カジノリゾート、業績急改善・株価急反騰続く

第1四半期、ソレアとシティ・オブ・ドリーム黒字に

2017/05/22

 フィリピンのIR(統合型リゾート、カジノリゾート)への注目度が高まり、新興カジノリゾート運営企業の業績が急改善している。

 2015年は、メインターゲット市場の一つである中国との関係が南シナ海領有権問題などで悪化、その中国の景気鈍化や政府による海外への人民元持ち出し額規制もあって業績が悪化した。しかし、2016年は年央に誕生したドゥテルテ新政権の中国との関係改善への方針転換等を背景に中国人訪問者が急増(前年比37.7%増の)67万5,663人、外客数シェア11.3%で日本人の9.3%を抜き3位に浮上)、ライバルともいえるオンラインゲームに対する規制厳格化の動きなどカジノリゾートを取り巻く環境が好転したことなどで、カジノリゾート運営企業の業績は改善傾向となり、2017年第1四半期はその改善傾向がさらに強まっている。

 フィリピン政府は、国家プロジェクトとして観光事業を強力に推進することを目的に、マ二ラ首都圏パラニャーケ市のマニラ湾岸湾沿いの埋立地に「エンターテイメントシティ」を創設しつつある。そこでは、4グループの大規模複合カジノリゾートの開発が行われており、既に3グループによるカジノリゾートがオープンしている。

 その4グループの一つがエンリケ・ラソン氏傘下のブルームベリー・リゾーツ(ブルームベリー、フィリピン証券取引所{PSE}上場)である。このブルームベリーによる大型カジノリゾート「ソレア・リゾート&カジノ」(ソレア)は2013年3月に開業した。2016年の純収入は前年比21%増の304億ペソ、最終損益は23億2千万ペソの黒字となり、前年の33億7千万ペソの赤字から急改善した。

 「エンターテイメントシティ」第2号の「シティ・オブ・ドリームス マニラ」(CDM)は、2014年12月に部分開業、20155年2月に全面開業した。2016年の純収入は前年比71%増の234億ペソ、最終損益は15億8千万ペソの赤字であったが、前年の91億4千万ペソからは赤字が83%減少した。

 2017年第1四半期については、ブルームベリーの純収入は前年同期比50%増の86億ペソ、カジノ事業純収入は同51%増の78億ペソへと大幅増加した。そして、最終損益は21億5,334万ペソの黒字となり、前年同期の11億5,559万ペソの赤字から急改善した(詳細は別掲)。

 メルコ・クラウンの今第1四半期の純収入は同74%増の79億ペソ、うちカジノ収入は同87%増の73億ペソへと大幅増加した。最終損益も1億4,858万ペソの黒字となり、前年同期の11億3,682万ペソから急改善した(詳細は別掲)

 
「エンターテイメントシティ」のカジノリゾート運営企業の2016年業績動向(収益の単位:100万ペソ)
企業名 カジノ名 開業日 純収入 増収率 カジノ純収入 増加率 最終損益 前年最終損益
ブルームベリー ソレア 13年3月 30,431 21% 28,050 21% 2,323 -3,375
比メルコクラウン CDM 14年12月 23,419 71% 21,297 79% -1,588 -9,144
 (出所:各社の年次報告書などより作成)

 
「エンターテイメントシティ」のカジノリゾート運営企業の2017第1四半期業績動向(収益の単位:100万ペソ)
企業名 カジノ名 開業日 純収入 増収率 カジノ純収入 増加率 最終損益 前年最終損益
ブルームベリー ソレア 13年3月 8,584 50% 7,811 51% 2,153 -1,156
比メルコクラウン CDM 14年12月 7,880 74% 7,299 80% 149 -1,136
 (出所:各社の年次報告書などより作成)

 PSE上場のカジノリゾート運営企業の株価は、カジノを彷彿とさせる非常にダイナミックな動きを続けている。2014年はカジノリゾートへの期待感などを背景に、下表の様に第4四半期に、ブルームベリーが15.82ペソ、MCPが15.20ペソという最高値をつけた。
 ところが、2015年に入ると、中国情勢悪化などに伴うカジノ事業に対する不安感の高まりや実際の業績悪化などを背景に、株価は急落に転じた。2016年第1四半期は国際的な不正送金問題の余波も加わったことから、ブルームベリーが一時2.90ペソまで売られ、2014年の最高値からは82%の下落となった。MCPは一時1.15ペソまで売られ、最高値からは92%の下落に至った。

 しかし、2016年7月に誕生したドゥテルテ政権の上記のような政策などにより、カジノリゾート関連株に対するセンチメントが好転、株価は2016年第1四半期を底にして急反騰に転じた。217年には、首都圏におけるカジノ新規ライセンス発給の5年間停止方針が打ち出されたこともあって、株価反騰ピッチが高まり、ブルームベリーは一時10.26ペソまで上昇、2016年第1四半期の最安値からは僅か1年余りで約3.5倍となった。MCPも8.80ペソまで上昇、最安値からは僅か1年余りで7.7倍へと急反騰した。


「エンターテイメントシティ」のカジノリゾート運営企業の株価推移(単位:ペソ)
企業名 ブルームベリー 比メルコクラウン(MCP)
カジノリソート名 ソレア シティ・オブ・ドリームス
株価・時期 高値 安値 終値 高値 安値 終値
2014年 15.82 8.30 12.40 15.20 10.94 13.58
2015年 13.46 4.17 4.54 13.40 1.86 2.29
2016年 7.00 2.90 6.15 4.70 1.15 3.76
2017年(注) 10.26 5.88 9.60 8.80 3.75 8.50
直近(5月19日) 9.93 9.55 9.60 8.50 8.20 8.50
(PSE取引記録などより作成、注:2017年は5月19日までの期間)