長大のミンダナオ・タギボ工業団地、PEZA認定取得

環境保全型アグリ拠点、一次産品供給や雇用拡大へ

2017/09/12

   総合建設コンサルタントの長大がフィリピンのミンダナオ島ブトゥアン市で、2013年から進めているタギボ工業団地開発において、既に工業団地開発事業許可を取済みの特別目的会社(TAZC、Taguibo Agro-Industrial Zone Corporation)が、フィリピン経済特区庁(PEZA)) に提出した申請について、2017年7月28日付けにて登録審査を完了致した。

 タギボ工業団地は、長大が並行して進めている複数の再生可能エネルギー事業や上水供給コンセッション事業よって安定供給される電力と工業用水を活かし、ミンダナオ島カラガ地域で生産される農林水産品の加工・出荷を行う拠点として、事業パートナーであるエクイパルコ・コンストラクション・カンパニー(エクイパルコ社)並びにツインピーク・ハイドロ・リソーシス・コーポレーション(ツインピーク社」と共に開発する低炭素型工業団地である。

 PEZAのプラザ長官は昨年9月の就任時、ミンダナオ北東部(カラガ地域)の経済特区の開発を推進して行く事を表明しており、本プロジェクトはフィリピンの国策に合致したプロジェクトである。ミンダナオ島北東部に位置する同地域は、フードバスケットと言われるミンダナオ島から比国内大消費地であるマニラやセブへのアクセス面で優れた地域であるのみならず、日本を始めとするアジア太平洋諸国への海運上におけるミンダナオ島のゲートウェイとして地理的な優位性を有している。

 タギボ工業団地の開発予定地が位置するブトゥアン市は、カラガ地域の拠点都市であると共にダバオ市、カガヤン・デ・オロ市及びスリガオ市を結ぶ国道の分岐点にある交通の要衝である。開発予定地は、同市土地利用計画で工業ゾーンに指定されるブトゥアン市タギボ地区で、開発面積約141haとして既に60%を取得済み、将来200haまで拡張する予定である。

 カラガ地域は人口約260万人(比国統計庁、2015年)を抱え、年間1.2%の増加傾向であり、豊富な労働力がある地域で、初等教育から英語を学ぶ教育体制があることから、高等教育を受けていない労働者にも英語での会話が可能である。また、カトリック教徒が約95%を占め、宗教対立のリスクが極めて低い地域である。

 同地域は、農林水産業を基幹産業とし、林業では、比国内最大の木材生産地(フィリピン全体の70%を生産)であり、その生産量は約59万トン(比国森林管理局、2015年)に達している。農業では、年間200万トン以上(フィリピン統計庁、2014年)が生産されており、主にココナッツ、米、バナナ、アブラヤシ、トウモロコシ等が生産されている。

 水産養殖業では、生産額約6億5千万ペソ(フィリピン統計庁、2015年)に達しており、主にミルクフィッシュ、ブラックタイガー、海藻類などが生産されると共に、日本の資本が入ったフィリピン初の本格的な養鰻事業(年間200トン生産)も稼働している。

 タギボ工業団地が位置するカラガ地域の中央には、流域面積10,921km2を有するアグサン川(流域面積比国第3位)が流れると共に、開発予定地の上流に位置する地域では、長大が小水力発電事業並びに上水供給コンセッション事業を進めているタギボ川が流れており、安定的な電力と工業用水の供給が可能な水資源に恵まれた工業団地である。

 フィリピン国では現在、合計358のPEZA承認を受けた経済特区が操業中であり、そのうちミンダナオ島では34の経済特区が操業している。また、5種類ある工業団地区分のうち、タギボ工業団地は「農産系工業団地」に分類される。ミンダナオ島で稼働中の農産系工業団地は13箇所で、その殆どはカガヤン・デ・オロ市やイリガン市を中心とする北部ミンダナ地域、ダバオ市を中心とするタバオ地域)およびジェネラル・サントス市を中心とするソクサージェン地域に集中しており、タギボ工業団地は、カラガ地域で最初の農産系工業団地となる。

 カラガ地域は、これまで電力や水の基礎インフラが整備されていない為、官民双方の投資が遅れてきたために産業が育っておらず、深刻な雇用不足とそれに伴う貧困や優秀な人材の流出が続いていた。他地域と比べて最も競争力のある農林水産品が、地域内で付加価値を高めることなく他地域へ流出しており、これら産品がカラガ地域の経済開発に有効活用されていないことが最大の課題であった。このような中で、タギボ工業団地の直接雇用は最大5万人、間接雇用効果を含めると最大25万人となり、雇用創出による貧困対策や人材流出の歯止めに大きく貢献するものと考えらえる。

 これまでに、一般社団法人海外建設協会(OCAJI)が「フィリピ ミンダナオ島ブトゥアン市経済特区及び周辺インフラ整備計画調査(2015年度)」において、タギボ工業団地とその周辺における物流インフラ整備現状について調査を実施すると共に、経済産業省による「2016年度質の高いエネルギーインフラシステム海外展開促進事業(日本企業によるインフラ受注獲得に向けた事業実施可能性調査)」において、工業団地内の質の高い日本製インフラ資機材の導入についての検討を踏まえ、日本政府による支援、日本企業の入居、日本の技術や設備、投資、運営といった事業全般における日本国のプレゼンス確立を目指して開発を進める予定である。

 長大はこれまで、雇用不足と和平問題が根深く存在するミンダナオ島において、同島ブトゥアン市並びに北アグサン州を中心に、現地事業パートナーであるエクイパルコ社及びツインピーク社と共に様々な事業を通して地域の経済開発に貢献してきた。
 引き続き、日本政府が推し進める質の高いインフラ輸出や低炭素社会の構築にも沿う形で事業の推進を図り、低炭素型経済開発を通して地球温暖化問題や日本国GHG排出削減量獲得とミンダナオ島における和平構築に貢献していきたいと考えている((17年9月11日の株式会社長大ニュースリリースなどより)。