フィリピンの国際競争力、75位(142カ国中)へ上昇

2011/09/08

前年85位から急上昇だがASEAN主要国で最低
タイ39位、インドネシア46位、ベトナム65位の後塵

世界首位はスイス、日本9位に後退、中国26位に

「世界経済フォーラム」は9月7日に、最新版(2011~12年版)『国際競争力報告書』を発表した。最新版競争力ランキングは、世界142カ国・地域(昨年は139カ国・地域)の経済データや、経済界や研究機関へのアンケート調査をもとに算出された。

『国際競争力報告書』の総合的な競争力ランキングには、コロンビア大学のザビエル・サラ=イ=マーティン教授が世界経済フォーラムのために開発し2004年に導入された世界競争力指数(GCI) が用いられている。GCIは競争力に関する3つのサブインデックス(12分野、110項目)をもとに設計されており、世界の国々のすべての発展段階における競争力の全体像を示す。
3つのサブインデックスとは基礎的指標、効率性強化指標、革新と洗練性指標である。基礎的指標は制度機構、インフラ、マクロ経済環境、保健および初等教育という4分野、効率性強化指標は高等教育および訓練、商品市場効率、労働市場効率、金融市場の高度化、技術的即応性、市場規模という10分野、革新と洗練性指標はビジネスの高度化、事業革新という2分野で構成されている。

2011~12年版での競争力第1位はスイス(昨年1位)、2位シンガポール(同3位)、3位スェーデン(同2位)であった。以下、4位フィンランド(同7位)、5位米国(同4位)、6位ドイツ(同5位)、7位オランダ(同8位)、8位デンマーク(同9位)、9位日本(同6位)、10位英国(同12位)と続く。 
トップ10では、シンガポールがスエーデンを抜き2位となったこと、日本が3ンランク低下9位に後退したことが注目される。シンガポールは政府の効率性、汚職の少なさ、インフラ整備、効率的な労働市場や金融市場などが評価されている。

一方、日本は、ビジネスの高度化、技術革新、研究開発、顧客重視、生産効率などでトップの評価を受けている。しかし、景気低迷によりマクロ経済の強さが113位と非常に低い評価であった。さらに、公的債務対GDP比率が220%超で最下位の142位、農業政策コスト138位など政府部門の評価が極端に低いことが響いている。日本でのビジネス遂行の大きな障害として政府の非効率性、政策の一貫性のなさが挙げられている。

BRICsを形成する中国は26位(同27位)、インドは56位(同51位)、ブラジルは53位(同58位)、ロシアは66位(同63位)とランクされた。なお、最下位である142位にはアフリカのチャド共和国(昨年も139位で最下位)がランクされた。債務問題で揺れているギリシャは90位で、昨年の83位、一昨年の71位から大幅低下が続いている。

アジア勢は、ベスト10入りのシンガポール、日本のほか、11位香港(昨年11位)、13位台湾(同13位)、21位マレーシア(同26位)、24位韓国(同22位)、26位中国(同27位)、28位ブルネイ(同28位)が30位以内にランクされている。


ASEAN諸国は、上記のように2位のシンガポール、21位のマレーシア、28位のブルネイのほか、タイ39位(同38位)、インドネシア46位(同44位)、ベトナム65位(同59位)、フィリピン75位(同85位)、カンボジア97位(同109位)と続く。

フィリピンの総合順位75位が昨年の85位から一気に10ランク上昇したことは注目される。しかし、ASEAN主要国のなかでは最低水準であり、カンボジアの97位を上回るのみである。

フィリピンのサブ・インデックス順位は、基礎的指標が99位(制度機構117位、インフラ105位、マクロ経済環境54位、保健および初等教育92位)と低水準。効率性強化指標は70位(高等教育および研修71位、商品市場効率88位、労働市場効率113位、金融市場の高度化71位、技術的即応性83位、市場規模36位)、革新と洗練性指標は74位(ビジネスの高度化57位、技術革新108位)であった。個別分野別では、政策の透明性120位、政府規制126位、通関手続きの容易さ128位、事業開始の容易さ134位、テロ対策コストの低さ130位などが特に厳しい評価となっている。

また、フィリピンでのビジネスにおける最大の問題点はという調査では、汚職との回答(24.4%)がトップとなっている。以下、政府官僚組織の非効率性(18.3%)、インフラ未整備(16.5%)、政策の一貫性のなさ(7.9%)、税金の高さ(5.7%)と続く(11年9月7日の世界経済フォーラム発表より)。