レプトスピラ症発生急増、73%増の613件

2011/07/27

JICA、九州大学が予防と診断技術開発支援

フィリピンで2011年年初~7月9日までに報告されたレプトスピラ症発生事例は613件。前年同期の354件を73.2%上回る水準である。地域別発生構成比は、西ビサヤ地域が最多の30.8%、次いでビコール地域の10.8%、中央ルソン地域の10.1%と続く。

レプトスピラ症(日本ではワイル症、秋疫とも言われる)は、レプトスピラ属の微生物によるすべての感染症を表す包括的な用語である。熱帯、亜熱帯地方を中心に広く分布する人獣共通感染症であり、人間には黄疸(肝障害)、腎不全、肺出血、動物にも致死的な病態や流産、死産を引き起こす。

ヒトへの感染は、菌を含む水を飲用し感染する場合と、菌を含む水や尿、土に触れて皮膚から感染する場合がある。通常、すりむけた皮膚や外部に曝された粘膜(結膜,鼻粘膜,口腔粘膜)がヒトへの侵入口となる。感染はどの年齢でも起こる。レトプスピラ症は職業病(例、農夫、下水や屠殺場で働く人)であるが,洪水などの際には多くの人に感染機会が生じる。犬やねずみも一般的な感染源であると言われる。

世界保険機関(WHO)によれば、全世界で患者発生は年間50万人、致死率23%と推測されている。病原レプトスピラには250以上の血清型があり、現行のワクチンは血清型特異的であるため、まず流行地の血清型の同定が必要とされるが、正確な同定にはそれだけのパネル抗原が必要であり、高度の専門的技術を要する。また、症状がマラリア・肝炎・デング出血熱等の感染症と酷似しており、臨床診断も難しい。

フィリピンのレプトスピラ症克服に向けて、国際協力機構(JICA)は技術協力プロジェクトとして、「レプトスピラ症の予防対策と診断技術の開発プロジェクト」を実施中。協力期間は2010年4月01日~2015年3月21日。

この事業は、レプトスピラ感染症流行国の一つであるフィリピンにおいて、フィリピン実施機関(フィリピン大学公衆衛生学部・フィリピン大学総合病院、国立サン・ラザロ病院、カラバオセンター等)と、日本の九州大学などが共同して、1)疫学調査によるヒトと家畜への感染の実態把握、2)迅速診断法の開発、3)多様な血清型に対して有効なDNAワクチンの開発、4)予防啓蒙活動、を行う。

これにより、地球規模課題であるレプトスピラ感染症の予防とコントロールに資することを目的としている。また、これらの共同研究を通じて、フィリピン側実施機関の能力向上を図ることを目的とする(11年7月22日のフィリピン保健省発表、JICAプロジェクトニュースなどより)。