日系企業のフィリピン不動産開発ラッシュ

三越伊勢丹、野村、三井、阪急、三菱商事など

2017/08/03

このところ、日系企業によるフィリピンの不動産開発事業計画発表が相次いでいる。

  6月15日には、阪急不動産が「フィリピンの住宅デベロッパーであるPA アルバレス プロパティーズ(PA社、本社:ラグナ州)が推進するフィリピン・カビテ州ダスマリニャス市における戸建分譲住宅事業に参画する」と発表した。このプロジェクトは、開発面積約11へクタール、総戸数868戸(戸建:403戸、タウンハウス:465 戸)の戸建分譲住宅開発プロジェクトである。2017年10月頃より着工し、開発期間は約5年を予定している。フィリピン経済の今後を支える若年世代をターゲットとし、手の届きやすい価格で、質の高い住宅を提供して行く方針である。阪急不動産にとってフィリピンでの初の住宅事業である。

 7月10日には、三越伊勢丹ホールディングス(三越伊勢丹HDS)と野村不動産が「フィリピン大手不動産会社のフェデラルランド と共同で開発するフィリピン・マニラ首都圏における大型の不動産複合開発案件について、概要が固まったためフィリピン競争委員会(PCC)への申請を行った」と発表した。3社は、合弁会社を設立し、マニラ首都圏タギグ市ボニファシオ・グローバル・シティ(BGC)地区に位置する、フェデラルランドが開発したグランド・セントラルパーク地域において、分譲住宅及び商業施設の不動産複合開発に共同で取り組んでいく。このプロジェクトは、分譲タワーマンション4棟と下層階での商業施設を組み合わせた開発であり、日系デベロッパーと日系小売企業参画によるフィリピンで初めての複合開発プロジェクトになる。

 7月24日には、三井不動産が「三井不動産レジデンシャルとの共同出資会社三井不動産アジア(所在地:シンガポール)を通じて、フマニラ首都圏の最大の行政区であるケソン市で、分譲住宅事業「ジ・アートン」(総戸数1,706戸)に参画することを決定し、共同事業者である「ロックウエルランド」と、共同事業契約を締結した」と発表した。この事業は約1.8haの敷地に、3棟構成で総戸数1,706戸の分譲住宅とロックウエルランドが運営予定の商業施設が隣接する大規模複合プロジェクトである。総事業費は86億ペソ(約195億円)、三井不動産グループは20%の事業シェアとなる。

 また、フィリピンでECサイトなどを展開するHallohallo Inc.(ハロハロ、本社:フィリピン・マニラ)は、6月26日、「三菱商事とアヤラランドが設立するJV会社と協業し、日本をコンセプトにした複合商業エリアの開発を行うことで合意した。 JV会社は主に店舗スペースの提供を担い、ハロハロはチームラボと協力して商業エリアのテーマ・コンセプト・デザイン・プランを提案する」と発表した。このプロジェクトは、マカティ市に所在する「グロリエッタ」(アヤラランドが運営する商業施設)の屋上に、日本コンセプトのレストランとショップ(総面積 約2,500sq m)を年内にも開業するというものである。両ショップで年間来客85万人を見込んでいる。

 このように、6月から7月にかけて、日系企業の合弁開発プロジェクトが相次いて発表されている。これらに先立ち、三菱商事は昨年11月、「フィリピンにおける不動産デベロッパー大手の1社であるセンチュリー プロパティーズ 社(センチュリー社)と共同で、分譲住宅開発事業に参画する」と発表、既に開発に着手している。このプロジェクトは、マニラ中心部の南に位置するカビテ州タンザにおいて26haの敷地を取得し、約4,000戸の住宅を集積させたコミュニティを開発する計画である。開発は、三菱商事40%、センチュリー社60%の出資比率でフィリピン国内に設立の合弁会社を通じて進められている。両社の合弁オフィス事業「フォーブス メディア タワー」(地上 34階、述床面積約6万平米、マカティ市)も進行中である。

 フィリピンは、2014年に人口が1億人を突破、人口の半分が23歳以下と若い国である。また、近年は、ASEANでも最も高い経済成長を続けており、所得、購買力も順調に拡大、住宅取得ニーズも高まっている。また、急速に人口が増加し都心部や周辺部への流入が進んでおり、住宅不足が継続している。フィリピン政府は都心および都心近郊の住環境の整備を喫緊の課題と捉えている。このような状況の中で、日系企業もフィリピンでの開発事業参画を積極化させているようだ