外資直接投資(FDI)、フィリピンのみ前年割れと不振

2011/07/28

昨年流入額13%減の17億ドル、東南アジアでのシェア2%
東南アジアへは倍増、インドネシア2.7倍、マレーシア6.4倍


国連貿易開発会議(UNCTAD)が世界投資報告書2011年版を発表した。

それによると、2010年の世界全体での外資直接投資(FDI)流入額は前年比4.9%増の1兆2437億ドルと回復した。新興国への流入額は同12.3%増の5736億ドルと二桁増加となった。特に、東南アジアへの流入額は同109.1%増(約2倍)の794億ドルへと急回復した。

東南アジア国別FDI流入額動向は、シンガポール前年比152.9%増の386億ドル、インドネシアが前年同期比172.8%増の133億ドル、マレーシアが同536.6%増の91億ドル、ベトナムが同7.5%増の82億ドル、タイ16.8%増の58億ドルと各々プラスとなっている。

一方、フィリピンへの流入額は同12.7%減の17億1300万ドルと唯一のマイナスとなっている。ライバル国であるインドネシアの133億ドルの8分の1、ベトナムの82億ドルの5分の1程度のレベルに過ぎない。東南アジアでのシェアも僅か2.2%と低水準である。最近、フィリピン見直しの動きもあるが、インフラ不足、政策や方針の非継続性などの問題を解決しないと、投資誘致競争で一段と劣勢になる懸念がある。

ちなみに、2011年年初5カ月間でも、フィリピンへのFDI純流入額は下表のように、前年同期比15.1%減の5億5,200万ドルと二桁減少となっている(7月26日の国連貿易開発会議発表、7月12日のフィリピン中央銀行発表などより)。

国・地域別の外資直接投資(FDI)流入額推移(単位:百万ドル)

95~2004年平均 2005~07年平均 2008年 2009年 2010年 10年の前年比
  フィリピン 1,238 2,564 1,544 1,963 1,713 -12.7%
  インドネシア 755 6,726 9.318 4.877 13.304 +172.8%
  タイ 4.479 9,646 8,448 4,976 5,813 +16.8%
  マレーシア 4,069 6.240 7,172 1,430 9,103 +536.6%
 ベトナム 1,620 3,720 9,579 7,600 8,173 +7.5%
  シンガポール 12,980 27,280 8,588 15,279 38,638 +152.9%
東南アジア 26,688 57,725 46,947 37,981 79,408 +109.1%
  中国 46,475 76,213 108,312 95,000 105,735 +11.3%
  インド 3,789 17,766 42,546 35,649 24,620 -30.9%
アジア・オセアニア 114,430 280,407 377,857 309,414 359,357 +16.1%
新興国 199,794 444,940 658,002 510,578 573,568 +12.3%
世界全体 718,542 1,471,784 1,744,101 1,185,030 1,243,671 +4.9%
(出所:国連貿易開発会議{UNCTAD}世界投資報告書2011年版より作成)

フィリピンの4月及び年初4カ月間の外人直接投資(FDI)純流入額(単位:百万米ドル)
4月 1-4月
項目 2010年 2011年 伸び率% 2010年 2011年 伸び率%
対比外資直接投資 85 81 -4.7 650 552 -15.1
株式資本投資 57 20 -64.9 102 101 -1.0
利益再投資勘定 8 55 587.5 191 168 -12.0
その他資本勘定 20 6 -70.0 357 283 -20.7
(出所:中央銀行資料より作成、全て速報値)