比地上デジタルTV、日本方式採用に暗雲

2011/03/20

欧州DBV改良方式見直しの動きとの報道

6月11日に、フィリピン国家電気通信委員会(NTC)は、フィリピンにおける地上デジタルテレビ放送方式の規格として日本方式(ISDB-T方式)を採用する規則に署名した。これが実現すれば、 フィリピンは、日本以外のアジアで最初に日本方式を採用する国になる。

 

日本方式はハイビジョン放送と同時に移動端末向け放送サービス(ワンセグ)が提供可能であること、干渉に強く移動中の車内や山がちな場所においても良好に受信ができることなどが評価され、NTCの日本方式採用規則署名に至った。
海外では、これまで、中南米のブラジル、ペルー、アルゼンチン、チリ、ベネズエラ、エクアドル、コスタリカ、パラグアイが日本方式を採用している。 フィリピンが9カ国目の日本方式採用決定国である。

国際標準となっている地上デジタルテレビジョン放送の規格には、日本方式(ISDB-T方式)、欧州方式(DVB-T方式)、米国方式(ATSC方式)の3方式が存在する。日本方式は他の方式に比べて、上記のような技術的な優位性があること、また携帯端末向け放送(ワンセグ)とハイビジョン伝送が一つの送信機で伝送可能であり、全体のコストが安くなり経済的であること等の優位性がある。
ただし、日本方式は技術的には優れているが標準化競争に出遅れた。日本方式はこれまで上記のような南米諸国しか採用例がなく、欧州、豪州、インドなど30カ国以上で採用されている欧州方式、北米や韓国という大市場を制した米国方式に比べ見劣りがしていた。

このような状況下で、フィリピンが日本方式採用を決定したのは、官民の積極働きかけ、技術的優位性、島国で災害が多いという日本との類似性などが背景である。また、フィリピンのテレビ放送界の有力企業であるGMAネットワーク、ABS-CBN、PLDT(子会社が放送事業)などが地デジ規格選定において日本方式を支持したようだ。その主要因は日本がセットトップボックス(チューナボックスの低コスト化に成功したことである。

しかし、3月21日付け各紙電子版によると、東日本震災の影響などで、日本方式導入スタートが遅れる可能性がある。さらに、一部に、欧州のDVB改良方式が高パフォーマンスであるとの評価が高まり、この欧州方式採用をもう一度検討する動きが見られるとのこと。NTCは、地上デジタルテレビ放送方式に関する見直しを行うかいなか、間もなく決定するとのことでもある。ちなみに、フィリピンは2015年にデジタル方式への変更完了を目標としている。