第3四半期GDP成長率、3.2%(前年同期7.3%)
2011/11/28
農林水産1.8%、鉱工業▲0.2%、サービス5.3%
GNI成長率は1.6%へ急鈍化(前年同期6.9%)
9カ月間でGDP3.6%、GNIは2.1%成長に急鈍化
11月28日に、2011年第3四半期のフィリピン国民経済計算統計が発表された。昨年までこの統計の尺度は、国内総生産(GDP)と国民総生産(GNP)の2本立てとなっていたが、今年発表からGDPとGNI(国民総所得)という体系に変更された。さらに、GDP統計などにおける物価変動を除いた実質ベース産出のための基準年が昨年までの1985年から2000年へと変更されている。
2011年第3四半期GDP成長率(前年同期比実質ベース:以下同様)は3.2%で、前年同期の7.3%から急鈍化した。前期(2011年第2四半期)の3.1%(速報値の3.4%から改定)に続く低い伸びとなった。季節調整済み前期比では0.3%の成長にとどまった。
好調であった前年同期の反動、東日本大震災の後遺症、欧米の債務問題などの影響やそれにともなう輸出不振などにより、成長率が予想以上のピッチで鈍化した。そして、国家経済開発庁(NEDA)の事前推定値3.8%~4.4%の下限や、国内外のエコノミスト事前推定コンセンサス4.6%を大幅に下回った。また、アジア近隣諸国であるインドネシアの6.5%、ベトナムの6.1%、シンガポールの6.1%、マレーシアの5.8、タイの3.5%という成長率を下回った。
一方、第3四半期のGNI成長率は1.6%にとどまり、前年同期の6.9%から急鈍化、前期の1.5%(速報値の1.9%から改定)にt引き続き、伸び悩みとなった。GDP成長率鈍化にくわえ、海外景気減速や中東や北アフリカ地域における政治的混乱の影響などでOFW送金等の海外からの純所得(NPI )がマイナス3.4%と不振であったことが響いた。
セクター別成長率は、鉱工業がマイナス0.2%と不振であった。農林水産業も1.8%と伸び悩んだ、サービス産業は5.3%と堅調ながらも前年同期の7.8%成長からは大幅に鈍化した。
一方、支出項目別成長率は、家計最終消費支出が7.1%と底堅く推移。しかし、固定資本形成伸び率が0.5%へと悪化した(前年同期は15.4%)。すなわち、設備投資意欲は減退した。また、輸出伸び率がマイナス13.1%へと急悪化した(前年同期はプラス23.1%)。一方、GDPのマイナス勘定となる輸入の伸び率は0.5%(前年同期は22.1%)。輸出大幅減少が、GDP成長率鈍化の大きな要因の一つであった。
[2011年9カ月間(1~9月)動向]
2011年9カ月間のGDP成長率は3.6%で、前年同期の8.2%から鈍化した。GNI成長率は2.1%で、前年同期の9.2%から急鈍化した。
支出項目別伸び率は、家計最終消費支出が5.9%で前年同期の2.8%を上回った。政府最終消費支出はマイナス1.7%(前年同期プラス7.1%)。 資本形成は18.1%(前年同期34.9%)、そのうち固定資本は0.9%(前年同期20.3%)であった。また、輸出伸び率はマイナス3.7%と低迷(前年同期プラス22.1%)。一方、GDPのマイナス勘定となる輸入の伸び率は3.7%(前年同期22.7%)であった。
セクター別成長率は、鉱工業が1.4%で前年同期の13.6%から大幅に鈍化。特に建設のマイナス12.8%への悪化が響いた。主力の製造業は5.5%へと鈍化(前年同期13.1%)。サービス産業は4.7%にとどまった(前年同期7.4%)。一方、農林水産業は4.7%で、前年同期のエル・ニーニョ現象による落ち込み(マイナス1.9%)から回復したが、鉱工業やサービスセクターの鈍化を相殺するには程遠かった
[政府関係機関による今後の予想]
NEDAは、「第3四半期の成長率は鈍化したが、サービス・セクターは堅調に推移した。第4四半期に関しては、個人消費意欲が依然旺盛であるうえ、海外からの送金も堅調に推移している。政府の720億ペソに及ぶ景気刺激支出のフル寄与が期待できる」とコメントした。したがって、第4四半期成長率は、第3四半期を上回るであろうと予想している(11年11月28日のフィリピン国家経済開発庁発表などより)。
産業・支出項目別GDP実質成長率(前年同期比)などの推移(2000年基準:単位:%)
項目 | 構成比 | 四半期成長率 | 9カ月間成長率 | |||||||
11年 | 2010年 | 2011年 | 1~9月累計 | |||||||
3Q | 1Q | 2Q | 3Q | 4Q | 1Q | 2Q | 3Q | 10年 | 11年 | |
GNI(国民総所得) | 100.0 | 11.5 | 9.2 | 6.9 | 5.6 | 3.3 | 1.5 | 1.6 | 9.2 | 2.1 |
GDP(国内総生産) | 76.7 | 8.4 | 8.9 | 7.3 | 6.1 | 4.6 | 3.1 | 3.2 | 8.2 | 3.6 |
NFIA(海外からの純所得) | 23.3 | 21.2 | 10.0 | 5.7 | 3.9 | -0.5 | -3.4 | -3.4 | 12.1 | -2.4 |
セクター別内訳 | ||||||||||
農林水産業 | 8.2 | -1.8 | -2.0 | -2.0 | 4.1 | 4.3 | 8.2 | 1.8 | -1.9 | 4.7 |
農林産業 | 6.7 | -1.9 | -2.1 | -3.1 | 5.4 | 6.2 | 11.5 | 3.7 | -2.4 | 7.1 |
米 | 1.3 | -9.2 | -7.3 | -23.8 | 19.6 | 15.6 | 13.2 | 19.7 | -13.3 | 16.0 |
コーン | 0.6 | -15.7 | -36.1 | -0.4 | 10.5 | 19.4 | 71.5 | -6.0 | -13.9 | 15.9 |
水産業 | 1.5 | -1.1 | -1.6 | 2.8 | -1.4 | -3.1 | -2.4 | -6.1 | -0.2 | -3.8 |
鉱工業等 | 24.0 | 15.4 | 15.7 | 9.8 | 6.5 | 7.3 | -2.3 | -0.2 | 13.6 | 1.4 |
鉱業 | 0.7 | 2.4 | 24.4 | 6.8 | 6.9 | 19.8 | 3.0 | 1.1 | 12.9 | 7.1 |
製造業 | 16.6 | 18.3 | 13.2 | 8.4 | 6.5 | 8.8 | 4.7 | 3.1 | 13.1 | 5.5 |
建設 | 3.7 | 9.7 | 24.7 | 15.6 | 4.6 | 3.5 | -23.3 | -12.2 | 17.6 | -12.8 |
光熱ガス | 2.9 | 9.8 | 10.2 | 10.1 | 9.4 | -1.2 | -3.4 | -1.0 | 10.1 | -1.9 |
サービス産業 | 44.5 | 7.2 | 7.3 | 7.8 | 6.4 | 3.2 | 5.4 | 5.3 | 7.4 | 4.7 |
運輸通信 | 5.3 | -2.2 | 2.2 | 3.0 | 1.4 | 4.2 | 4.2 | 4.9 | 0.9 | 4.4 |
商業 | 13.7 | 11.6 | 6.8 | 11.0 | 5.0 | 0.3 | 1.9 | 3.8 | 9.8 | 2.1 |
金融 | 5.2 | 8.3 | 5.8 | 13.1 | 13.6 | 6.4 | 11.6 | 3.6 | 8.9 | 7.3 |
不動産等 | 8.7 | 5.2 | 8.6 | 6.6 | 9.4 | 6.1 | 6.9 | 7.6 | 6.9 | 6.9 |
支出別内訳 | ||||||||||
家計最終消費支出 | 53.2 | 4.0 | 1.9 | 2.4 | 4.9 | 5.3 | 5.5 | 7.1 | 2.8 | 5.9 |
政府最終消費支出 | 7.6 | 21.4 | 7.4 | -6.5 | -6.6 | -17.2 | 4.3 | 9.4 | 7.1 | -1.7 |
資本形成 | 16.1 | 31.9 | 38.0 | 34.5 | 25.7 | 42.3 | -7.7 | 24.5 | 34.9 | 18.1 |
固定資本 | 15.1 | 18.9 | 26.6 | 15.4 | 15.7 | 12.7 | -9.9 | 0.5 | 20.3 | 0.9 |
建設 | 5.7 | 11.4 | 25.2 | 17.1 | 14.0 | 7.4 | -21.0 | -10.6 | 18.6 | -10.0 |
耐久設備 | 7.9 | 29.2 | 35.9 | 17.6 | 21.6 | 18.7 | 1.0 | 9.9 | 27.0 | 10.4 |
輸出等 | 39.1 | 18.8 | 24.0 | 23.1 | 16.8 | 2.0 | 1.4 | -13.1 | 22.1 | -3.7 |
輸入等(控除勘定) | 40.1 | 24.2 | 22.1 | 22.1 | 21.9 | 11.3 | 0.4 | 0.5 | 22.7 | 3.7 |
(出所:国家統計調整委員会資料より作成)