比通信業界、外人支配比率問題等で揺れる

2011/09/19

グローブ、外人保有比率29.33%で合法と強調
PLDTとの論争白熱、ディジテル買収問題でも

現在、フィリピンの通信業界は、外人保有比率上限問題と、業界首位フィリピン長距離電話(PLDT)による第3位の通信企業ディジタル・コミュニケーション(ディジテル)買収問題で揺れている。

外人保有比率問題に関しては、2011年央に、最高裁判所が、「フィリピン企業の外人保有比率上限は、資本額ではなく議決権をベースにすべき」との見解を示した。この見解が、産業界や金融市場に当惑をもたらした。

例えば、PLDTは公益企業であり、外人保有比率上限は40%と規定されている。PLDTにはNTTドコモやNTTコムを含む外資が積極出資しており、議決権付き普通株式への外人出資比率は63%に既に達している。しかし、優先株を含む資本をベースにすると外人出資比率は40%以下に収まっている。このことを根拠に、外人保有比率上限はクリアーされていることとされてきた。但し、この優先株には議決権が付せられておらず、議決権をベースにすると、40%の上限を大幅に上回っている状況である。

一方、PLDTは今年3月に、ゴコンウェイ・ファミリーの持ち株会社JGサミット傘下の通信企業ディジテルを買収することで合意した。ディジテルは、携帯電話事業(ブランド名はサンセルラー)において、低価格を武器に急速にシェアを伸ばしてきている。2010年末の携帯電話加入者数はPLDTグループ(スマートが展開)4560万人、グローブ・テレコムが2642万人、ディジテル(サンセルラー)が1400万人。買収実現後のPLDTグループの加入者数は6千万人に達し、シェアは70%近くに達することになる。

このような通信業界1位企業と3位企業の合併は、競争を著しく制限し、利用料金の値上げにつながるとの懸念が消費者団体などの間で高まった。そして、議会での討議対象にもなったりして、この合併が承認されるのかいなか、まだ結論が出ていない状況である。PLDTの外人保有比率問題とも絡まって、不透明感が強まっている。

そして、ディジテル買収承認に反対する業界第2位のグローブ・テレコムと、PLDTの間で競争制限問題の対立が激化、そして、外人保有比率に関する解釈でも対立が激化している。

議決権を基準にすると40%という外人保有制限上限を大幅に上回るPLDTは、このほど「グローブ・テレコムの普通株式の筆頭株主はシンガポールテレコムであり、その保有比率は約47.3%に達している。約1億5851万株の優先株も、実質的には60%がアヤラコープに、40%はシンガポール・テレコムによって保有されている。優先株がフィリピン人に保有されているPLDTとは異なる。グローブ・テレコムは外人保有企業である」と主張した。

これに対して、グローブ・テレコムは「弊社の優先株式は議決権が付せられており、無議決優先株式を多数発行しているPLDTとは異なる。優先株式を含めた弊社の議決権ベースでの外人保有比率は29.33%で、上限40%という憲法規定を完全に遵守している」と強調した(11年9月18日のフィリピン証券取引所回覧6769-2011号などより)。