住友鉱ミンダナオ事業地を武装勢力が襲撃

2011/10/03

タガニート・マイニング、周辺の日本人65名は全員無事 

 住友金属鉱山(住友鉱)は10月3日に、「3日の現地時間午前10時頃(日本時間午前11時頃)、住友鉱がプラント建設中のフィリピンのミンダナオ島北東部北スリガオ州クラベール町タガニート地区にて、武装勢力がタガニート・マイニング・コーポレーション(TMC)を襲い占拠したとの情報が入った」と発表した。


 TMCは、住友鉱の子会社であるタガニート・エイチパル・ニッケル・コーポレーション(THPAL社)に燐接した地域にあり、将来THPAL社はTMCより原料であるニッケル鉱石を購入することになっている。

 一時は、「TMCの警備員が射殺された」、「TMCの周辺に地雷が敷設された」、「TMCの設備の一部が炎上した」などとも報じられ、緊迫した雰囲気に包まれた。しかし、襲撃した武装勢力は、撤退した模様との現地情報が18時過ぎ(日本時間)にもたらされた。当地で勤務していた日本人65名(住友鉱の4名含む)は、TMCから1.5~2km離れた安全な場所に無事に集合していることも確認された。

 武装勢力の要求事項は提示されておらず、18時時点でも武装勢力の実態は不明であり、撤退した理由も不明であるとのこと。ただ、襲撃事件の発生した地域は、フィリピン共産党の軍事組織「新人民軍(NPA)」の活動が活発であり、通信企業の中継基地などもたびたび襲撃されており、今回もNPAが関与しているとの見方が少なくない。

 なお、住友鉱は2009年にタガニート・ニッケル事業の実施を決定した。この事業は、タガニート・マイニングのタガニート鉱山隣接地に高圧硫酸浸出法(HPAL)技術を用いた低品位酸化鉱の処理プラントを建設し、ニッケル製錬の中間品であるニッケル・コバルト混合硫化物(MS、ニッケル品位約57%)を年間5万トン(ニッケル量で3万トン、コバルト量で約2600トン)、30年間にわたり生産するものである。生産されるMSは、住友金属鉱山が全量を購入し、住友金属鉱山のニッケル工場(愛媛県新居浜市)において、電気ニッケルおよびコバルト生産の原料として使用する。既に昨年3月に建設工事が開始されており、2013年に完工、商業生産開始と予定されている。

 タガニート事業の推進母体は住友鉱の100%子会社タガニート・エイチパル・ニッケル・コーポレーション(THPAL)。THPALは住友鉱100%子会社としてスタートしたが、昨年実施した第三者割当増資を、ニッケル・アジア社(NAC)、三井物産が引受けた。この第三者割当増資引受後の出資比率は住友鉱62.5%、NAC22.5%、三井物産15.0%となった(11年10月3日の住友金属鉱山株式会社ニュースリリース、3日のフィリピン証券取引所I回覧7089-2011号などより)。