日立、マニラ電力にリチウムイオン蓄電システム供給

電力安定供給、スマートグリッド構築を支援へ

2017/12/18

 既報のとおり、フィリピン貿易産業省は、ドゥテルテ大統領訪日の10月30日、日本企業による18件の対フィリピン投資意向が表明されたと発表した。これらの投資額は合計で60億米ドル(約3,000億ペソ)に達するとのことである。

 その中で、日立製作所(日立)がマニラ電力(メラルコ)と共同でフィリピンで蓄電システム(BESS)事業展開という案件があった。そして、12月11日付けビジネスミラー紙も、メラルコは日立とBESSプロジェクトで合意したと報じた。

 それによると、メラルコはまず、日立の「1MWリチウムイオン蓄電システムパッケージ」を2基(合計2MW)を調達、送電網に組み込む。設置場所はブラカン州サンラファエル。来年2月までにテストを実施、3月以降に運転開始の予定とのことである。BESSは電力安定供給に貢献するものであり、メラルコの目指すスマートグリッド(次世代送電網)構築に不可欠なシステムと位置づけられている。スマートグリッド(とは、電力の流れを供給側・需要側の両方から制御し、最適化できる送電網のことである。

 日立によると、電力は、常に需要に合わせて供給を調整バランスを保つ必要がある。このバランスが崩れると、電力の品質のひとつである周波数が不安定になり、最悪の場合には大停電が発生する恐れがある。CO2削減を目的として急速に普及が進んでいる太陽光や風力などの自然エネルギーは、天候や風向きといった不安定な条件で出力、周波数が大きく変動するため、大量に電力系統に導入された場合、電力需給バランスを維持するのが難しくなる。そこで、ITを活用した制御に加えて注目されるようになったのが、調整機能としての蓄電システムである。

 日立は、蓄電デバイスの材料をはじめ、民生、産業、自動車向けの多彩な蓄電池を生産するとともに、研究開発からシステムインテグレーションまで幅広く取り組んできた。鉛蓄電池のように比較的大きなエネルギーを貯蔵できるものから、リチウムイオン電池のように短時間で大きな出力を出せるものまで用途に合わせた最適な蓄電システムを構築することが可能である。調整力として最適と考えられるのは、リチウムイオン電池を搭載したコンテナ型蓄電システムであり、日立グループの総力が結集され、ワンパッケージの1MWコンテナ型蓄電システム完成に至った。

 日立は、電力流通システム事業を電力システム事業の中核事業に位置づけており、機器と制御システムなどのIT、パワーエレクトロニクス技術を融合したソリューション事業の拡大を図っており、フィリピンなど送電網の強化・拡充が求められる国や地域において、様々なニーズに応える電力流通システムソリューションを提供して行く方針である。