三井物産と比ICTSI、買収で競合状況に

2011/07/15

シンガポールPortek社公開買い付けで
ICTSIは買収合戦から撤退との観測も


三井物産は、7月13日に、「シンガポール証券取引所上場企業であるPortekインターナショナル(Portek社)の全普通株式を対象とした公開買付けを実施することを決定した」と発表した。

三井物産はPortek社公開買付けにより、以下に挙げるメリットを享受できると考えている。
(1)優れた技術と港湾運営ノウハウ
港湾の近代化と輸送の改善を促すPortek社のサービスは、港湾における貨物取扱いリードタイムの短縮化を実現すると共に、世界中の三井物産の港湾ターミナル運営事業においても、生産性向上と効率性改善に寄与する。

(2)経験豊富な人材と安定した事業基盤
Portek社は、経験豊富な人材と安定した港湾事業運営基盤を有している。三井物産が各国港湾当局や主要港湾オペレーターからの信頼を更に高めていくために、Portek社の人材と事業基盤は重要な役割を果たす。

(3)港湾ターミナル運営事業資産の獲得
三井物産は現在、米州、欧州、アジア・大洋州、中国、日本の5極をベースに物流事業を国際的に展開している。今後はさらに、アジア、中南米、アフリカ等の新興国を中心に、物流インフラ事業へ参入することで、物流ネットワークの一層の拡大を目指す。Portek社は、既にインドネシア、アルジェリア、マルタ、ガボンにて7つの中規模コンテナターミナルや多目的港湾ターミナルを、ルワンダではICD(Inland Container Depotと呼ばれる内陸のコンテナターミナル)を運営・管理している。従って、この公開買付けによるこれらの資産獲得は、三井物産の物流インフラ事業における成長戦略の具現化を加速させる。

<公開買付けの概要>
(1)買付けの日程
2011年7月下旬:公開買付けに関する届出書のPortek社株主への発送(予定)
2011年8月下旬:公開買付け終了(予定)

(2)買付予定株式数:普通株式152,585,960株 (2011年7月12日現在)

(3)買付価格:普通株式1株につき、1.40シンガポールドル
この価格は、シンガポール証券取引所における同社株式の直前取引日である7月11日の終値1.32シンガポールドルに対し6.1%、直近3ヶ月の平均株価0.93シンガポールドルに対し50.5%のプレミアムを乗せた水準。

(4)買付けに要する資金(予定):最大で2億2100万シンガポールドル(約144億円)。

なお、またPortek社株式は、現在フィリピン最大の港湾業務企業インターナショナル・コンテナー・ターミナル・サービス(ICTSI)によって公開買い付けが開始されている。
既報の通り、ICTSIは6月1日に、子会社ICTSIファー・イーストを通じて、シンガポール証券取引所上場の港湾業務企業Portekの公開買い付けを行うと発表した。ICTSIは既に、Portek株式16.79%を所有しており、公開買い付け対象はその保有分以外のPortek株式である。公開買い付け価格は1株当たり1.20シンガポールドル。

公開買い付け価格は、三井物産がICTSIを16.7%を上回っている。 三井物産の同価格での公開買い付け発表を受けて、ICTSIは7月14日に「株主にとってどのようなオプションがベストであるか検討している」と表明した。7月15日付けフィリピン各紙電子版は、ICTSIが三井物産に対抗するために公開買い付け価格を引き上げる可能性は薄い」と報じている(11年7月13日の三井物産株式会社ニュースリリース、11年7月14日のフィリピン証券取引所回覧5239-2011号などより)。