中國信託商業銀行フィリピン、自主的上場廃止へ

2011/10/09

ケッぺル・マリーンに続く外資系企業の比取引所撤退
浮動株式比率最低基準(10%)運用厳格化が契機に

 台湾最大の商業銀行の「中國信託商業銀行」のフィリピン現地法人であるチャイナトラスト(フィリピン)商業銀行(CHTR)は、10月7日の特別取締役会において、フィリピン証券取引所(PSE)からの自主的上場廃止を決議した。

 今後、CHTRは、PSEに対し自主的上場廃止を申請するとともに、中央銀行(BSP)に対しその旨を報告する。自主的上場廃止申請が承認されれば、CHTRの少数株主に対するCHTR株式公開買い付け(TOB)を実施する。

 CHTRのPSE上場廃止決議は、PSEの浮動株式比率最低基準(現在10%)運用厳格化が契機となった。従来、PSEの浮動株式比率最低基準運用はさほど厳格ではなかったが、今年に入りPSEのスタンスが厳しくなり、上場企業に対し早期の10%達成を要求するに至っている。

 CHTRの株式の約99.4%は、親会社の中國信託商業銀行に保有されており、浮動株式比率は約0.6%に過ぎない。CHTRは、浮動株式比率10%引き上げよりも、PSEからの上場廃止・非公開企業化という選択の方がメリットが大きいと判断した。

 CHTRは「PSEによる浮動株式比率10%達成要求が、長期的戦略や目的を見直す好機となった。非公開化しても、CHTRの資本基盤は強固であり長期的戦略遂行に全く支障はない。また、非公開化により、株主構成がシンプルになり意思決定も迅速になり、株主価値の増加につながると期待される」とコメントした。

 CHTRは、1995年9月にフルサービス商業銀行として営業開始、フィリピンの外資系銀行の中では最大級のネットワークを有しており、2010年末の支店数は24店に達している。
 
 なお、シンガポール系のケッぺル・フィリピン・マリーン(KPM)が、2011年10月28日付けで、PSEからの自主的上場廃止することが決定されている。KPMの自主的上場廃止も、PSEの浮動株式比率最低基準の運用厳格化が理由となっている。

 KPMが自主的上場廃止を決定した今年7月時点で、KPM株式の95.83%はシンガポールのKSインベストメンツ(KSI)によって保有されており、浮動株式比率は4.17%。KPMは、PSEでの資金調達の予定もなく、浮動株式比率を引き上げる状況でもないことから、自主的上場廃止を選択した。

 2011年のPSE新規上場数は、10月7日時点で3社(うち1社はIPOを実施しないイントロダクション方式での上場)に過ぎない。一方で、上記のような自主的上場廃止もあって、PSEの上場企業数伸び悩みが続いている(11年10月7日のフィリピン証券取引所回覧7244-2011号などより)。