アロヨ前大統領逮捕、選挙法違反容疑で

2011/11/18

 フィリピン国家警察は11月18日に、選挙法違反容疑でグロリア・マカパガル・アロヨ前大統領(64歳、現下院議員)を逮捕した。


 

 アロヨ前大統領が逮捕された理由は、在任中の2007年の上院選挙(定数の半数である12名の改選)において、投票用紙を偽造したり得票数を改ざん、苦戦が予想された自陣議員の当選を手助けするなどして、公正な選挙実施を妨害した容疑。この選挙法違反容疑で、中央選挙管理委員会(COMELEC)が18日午前にアロヨ前大統領ら4名を起訴、パサイ地方裁判所112支部が即日逮捕状を発行した。そして、国家警察が18日午後に逮捕状を執行、アロヨ前大統領は入院先のマニラ首都圏の病院で身柄を拘束された。

 アロヨ前大統領は、18日夕刻のシンガポール航空シンガポール便を予約、出国を試みようとしていたようだが、逮捕によりまたも出国を阻止された。これまで最高裁判所は、政府のアロヨ前大統領らに対する出国監視措置の効力一時差し止め命令や、その命令に対する政府の再考申請却下など、アロヨ前大統領の出国を可とするスタンスをとってきた。しかし、パサイ地方裁判所の逮捕状発行は静観するかたちとなった。

 アロヨ前大統領は、2001年のエドサ革命2において、当時のエストラーダ大統領を追放、自身が副大統領から大統領へと昇任した。そして、同年に、エストラーダ元大統領を不正蓄財容疑などで起訴、逮捕に踏み切った。エストラーダ元大統領は終身刑の有罪判決を受け拘留(約6年半後に特赦で釈放)されるに至った。今回は、エストラーダ元大統領を逮捕したアロヨ前大統領が逮捕されるに至り、2代連続での前大統領逮捕という結果となった。

 アロヨ前大統領は、2004年の大統領再選時においても、得票水増しや政府資金の不正使用などの疑いをもたれている。さらに、複数の政府資金不正資金支出疑惑や汚職容疑などでこ告発されている。今年に入り、複数回の頸部手術を受けたアロヨ前大統領は、治療名目での海外渡航を試み、それを阻止しようとするアキノ現政権側との攻防が続いてきた。


 このアロヨ前大統領の身柄拘束に際し、デ・リマ法務相は「アロヨ前大統領が選挙妨害を行ったという選挙管理委員会の訴えを検討した結果、パサイ地方裁判所が逮捕状を発行した。アロヨ前大統領はフィリピン国内にとどまり、2007年の選挙時の背景、真実を明らかにする義務を負う。今後今後の法的手続きは公平かつ中立的に進められ、アロヨ前大統領は、憲法で保障された被疑者の全ての権利を行使できる。フィリピンの選挙制度や民主主義の根源にかかわる問題であり、真実が明らかにされることを期待する」との声明を発表した(11年11月18日のフィリピン政府官報などより