東洋建設によるパシグ・マリキナ河川改修順調

2011/07/12

日本ODA事業、進捗率93%で予定を14%上回る
新日本製鐵の高耐力構造も寄与


洪水防止などを目的としたパシグ・マリキナ河川改修事業(第2期)1-A工区及び1-B工区の2工事が順調に進展している。

7月11日のフィリピン公共道路事業省 (DPWH)の発表によると、この2工事の現在の進捗率は93%で予定のを14%ポイント以上上回るピッチであるとのことである。DPWHはこの工事は洪水や氾濫防止のために非常に重要なプロジェクトであるとして、関係自治体に対し、工事の進捗や今後の補修維持などにに関心を高めるよう呼びかけた。

なお、東洋建設は、2009年7月、フィリピンマニラ首都圏のパシグ・マリキナ川流域において、フィリピン公共事業道路省(DPWH)が発注するパシグ・マリキナ河川改修事業(Ⅱ)1-A工区及び1-B工区の2工事を着工した。

工事期間はそれぞれ36カ月、受注金額は総額71億円である。同工事は日本政府開発援助(ODA)の有償資金協力(円借款)のうち、本邦技術活用条件(STEP)として実施されている。

パシグ・マリキナ川の下流部に位置するマニラ首都圏は、低平地という立地条件のため、同河川の氾濫や排水不良による内部冠水を含めた洪水被害を頻発し、雨季にはその経済・社会活動に大きな支障をきたしている。
今回の工事は、マニラ湾河口部のデルパン橋よりランビガン橋までの1-A 工区(9.2km)とランビガン橋からナピンダン洪水調整ゲート付近までの1-B 工区(7.1km)において、鋼矢板及び鋼管矢板により河川護岸を改修するものである。この護岸にはフラップゲートを新設し、低平地の内部冠水の改善を図る構造になっており、護岸は親水性や景観性を考慮したデザインとなっている。

地盤の固い区域が多い同工事では、工事中の振動や騒音を低減し、所用工期を短縮することが可能なウォータージェット併用バイブロ工法を採用し、また護岸構造も断面性能を高めるためハット型鋼矢板の背面に補強材のH型鋼を結合したものを採用する等、日本の技術が活用されている。

この技術は新日本製鐵のハット形鋼矢板とH形鋼を組み合わせた高耐力構造である、「新日鉄ハット+H工法」。ハット+H工法は、世界最大幅を持つハット形鋼矢板(幅900mm)の(1)高い耐力と(2)施工性の良さを活かし、サイズメニューが豊富なH形鋼をハット形鋼矢板に結合させることにより、工事地域の地盤状態に応じてより高い「耐力」を自由に設定できる、高い耐力と低コストを両立した構造である。都市部の狭隘地域や軟弱地盤地域、さらには水深の深い岸壁・護岸工事等において有効である。

いずれにしても工事の完成により、パシグ・マリキナ川沿いの住民を度重なる洪水から守るだけでなく、人口の過密化した河川沿いの環境を改善し、ひいてはマニラ首都圏全域の安定的な経済発展に寄与するものと期待される(11年7月11日のフィリピン公共道路事業省発表より)。