住友鉱出資のニッケル・アジア、出荷額が大幅増加

2011/10/07

9カ月間で78%増の98億ペソ、出荷量は43%増の830万トン
10月3日のタガニート襲撃事件の影響は限定的か

フィリピンの有力ニッケル鉱山会社であるニッケル・アジア・コーポレーション社(ナック社)が、2011年9カ月間(1月~9月)の出荷動向を発表した。

 ナック社の9カ月間のニッケル鉱石出荷額は98億ペソに達し、前年同期の57億ペソから78%の大幅増加となった。出荷数量は830万トンで、前年同期の580万トンから43%の増加となった。このニッケル鉱石出荷の大幅増加の主要因は、中国での需要が好調に推移していることである。

 ロンドン金属取引所(LME)でのニッケル市況は軟調であった。しかし、中国向け中低位ニッケル鉱石の出荷価格は必ずしもLME市況の動きを反映しない。この中国向けの中低位鉱石の出荷価格が、需要増加を背景に、平均で約50%上昇したことで、出荷額は数量以上の大幅増加となった。

 ナック社は世界有数のニッケル資源国であるフィリピンにおいて、最大規模のニッケル鉱石生産を行う鉱山会社である。2006年2月に、それまで個別に経営されていたサモラグループ傘下のニッケル鉱山会社の資本を統合し、経営資源を集中させることにより、経営の一層の効率化を実現するために設立された。

 そして、ナック社は、住友金属鉱山の重要な戦略パートナーである。ナック社傘下には、住友金属鉱山のフィリピン子会社であるコーラルベイ・ニッケル社(CBNC)へ出資するとともにニッケル鉱石を供給しているリオツバ・ニッケル・マイニング社がある。
 住友金属鉱山は2009年8月にナック社に資本参加、2011年6月末時点で100%子会社である住友金属鉱山フィリピン・ホールディングス(SMMPH)を通じて、ナック社株式約19.7%(個別株主名が明示されている分)を保有している。

 また、ナック社は10月3日に武装勢力の襲撃を受けて、操業一時停止を余儀なくされたタガニート・マイニング・コーポレーション(TMC)の親会社である。ナック社は5日に、「武装勢力によって破壊されたTMC設備損害額は約5億ペソと見積もられる。TMCにはこれを上回る留保があり、既に破壊された設備の取り換えに着手、5日に操業を再開した。ナック社も。3週間以内にニッケル鉱石出荷を再開できる見通しである」と発表した。

 したがって、襲撃事件の影響は限定的であり、第4四半期(10月~12月)の出荷も中国向け中心に堅調に推移すると期待される(11年10月7日のフィリピン証券取引所回覧7209-2011号などより)。