第1四半期GDP成長率、4.9%(前年同期8.4%
2011/05/31
製造業は8.6%、前年同期の18.3%から急鈍化
新基準GNIは3.6%、前年同期11.5%から急減速
これまで、フィリピンの国民経済計算統計の尺度は、国内総生産(GDP)と国民総生産(GNP)の2本立てとなっていたが、今回発表からGDPとGNI(国民総所得)という体系に変更された。
従って、GNPがGNIに置き換えられた。名目ベースではGNPとGNIは等しくなるが、実質ベースでは若干差が出てくる。実質GNIは、実質GNPに交易利得(輸出入価格の変動による所得の実質額)が加えられる。
さらに、GDP統計などにおける物価変動を除いた実質ベース産出のための基準年がこれまでの1985年から2000年へと変更された。この基準年変更により、昨年2010年の実質GDP成長率は7.3%から7.6%へと0.3%ポイント上方改訂された。
またフィリピン人海外労働者(OFW)送金など海外からの所得を表わすNet Factor Income from Abroad(NFIA)が、Net Primary Income(NPI)という表現に変更された。
{2011年第1四半期動向}
2011年第1四半期GDP成長率(実質ベース:以下同様)は4.9%で、前期の6.1%(改定値:以下同様)及び前年同期の8.4%からかなり鈍化した。農林水産業以外の各セクターの伸び率急鈍化、政府支出大幅減少、輸出伸び率急鈍化などが響いた。なお、季節調整済み前期比では1.9%の成長であった。また、国家経済開発庁(NEDA)の事前推定値4.8~5.8%のほぼ下限にとどまった。
NEDAは、第1四半期成長率4.9%は、中国の9.3%、シンガポールの8.3%、インドネシアの6.5%、ベトナムの5.4%を下回ったが、タイの3.0%、韓国の4.2%、マレーシアの4.6%を上回ったと説明した。
一方、GNI成長率は3.6%となり、前期の5.6%及び前年同期の11.5%から急鈍化した。OFW送金など海外からの純所得(NPI )が、中東や北アフリカ地域における政治的危機の影響で、ゼロ成長となったのが響いた。
セクター別成長率は、鉱工業が7.2%成長と堅調であったものの前年同期の15.4%成長からは鈍化。そのうち、製造業成長率は8.6%ながら、前年同期の18.3%から急鈍化した。また、サービス産業は3.7%成長。運輸通信、金融、不動産業界などが堅調で底堅い推移を見せたものの、前年同期の7.2%成長からは鈍化した。
一方、農林水産業は4.2%成長で、前年同期のマイナス-1.8%から回復に転じた。コメやコーンという主食類等の収穫量が急回復したことなどが寄与した。しかし、鉱工業やサービス産業の成長率急鈍化をカバーするほどではなかった。
支出項目別伸び率は、家計最終消費が4.9%で前年同期の4.0%を上回った。また、資本形成伸び率が37.0%で、前年同期の31.9%をさらに上回った。
輸出伸び率は、前期(16.8%)、前年同期(18.8%)を大幅に下回る3.3%へと急鈍化、辛うじてプラス成長を維持するにとどまった。ただし、GDPのマイナス勘定となる輸入の伸び率も8.8%と、前年同期の24.2%から急鈍化、輸出伸び率鈍化のGDP成長率への悪影響をかなり相殺するかたちとなった(11年5月30日の国家統計調整委員会資料より)。
セクター・支出項目別
GDP実質成長率(前年同期比)等の推移(2000年基準:単位:%)
項目 | 構成比 | 四半期成長率 | ||||
11年 | 10年 | 11年 | ||||
1Q | 1Q | 2Q | 3Q | 4Q | 1Q | |
GNI(国民総生産) | 100.0 | 11.5 | 9.2 | 6.9 | 5.6 | 3.6 |
GDP(国内総生産) | 74.5 | 8.4 | 8.9 | 7.3 | 6.1 | 4.9 |
NPI(海外からの純所得) | 25.5 | 21.2 | 10.0 | 5.7 | 3.9 | 0.0 |
セクター別内訳 | ||||||
農林水産業 | 9.1 | -1.8 | -2.0 | -2.0 | 4.1 | 4.2 |
農林業 | 7.4 | -1.9 | -2.1 | -3.1 | 5.4 | 6.2 |
米 | 1.7 | -9.2 | -7.3 | -23.8 | 19.6 | 15.4 |
コーン | 0.6 | -15.7 | -36.1 | -0.4 | 10.5 | 19.6 |
水産業 | 1.7 | -1.1 | -1.6 | 2.8 | -1.4 | -3.7 |
鉱工業等 | 24.3 | 15.4 | 15.7 | 9.8 | 6.5 | 7.2 |
鉱業 | 0.9 | 2.4 | 24.4 | 6.8 | 6.9 | 18.6 |
製造業 | 17.3 | 18.3 | 13.2 | 8.4 | 6.5 | 8.6 |
建設 | 3.6 | 9.7 | 24.7 | 15.6 | 4.6 | 4.0 |
光熱ガス | 2.5 | 9.8 | 10.2 | 10.1 | 9.4 | -0.4 |
サービス産業 | 41.1 | 7.2 | 7.3 | 7.8 | 6.4 | 3.7 |
運輸通信 | 6.0 | -2.2 | 2.2 | 3.0 | 1.4 | 5.5 |
商業 | 11.1 | 11.6 | 6.8 | 11.0 | 5.0 | 0.8 |
金融 | 4.9 | 8.3 | 5.8 | 13.1 | 13.6 | 5.4 |
不動産等 | 7.9 | 5.2 | 8.6 | 6.6 | 9.4 | 5.9 |
支出別内訳 | ||||||
家計最終消費 | 51.6 | 4.0 | 1.9 | 2.4 | 4.9 | 4.9 |
政府最終消費 | 6.9 | 21.4 | 7.4 | -6.5 | -6.6 | -17.2 |
資本形成 | 17.9 | 31.9 | 38.0 | 34.5 | 25.7 | 37.0 |
固定資本 | 16.7 | 19.0 | 27.1 | 16.0 | 16.1 | 12.0 |
建設 | 5.7 | 11.4 | 25.2 | 17.1 | 14.0 | 7.2 |
耐久設備 | 9.5 | 29.2 | 35.9 | 17.6 | 21.6 | 16.7 |
輸出等 | 36.7 | 18.8 | 24.0 | 23.1 | 16.8 | 3.3 |
輸入等(控除勘定) | 37.8 | 24.2 | 22.1 | 22.1 | 21.9 | 8.8 |
基準年変更に伴うGDPとGNI実質成長率改定値(基準年2000年:単位%)
99年 | 00年 | 01年 | 02年 | 03年 | 04年 | 05年 | 06年 | 07年 | 08年 | 09年 | 10年 | |
国内総生産(GDP) | 3.1 | 4.4 | 2.9 | 3.6 | 5.0 | 6.7 | 4.8 | 5.2 | 6.6 | 4.2 | 1.1 | 7.6 |
国民総所得(GNI) | 2.7 | 7.7 | 3.6 | 4.1 | 8.5 | 7.1 | 7.0 | 5.0 | 6.2 | 5.0 | 6.1 | 8.2 |