日本、フィリピンの森林管理計画に92億円

2011/09/27

気候変動対策,防災、貧困対策に寄与

 9月27日に東京において、卜部敏直駐フィリピン日本国大使と、フィリピンのアルバート・デル・ロサリオ外務大臣との間で、92億4,400万円を限度とする円借款案件「森林管理計画」に関する書簡の交換が行われた。

<森林管理計画の概要>
 森林管理計画の実施により、以下のとおり、フィリピンにおける気候変動対策、防災及び貧困対策の3分野に寄与することが期待される。

(1)背景
(ア)フィリピンでは、20世紀の初めに2,300万ha(国土面積の70%以上)の規模であった森林が、2007年には716万ha(同24%)となり、近年も森林が年に2%以上の割合で減少し、排出削減効果の減少等により、温室効果ガスの排出量が増大を続けている。この計画の対象となる農村部の山間地帯は貧困率が高く、ほかに生計手段を持たない一部の貧困住民による野焼き等無秩序な土地利用が行われており、それが更なる森林資源の消失や災害、貧困を招く悪循環を起こしている。

(イ)森林の荒廃は、土壌の流出や、保水能力低下を招き、洪水、干ばつ、土砂崩れ等の自然災害を引き起こす要因ともなっている。この計画の対象となっている河川流域は、土壌浸食が起きやすい傾斜地が多く、毎年のように洪水に見舞われるなど、土砂災害及び洪水被害に対して脆弱な地域である。フィリピンではこの10年間で自然災害による死者約9,500人、被災者は約5,000万人(うち9割は台風、暴風雨、洪水によるもの)を数え,防災は喫緊の課題となっている。

(ウ)フィリピン政府は、持続的な森林保全には森林に生活を依存している住民の参加と生計向上が不可欠との考えの下、「住民参加型森林管理」政策を導入し、地域住民組織が、環境天然資源省との協定により、国有林を無償で借り受け、森林管理・利用や農業等を行うことができる制度を設けている。

(2)事業概要
(ア)「森林管理計画」では、ルソン島及びパナイ島において、住民参加型の森林管理及び生計改善活動(組織化された住民が、苗木栽培、植林、森林の維持管理、小規模ビジネス(農産物や林産物売買、キノコ栽培、林産物加工等を行うもの)を実施することにより、森林の再生及び地域住民の生計向上を図る。

(イ)これにより、植林による温室効果ガス(CO2)の排出削減効果(気候変動対策)、災害に脆弱な地域における洪水・土砂災害の減少(防災)及び山間部住民の生活向上(貧困対策)に寄与する。

(3)供与限度額及び供与条件
供与限度額  金利  償還(うち据置)  期間調達条件
92.44億円   年0.3%   40(10)年      一般アンタイド
金利は「気候変動対策円借款」供与条件を適用(コンサルタント部分については金利0.01%を適用)している。

3.気候変動分野への支援
今回の円借款は、2009年12月に発表した気候変動対策に関する日本の2012年までの途上国支援の一環として行われる。日本としては、全ての主要国による公平かつ実効性のある枠組みの構築と意欲的な目標の合意に向けた国際交渉の進展を目指して、フィリピンと引き続き気候変動分野で連携してく(11年9月27日の日本外務省発表より)。