JBIC、比での日系企業レアメタル原料確保に7.5億ドル

2011/07/06

 住友鉱、三井物産など出資のタガニートプロジェクト向けに

 国際協力銀行(JBIC)は、7月5日に、住友金属鉱山、MBAPRホールディングス(三井物産会社の100%出資子会社)、フィリピンのニッケル・アジア社(ナック社)が出資するタガニートHPALニッケル社 (THPAL、本社所在地:マカティ市、代表者 :藤村隆則氏)との間で、総額7億5016万6000米ドル限度の貸付契約に調印した。

 この融資においてはJBICがポリティカルリスクを負担しており、日本企業の海外進出に伴う現地リスクを軽減する役割を果たしている。

 この融資は、THPALがフィリピンミンダナオ島北部タガニート地区において、ニッケル製錬の中間製品であるニッケル・コバルト混合硫化物(MS)を生産するために必要となる資金を融資するものである。このプロジェクトは、住友金属鉱山が世界に先駆けて本格的な商業生産に成功したHPAL法(高圧硫酸浸出法)を用いて、低品位ニッケル酸化鉱からMSを生産するもので、住友金属鉱山はMS全量(年間5万トン、ニッケル量で同約3万トン、コバルト量で同約2600トン)を日本国内に引き取り、愛媛県新居浜市のニッケル製錬工場においてニッケル地金・コバルト地金を生産する。既に昨年3月に建設工事が開始されており、2013年に完工、商業生産開始と予定されている。

 ニッケルはステンレス鋼及び各種電子材料(半導体用合金・電池等)などの原材料として、コバルトはリチウムイオン電池の正極材や航空機等に用いられる特殊鋼の原材料として幅広い産業で使用されているが、日本は原料となる鉱石等の全量を輸入に依存している。世界的な電子材料や特殊鋼の需要拡大を受けて、レアメタル確保の必要性が高まる中、この融資はその材料であるMSの生産を金融面から支援し、ニッケル及びコバルトの長期安定的な確保に寄与するものである。

 THPALは、住友金属鉱山の100%子会社として発足、その後、ナック社と三井物産グループ向けに第3者割当増資を実施した。第3者割当増資後の出資比率は住友金属鉱山62.5%、ナック社22.5%、三井物産グループ15.0%となった。

 なお、JBICは、今後も、様々な金融手法を活用した案件組成やリスクテイク機能等を通じて、重要資源の開発・取得の促進を金融面から支援する方針である(11年7月5日の国際協力銀行プレスリリースなどより)。