JICAの中小企業海外展開支援事業、比事業6件採択

ボラカイ島使用済み食用油リサイクル普及・実証事業など

2017/06/21

  国際協力機構(JICA)は、中小企業海外展開支援事業(2017年度第1回)の3制度(基礎調査/案件化調査/普及・実証事業)において本年3月に公示を行い、審査を経て合計68件(基礎調査13件、案件化調査36件、普及・実証事業19件)の採択を決定した。

 本事業は、日本の中小企業の製品・技術の途上国での活用可能性の調査・実証を通し、中小企業の海外展開と途上国が抱える様々な課題の解決を目指すものである。2012年度の開始以降、多くの中小企業に応募いただいており、累計採択案件数は603件に達する。

 今回は3制度合わせ、全国32都道府県の中小企業の提案が採択されました。2012年度の事業開始当初は関東圏の企業が半数近くを占めていたが、2014年度以降は関東圏以外の企業からの応募が増え、2016年度以降は採択の約7割を占めるに至っている。

 対象国は、東南アジアが44件と全体の65%を占めている。次いでアフリカが8件(12%)、中南米が6件(9%)となっている。過去5年間の採択案件においても、東南アジアが毎回6割前後を占めている。対象分野は、2012年度の開始当初は環境・エネルギー、水の浄化・水処理で半分を占めていたが、近年は農業の割合が増え、全体の3割前後を占めている。この他、福祉や教育に至るまで、多様な分野に及んでいる。

 現在JICAでは、中小企業支援を行っている関係機関との連携を強化しており、中でも地域金融機関とは、現時点で計34 行と覚書を締結している。

 JICAは、日本の中小企業が有する優れた製品・技術を活用した開発途上国の開発課題の解決と、これを通じた中小企業の海外展開支援を今後も進めていく方針である。なお、各制度の傾向や特徴は以下のとおり。

【基礎調査】
 遠隔地域(東南アジア、東アジア、南アジア以外の地域)を対象とした調査は近隣地域対象の場合よりも航空賃負担が大きいとの声に応え、今回公示から航空賃等の別見積制度を導入した結果、応募数・採択数共に遠隔地域の割合が増加した(前回採択28%→今回46%)。

【案件化調査】
 従来は国内・海外で販売実績のある製品・技術等の提案を前提としていたが、今回公示より、実績のない、アイデア段階、研究・試作・実証段階の製品・技術等であっても提案可能とした。今回は、環境・エネルギー分野(2件)、福祉・交通分野(1件)で、途上国特有の課題に対して革新的な製品・技術、手法で取り組む案件が、「途上国発イノベーション」として3件採択された。

 フィリピンでの案件は、静岡県のインフィックの「日本式介護システム導入事業案件化調査」、 神奈川県のユニメーションシステムの「河川水位警報ユニットによる防災システム構築に係る案件化調査」、 神奈川県の日之出産業の「分散菌処理システムを用いた汚水処理改善技術導入案件化調査」、新潟県のイートラストの「センサーネットワークとクラウド技術を用いた灌漑テレメータシステムのための案件化調査」、 高知県の高知丸高の「防災・災害復旧対策工事用自航組立台船の活用についての案件化調査」が採択された。

【普及・実証事業】
 本制度の上限金額は1億円であるが、開発途上国における課題の高度化、複雑化に対応するため、前回公示より新たに1.5億円枠が導入された。従来の1億円上限では応募を断念していた企業も本制度を活用いできるようになり、今回も4件が採択されている。また、採択された全19件中15件が、過去に基礎調査もしくは案件化調査を実施した企業の提案によるものである。JICAの制度を活用しながら現地調査を経て、実証段階までステップアップしている中小企業が増えている。

  フィリピンでの案件は、 石川県の金沢エンジニアリングシステムズの「レナジーシステムによるボラカイ島での使用済み食用油のリサイクルの普及・実証事業」が採択された(17年6月20日の国際協力機構ニュースリリースより)。