31.3%増の22億5,400万ドルであった。 

 この結果、国際総合収支(BOP)の黒字は前年同期比42.3%増の47億500万米ドルに達した。対GNI比は6.5%、対GDP比は8.6%。

 [2011年年初9カ月間(1~9月)の動向]
 輸出低調で、物資・サービス貿易収支の赤字が前年同期比54.7%増の80億9,600万ドルへと急拡大した。しかし、OFW送金が7.1%増の152億7,200万ドル(うち銀行システム経由分は7.1%増の147億5,700万ドル)に達し、貿易赤字を完全に埋め経常収支を黒字とさせている。

 経常収支黒字は前年同期比25.0%減の50億5,700万ドル。経常収支の対GNI比、GDP比は2.4%、3.1%だった。一方、資本金融収支の黒字は150.5%増の50億7,500万ドルと大幅に拡大した。
 
 以上の結果、9カ月間の国際総合収支の黒字は50.9%増の97億2,100万ドルに達した。対GNI比、対GDP比は4.5%、6.0%でそれぞれ前年の3.4%、4.5%を上回った。

 なお、2011年9月末の総外貨準備高(GIR)は前年同月末比40.0%増の752億米ドルに達した。これは物資・サービス輸入の11.1カ月分に相当。また、原本ベース短期負債の10.5倍、残存ベース短期負債の6.3倍に相当する水準。

 [国際総合収支発表について]
 中央銀行は国際収支(BOP)積み上げ方式統計に関して、2003年10月にそれまでの毎月発表から四半期毎の発表へ変更することを決定した。これは、統計内容の確認、モニター、調整を強化し、より精度の高い統計を発表することが目的である。
 
 ただし中央銀行は、毎月、純外貨準備高(NIR)の変動から算出した国際総合収支推計速報値を発表している。ちなみに、最新数値は、12月19日に発表された2011年11月分速報値。それによると、2011年年初11カ月間の黒字は前年同期比16.5%減の102億9,300万ドル(別項で詳述)あった。しかし、上記のような積み上げ方式の国際総合収支発表は四半期に1回のみである(11年12月19日のフィリピン中央銀行発表より)。

 2011年第3四半期と年初9カ月間の国際総合収支内訳(単位:百万米ドル)

期間 第3四半期 9カ月間(1~9月)
項目 10年 11年 伸び率(%) 10年 11年 伸び率(%)
物資・サービス貿易収支 -834 -2588 赤字210.3%拡大 -5235 -8096 赤字54.7%拡大
 対GNI比(%) -1.3 -3.6 -2.7 -3.8
 対GDP比(%) -1.7 -4.7 -3.7 -5.0
    輸出 18235 16318 -10.5 48566 48216 -0.7
    輸入 19069 18906 -0.9 53801 56312 4.7
 物資貿易収支 -1666 -3549 赤字113.0%拡大 -7611 -10714 赤字40.8%拡大
 サービス貿易収支 832 961 15.5 2376 2618 10.2
経常収支 3392 2033 -40.1 6743 5057 -25.0
 対GNI比(%) 5.3 2.8 3.5 2.4
 対GDP比(%) 7.1 3.7 4.7 3.1
   OFW送金額合計 4885 5300 8.5 14264 15272 7.1
    うち銀行経由分 4721 5121 8.5 13783 14757 7.1
資本金融収支 1717 2254 31.3 2026 5075 150.5
 資本収支 32 51 59.4 83 100 20.5
 金融収支 1685 2203 30.7 1943 4975 156.0
誤差脱漏(ネットベース) -1803 418 -2326 -411
国際総合収支 3306 4705 42.3 6443 9721 50.9
対GNI比(%) 5.1 6.5 3.4 4.5
対GDP比(%) 6.9 8.6 4.5 6.0

     (出所:フィリピン中央銀行資料より 注:2010年分は改定値、2011年分は速報値