業績急改善中の比パナソニック、第1四半期は一服

純利益29%減の1.3億ペソ、株価は年初から2.5倍に急騰

2017/09/25

    パナソニックのフィリピンにおける製造・販売拠点であるパナソニック・マニュファクチャリング・フィリピンズ(PMPC、会計期末3月)は、このほど、2017年度(2017年4月~2018年3月)第1四半期(2017年4月~6月)の事業報告書報告書を公表した。

 近年急上昇を続けてきたPMPCの今第1四半期は、89%増益という非常に好調であった前年同期との比較では減益となったものの、業績上昇トレンドは続くとの期待が大きく、株価は大幅上昇を続けている。

 今第1四半期の純売上高は前年同期比5.8%減の29億4,741万ペソへと減少した。前年同期はエルニーニョ現象に伴う少雨高温という気候が追い風となりエアコンの売上高が絶好調であり、それとの比較で小幅減収という結果となった。減収効果に加え、原材料費値上がり、販管費12.4%増加などにより、純利益は同29.4%減の1億3,370,万ペソにとどまった。

 ちなみに、2016年度年間の業績については、純売上高が前年度比22.8%増の99億7,428万ペソへと二桁増加、ほぼ100億ペソとなった。現地製造の家電販売が総じて好調で、冷蔵庫が同34%増、洗濯機が同29%増、ウインドタイプエアコンが同23%増、扇風機が同10%と二桁増加となった。また、LEDテレビ、大容量冷蔵庫などの輸入商品も同37%増と大幅増加した。一方、製造原価が18.8%増にとどまったこなどで、粗利益は同36.8%増の24億6,739万ペソに達した。所得税負担が同11.7%減少したこともあって、純利益は同113.5%増(約2.1倍)の5億3,584万ペソへと大幅増加した。

 PMPCの業績は、2000年代の一時期の低迷期を抜け出て、2010年代は下表のとおり上昇トレンドを続けている。2016年度の純利益は2011年度に比べ9.2倍へと急拡大している。PMPCは先頃、主力の家電製品中心に拡販やシェア拡大を図ることで、年率20%の増収を続け、2018年度の売上高を2014年度比倍増の140億ペソ超とすることを目指すと表明している。特に、インバーター技術活用のエアコンや洗濯機の拡販を図っていく方針である。

 
パナソニック・マニュファクチャリング・フィリピン業績推移(単位:万ペソ)
項目 11年度 12年度 13年度 14年度 15年度 16年度 17年度第1四半期 伸び率
売上高 594,273 640,939 659.639 671,343 812,434 997,478 294,741 -5.8%
粗利益 142,356 168,913 173,238 142,566 180,352 246,739 72,776 -21.3%
税引前利益 8,712 16,247 20,152 21,695 39,969 66,721 15,415 -33.8%
所得税費用 2,902 7,862 3,947 5,437 14,872 13,138 2,044 -53.1%
純利益 5,810 8,384 16,205 16,258 25,098 53,584 13,370 -29.4%
 (出所:PMPC年次報告書から作成)

 なお、PMPCの起源は、1963年5月に設立されたフェスティバル・マニュファクチャリング(FMC)である。FMCは1965年に、プレシジョン・エレクトロニクス(PEC)と社名変更した。このPECと松下電器産業(MEI、社名は当時)が1967年にフィリピンで合弁家電企業を設立した。当初の合弁企業名はPECだったが、25年後の1992年にマツシタ・エレクトリック・フィリピン(MEPCO)と変更された。さらに、2005年に現社名PMPCへと再変更された。すなわちパナソニックは、フィリピンで約50年もの長い歴史を有している。2017年には合弁企業創立50周年を迎え、2018年には本社パナソニックが創立100周年を迎える。
 
 PMPCの前身は1983年1月にフィリピン証券取引所(PSE)に上場されている。現在、PMPCは額面1ペソの普通株式を約4億2,272万株発行している。そのうち、フィリピン人のみが投資可能なA株8,472万株が上場されている。浮動株比率は14.91%。日本のパソニック本社のPMPC保有比率は2017年3月末時点で79.96%である。パナソニック本社の保有するのはPMPCのB株である。 

 好業績を背景に株価も上昇トレンドを辿っている。2016年の終値は5.10ペソであったが、8月初旬には14.90ペソまで急騰、9月22日の終値も13ぺソで、年初から2.5倍となっている。基調としては業績が急改善してきていることにくわえ、6月末の1株当たり純資産が10.15ペソなどバリュエーション的に割安感があること、フィリピンで数少ないEV(電動自動車)関連株と位置づけられていることなどで人気化している(PMPC年次報告書やPSE取引記録などより)。