日本企業のフィリピン進出意欲旺盛

2011/06/03

東日本大震災後の進出計画発表目立つ

 フィリピンの潜在能力や語学力の高さ、質の高い労働力が豊富であること、周辺国よりも真一的であることなどが再評価されているようで、日本企業のフィリピン進出例や追加出資のケースが目立つ。3月11日の東日本大震災発生後の進出発表が増加している感がある。

 新たな拠点進出例としては、機械など生産財専門商社である山善 (本社:大阪市西区)が、3月23日に「2011年10月1日付で、フィリピンに現地法人を設立する」と発表した。山善は「フィリピンは、中国やインドといった巨大市場とは異なり、爆発的な経済発展は期待できないものの、経済成長率自体はここ数年、着実に向上しており、昨年末からは工業生産額も上昇基調で推移している。日系の製造業だけでも約300社が存在するなど、潜在需要としても、今後の生産財マーケットとして有望な国となってきている」とコメントした。

 3月29日には、キーコーヒ‐のグループ会社であるイタリアントマト(本社:東京都品川区)がフィリピン初出店となる「和茶房 鎌倉夢見屋マニラ・グリーンヒルズ店」を、商業施設マニラグリーンヒルズ内にオープンした。
 
 4月25日には、繊維・化学品を幅広く手掛ける蝶理が、「フィリピンに事務所を設置した」と発表した。さらに、5月には伊藤忠アーバンコミュニティが「2011年4月1日付で海外事業開発室を新設した。フィリピンでは首都圏マカティ市のマカティ・スカイプラザ(22階建ての賃貸オフィスビル)のアドバイザリー業務から開始する」と表明。

 そして、6月1日には、航空機内装品のジャムコ(本社:東京都三鷹市)が、「フィリピン子会社設立決定」と発表した。ジャムコは、日本国内を主要な拠点として、ギャレー(厨房設備)、ラバトリー(化粧室)等の航空機内装品関連製品の製造、組立を行っているが、相対的に労働コストの低い海外での生産も重要な事業戦略と捉えており、新たな生産委託拠点としてフィリピンのクラーク自由港経済区に子会社を設立することを決定した。

 このほか、ユニクロなどもフィリピンへの出店準備を進めているようである。震災発生前では、全日本空輸(ANA)が、2月27日から、成田=マニラ線の運航を開始している。

 また、既にフィリピンで事業を本格展開している企業の追加投資の例も目立つ。
 横浜ゴムの乗用車用タイヤ生産販売会社であるヨコハマタイヤ・フィリピン(YTPI)は、5月23日、新タイヤ工場建設に向けた鍬入れ式を行った。横浜ゴムは、500億円を追加投資、YTPIの生産能力を2017年までに現在の年間700万本から同1,700万本と2.4倍に拡大する計画。

 フィリピンで幅広く鉱山事業を展開している住友金属鉱山も5月に、フィリピン最大のニッケル鉱山会社であるニッケル・アジア・コーポレーション(NAC社、本社:マニラ・マカティ市)との間で、NAC社傘下の金鉱企業コルディリア・エクスプロレーション社(CEXCI)の株式25% を、150万米ドルで取得することで合意(最大40%まで取得可能)、合意書に署名した。

 ミニストップ(本部:千葉県千葉市)も4月4日、「フィリピンでコンビニエンスストア・ミニストップをフランチャイズチェーン展開するRCSI(本社:フィリピン)が実施する第三者割当増資を引き受けることを決議した」と発表した。今回のミニストップによるRCSIの増資引き受け額は2億2600万ペソで、累計出資額は2億5000万ペソへと大幅増加する。出資比率もこれまでの4%から25%へと急上昇、RCSIの第2位の株主となる。

 良品計画(本社:東京都豊島区)は昨年10月15日に、フィリピンでの無印良品店第1号店となるMUJIボニファシオ・ハイストリート店をオープンしたが今年第2四半期中に、マカティ市の有力ショッピングモール「グリーンベルト3」に出店予定である。そして、今年年内に、フィリピン最大のショッピングモールである「SMモール・オブ・アジア」にも出店予定である(各社プレスリリースなどより)。