矢野造船、フィリピン造船市場参入へ

今治式点検・保守技術導入:JICA支援事業

2017/12/28

国際協力機構(JICA)は、「中小企業海外展開支援事業~基礎調査~(2017年第2回)」において矢野造船(本社:愛媛県今治市)が提案する「フィリピン国中小型船の検査、メンテナンス技術を活用した造船市場参入基礎調査」(フィリピン)を採択した。

 フィリピンでは、船舶の整備不良や老朽化が原因と考えられる海難事故が後を絶たず、船舶の安全な航行が内航海運発展上の課題となっている。また、メンテナンスの技術やシステムも確立されておらず、適切な点検、メンテナンス技術へのニーズが高まっている。

 矢野造船)は、中小型鋼船の新造船建造、検査、修理に係る技術と熟練技術者の育成に強みを有している。船舶の安全確保や延命化に関しては、船体、エンジン等の検査技術をはじめ、メンテナンス技術とノウハウの蓄積がある。また、海外からの技術者を受け入れ、独自の教育システムによる、技術者の育成にも努めてきた。フィリピンで運行されている船舶の多くは海外からの中古船であり、中古船の9割が日本から入ってきたものである。60年以上の造船事業の中で培った矢野造船の技術やノウハウは、フィリピン中小型船の安全航行のための点検・メンテナンスに求められている。

 本基礎調査では、現地での視察とヒアリングをもとに、主に船舶の点検とメンテナンスの現況を調査し、造船産業の設備と技術力を評価する。この結果を踏まえて、今治式のメンテナンスの仕組み(船舶の定期検査等)を参考としたフィリピン独自の点検・メンテナンスの手順を検討・提案することで、フィリピンの内航船の安全な航行と海難事故減少に貢献し、更に日本の船舶工業の受注機会拡大と造船産業の集積地である日本最大の海事都市の今治市と周辺地域の地域振興を目指す。


 なお、本調査は、日本の中小企業を対象とした「基礎調査」として実施され、今後の契約交渉を経て契約に至ったものから、順次調査を実施する。基礎調査は、優れた製品や技術力を有する中小企業が、途上国に進出することによる開発課題解決の可能性及びODA事業との連携可能性を検討するためのものである。企業は、検討に必要な基礎情報の収集と海外展開事業計画の策定を行う。2017年度第2回分は今年9月に公示を行い、「基礎調査」として12件が採択された(17年12月27日の独立行政法人国際協力機構四国支部{JICA 四国}プレスリリースより)。