日系V企業チャレナジー、フィリピンで台風発電実証へ

台風時にも安定供給可能な次世代風力発電機

2017/10/22

比国家電力公社と協働、台風エネルギーを電力に

株式会社チャレナジー(本社:東京都墨田区八広4-36-21 ガレージスミダ 、代表取締役:清水敦史氏)は、フィリピン国家電力公社(Napocor社、本社:フィリピン・マニラ首都圏)と、フィリピンにおける次世代風力発電機「垂直軸型マグナス風力発電機」の普及に向けた共同実証の実施に関する合意書を締結した。チャレナジーがフィリピンの現地企業と合意書を締結するのは初となる。


 チャレナジーは、世界で初めて垂直軸型マグナス風力発電機を実用化し、世界の無電化地域などに安心安全な電気を供給していくことを目指している。かかるビジョンの実現に向けて、2016年8月より沖縄県南城市にてフィールドテストに取り組むと同時に、2020年の量産販売開始を目指して、10kW機の事業化を進めている。

 チャレナジーにとって、フィリピンは、今後の経済成長が見込まれる一方、日本と同様、7,000以上の島で構成される島国であり、且つ毎年台風が襲来することから、チャレナジー風力発電機の普及による社会課題の解決が期待できる重要市場と位置付け、2015年より現地進出を模索してきた。

 Napocor社は、フィリピンにおける国営電力公社として、未電化地域や電力網が脆弱な離島、へき地での電源開発を担っているが、離島やへき地の電源は主に小型ディーゼル発電機に依らざるをえないため、燃料費、輸送費及びメンテナンス費といった費用が嵩み発電コストが高止まりしているほか、多くの地域で1日の内8時間程度しか電力を供給できないなどの課題を抱えている。

今回、当社とNapocor社は、本風力発電機のフィリピンにおける本格導入を前に、実証試験を共同で実施していくことに合意しました。今後は同国内において、(1)風況が安定し、(2)台風の襲来を頻繁に受け、(3)小型ディーゼルによる電力が供給されている離島、という3つの条件に合致する実証候補地を共同で調査し、2019年を目標に実証試験を開始する予定である。

 チャレナジーは、Napocor社との共同実証により、フィリピンでの事業展開を本格的にスタートさせ、フィリピンにおけるエネルギーシフトを推進していく方針である。

 <垂直軸型マグナス風力発電機について>
 プロペラの代わりに、回転する円柱が風を受けたときに発生する「マグナス力」を用いて風車を回すことで発電する垂直軸型の風力発電機である。円柱の回転数を制御することで風車の暴走を抑えることができるため、平時のみならず、台風のような強風時でも安定して発電し続けることができる。 また、垂直軸型にすることで、あらゆる風向に対応できる。さらに、一般的な風力発電機と比較して低回転のため、騒音やバードストライクなど環境影響の低減も期待できる。

 「マグナス力」とは回転する円柱または球が一様流中(風や水の流れの中)に置かれたときに、その流れの方向に対して垂直の方向に力が働くことを「マグナス効果」といい、こうして生み出される力(揚力)がマグナス力である。野球のカーブボールやゴルフのスライスといった現象も同じ原理によるものである。

 既存の風力発電機でも、「台風でも壊れない」ものはあるが、チャレナジーが開発する「垂直軸型マグナス風力発電機」のように、「台風でも発電できる」可能性を秘めた技術は見当たらない。大型の台風一つのエネルギーは、日本の総発電量の約50年分に相当するという国土交通省の試算がある。チャレンジャーはこの莫大なエネルギーを電力に変える風力発電機の実用化を目指している。


 台風のような「風速変化」と「風向変化」の激しい環境下でも、安定して発電ができることを、チャレナジーは「台風発電」と呼んでいる。既存の風力発電機のように平時も発電を行いつつ、台風が来襲したときにも安定して電力を供給できる風力発電機のフィリピンでの実証実験を成功させ、国内の離島をはじめとする地域に安心・安全な電気を供給していくとともに、毎年のように台風が訪れるフィリピンなど新興国の無電化地域を電化していくことを目指している(17年10月19日の株式会社チャレナジーのニュースリリースなどより)。