三菱東京UFJマニラ支店、ペソ下限目途1ドル=53ペソに
経済・為替講演会、来年後半には49ペソ程度のペソ高も
2017/11/07
この講演は2部構成で、第1部が三菱UFJリサーチアンドコンサルティング鈴木明彦部長による「2018年の日本及びグローバル経済を展望する」、第2部が三菱東京UFJ銀行マニラ支店為替資金課の藤本善久課長による「フィリピン経済概況とペソ金利為替見通し」という構成であった。
第一部担当の鈴木部長は、世界経済に関して「政治の世界では各国とも不安定な情勢が続いているが、経済は安定している。リーマンショック前の高い成長には戻らないが緩やかな成長が見込まれる」と概括した。ただ、米中ともに二国間主義の色彩を強め、米国は世界経済の機関車の役割を果たさなくなっている。そして、アジア太平洋地域における米国のプレゼンスが後退する一方、多くの国が中国の貿易戦略の核である「一帯一路」に含まれるようになっている。
このような中での日本の戦略としては、1.TPP11を発効させ立位置を確保、2.ASEANやインドとの関係を密に、3.欧州・南米・アフリカにも自由貿易の輪を広げる、4.米国や中国との対決構図を回避などが必要ではないかとコメントした。
藤本義久課長による第2部の「フィリピン経済概況とペソ金利為替見通し」では、フィリピン経済について、「6%~7%という2017年の成長率見込みはASEAN主要国のなかで最高水準であり、引き続き堅調推移が見込まれる。2017年は輸出が回復傾向にあり、その結果として貿易赤字縮小、経常収支や国際収支が改善する可能性がある。OFW(海外フィリピン人就労者)送金額は順調に拡大し内需を牽引する。インフレ率は目標値(2~4%)に収まる見込みであるが、ペソ安により緩やかに上昇する可能性がある。インフレ支出拡大などによる適度な財政赤字拡大は許容範囲か」と概括した。
金利政策に関しては、「フィリピン中央銀行(BSP)は、昨年6月、金利コリドー制を導入、市中金利を適度な水準に保つことを企図している」と説明、当面の動きに関しては、「ペソ安進展や賃上げにより物価上昇圧力が高まり、2018年第2四半期に政策金利である翌日物預金(ODF)金利が、現行の2.5%から2.75%へと0.25%引き上げられるであろう」との予想を示した。
今後1年間のペソ対米ドルレートに関しては、「フィリピンでの利上げ観測が高まるまでは緩やかなペソ安となり、2018年第1四半期には53ペソ程度まで下落する可能性がある。その後は、政策金利の引き上げや株価上昇に伴う海外からの資金流入の思惑などからペソ高に振れる展開が予想され、第3四半期には49ペソ台への上昇の可能性もある」との見解が示された。そして、これらの考察を背景に、以下のようなペソ対米ドル相場レンジ予想が示された。
三菱東京UFJ銀行マニラ支店による期間別ペソ対米ドル相場予想(17年11月6日時点)
・2017年第4四半期(11月~12月) :予想レンジ50.50~52.50ペソ(12月末:52.00ペソ)
・2018年第1四半期(1月~3月) :予想レンジ51.00~53.00ペソ( 3月末:52.00ペソ)
・2018年第2四半期(4月~6月) :予想レンジ50.00~52.50ペソ( 6月末:51.50ペソ)
・2018年第3四半期(7月~9月) :予想レンジ49.00~52.00ペソ( 9月末:51.00ペソ)
(17年11月6日の三菱東京UFJ銀行マニラ支店講演会やその資料などより)。