日本、フィリピンで官民連携による船員養成

2011/07/18

国土交通省「 海事レポート」で取り組み紹介

日本国土交通省海事局は7月14日に「平成23年版 海事レポート」を発行した。

そのレポートにおいて、国際的課題への対応として、「官民協力によるアジア人船員の養成の強化」が以下のように記されている

世界的な船員不足が懸念されているなか、日本商船隊に乗り組む船員の97%は外国人船員であり、優秀な外国人船員を確保・育成することは、日本外航海運の安全性、安定輸送を確保するうえで、喫緊の課題である。しかし、アジア諸国の船員教育機関では、優秀な教官が不足しているとともに、施設整備の遅れや乗船訓練機会の不足等のため、十分な教育を行うことができないのが現状である。

こうした状況から、第6回日ASEAN交通大臣会合(2008年11月、フィリピン・マニラ)において、日本が提唱した「日ASEAN船員共同養成プログラム」が承認され、日本が中心となって関係国との間で官民が連携したアジア人船員教育の取組みを行っていくこととなった。

その施策の一つとして、日本の主たる船員供給国であるフィリピンとの間に、フィリピンが所有する練習船(オカ号)を活用した乗船訓練環境を整備することにより、優秀な船員を育成し日本商船隊に受け入れていくことを目的とした「アジア人船員国際共同養成プロジェクト」を推進していくこととし、その実施に向けた協力関係強化のための覚書を締結(2009年3月12日、東京)した。

具体的な実施計画については、日本-フィリピン両国における官労使の関係団体により構成される日比船員政策実行委員会において協議される体制が整えられ、平成22年6月に日比船員政策三者会合をフィリピン(マニラ)にて開催した。 現在、日本-フィリピン共同事業として、官民連携のもとに、練習船(オカ号)の設備を整備し、航海訓練所の教官を派遣し、乗船訓練プログラム構築を目指した技術協力を実施している(平成22年度は3回実施)。

平成22年度は、平成21年度に航海訓練所教官の指導のもとに仮構築した乗船訓練プログラムの実施状況の確認及び不具合な点の反映状況の確認を行った。 23年度も引き続き、これらの事業を実施し、乗船訓練プログラム構築のための技術協力、乗船訓練環境の整備を促進していく予定である。 また、アジア太平洋海事大学の学生39名を、学術協定のもとに、航海訓練所練習船に受け入れ、乗船訓練を行った(同年4~5月)。

民間ベースでは、商船三井がマグサイサイ・マリタイム社と共同で、1993年にマグサイサイ・インスティチュート・オブ・シッピング (MIS)を設立、商船三井運航船の乗船に備え、徹底した安全教育、各種実務訓練や規律訓練を行っている。2007年からフィリピンの特定商船学校と提携し、補講による学生の能力向上や教員に対する技能的なサポート、海事カリキュラムの強化等を通じて、教育体制の整備・強化に貢献している。

一方、日本郵船は2007年に、マニラ近郊カンルーバン市でNYK-TDGマリタイムアカデミーを開校した。この商船大学は、日本郵船の創業120周年記念事業の一環として設立されたものである。そして、従来の教育訓練施設とは異なり、「フィリピン高等教育庁」の認可を取得した正式な大学であり、3年間の講習と1年間の乗船実習の4年制商船大学である。

日本郵船は、将来の幹部船員を育成するためには、学生の段階からマネジメント能力の育成などにも重点を置きつつ最前線の現場で求められる実践的な知識・技術の習得が必要として、この商船大学では卒業後に「即戦力」となる幹部船員を育成する方針。また、日本郵船グループの船員の大半を占めるフィリピンを今後とも船員養成の重要拠点と位置付け、独自の船員育成プログラムが必要であると考えている(11年7月14日の日本国土交通省発表などより)。