住友鉱、比事業拡大・資源高度有効活用が進展
レアアースのスカンジウム、クロマイトの生産も
2018/02/05
住友金属鉱山(住友鉱、本社:東京都港区)のフィリピンでの事業基盤拡大、資源高度有効活用が進展している。
世界のニッケル資源の確保には、低品位鉱石からのニッケル分の回収が必須となっている。住友鉱は従来回収困難であった低品位のニッケル酸化鉱からニッケルおよびコバルトを回収する技術である HPAL(High Pressure Acid Leach =高圧硫酸浸出)の商業生産化に世界で初めて成功し、2005年からフィリピンのコーラルベイ・ニッケル・コーポレーション(CBNC、所在地:パラワン島)で、ニッケル中間製品であるMS(ニッケル・コバルト混合硫化物)の生産を開始した。2009年4月にはCBNC における第2工場の垂直立ち上げを完了し、同社の生産能力を年間1万トンから2万4千トン(ニッケル量換算)へ増加させた。
このような実績を背景として、住友鉱はHPAL技術を用いたタガニート・プロジェクトを2013年に完成させ世界トップクラスのニッケル製錬メーカーの地位を固めた。タガニート・プロジェクトにおいては、傘下のタガニートHPAL社(THPAL)がミンダナオ島北東部タガニート地区にて、MS( ニッケル品位約57%)を年間3万トン(ニッケル量換算、以下同様)から3万6千トンへと高めている。THPALの資本金は40億9,500万ペソ、これまでの出資比率は住友金属鉱山75%、ニッケル・アジア(NAC)10%、三井物産15%となっている。
住友鉱は、HPALからの新たな有価金属の回収を事業化し、競争力強化に努めつつある。具体的には、希土類元素(レアアース)の一つであるスカンジウムの生産を開始する。スカンジウム(元素記号:Sc)は希土類元素の一つで、1879年に発見された。銀白色の金属で比重は2.99。アルミニウムの強度、耐熱性、耐食性を高め るための添加物、固体酸化物形燃料電池の電解質のほか、メタルハライドランプ、アルカリ電池の電極等に使用される。
タガニートなどではHPAL法によりニッケル・コバルト混合硫化物が生産されているが、その原料鉱石中に微量のスカンジウムが含まれている。住友鉱は、新居浜研究所(愛媛県新居浜市)でその回収方法の開発に取り組んできたが、ニッケル・コバルト混合硫化物の製造工程からスカンジウムを効率的に回収する技術を確立、2018年度にスカンジウムの商業生産を開始する予定である。
スカンジウムは、現在はアメリカ、ウクライナ、ロシア、中国等を中心に年間10トン程度生産されていると推定される。生産量が少なく、かつ高価であることからこれまでは需要が限定されているが、安定的な供給により主な用途であるアルミニウムへの添加剤や固体酸化物形燃料電池の電解質等の分野での伸びが期待される。
住友鉱は、2017年12月には、主にステンレス鋼の原料となるクロマイトの回収事業への参入も決定した。タガニートHPAL ニッケル社にクロマイトの回収プラントを建設し、2020年より生産を開始する予定である。クロマイトは、中間製品であるフェロクロムに製錬加工され、ステンレス鋼をはじめ特殊鋼向け原料として幅広く使用されており、住友鉱はこのクロマイトをTHPALのニッケル・コバルト混合硫化物の製造工程から回収する。
住友鉱は、ニッケル・コバルトのみならずスカンジウムやクロマイトなどの副産物を効率的に回収することでHPAL 技術(のコスト競争力を高める。また、ニッケル事業の主要な製品供給先であるステンレス業界向けに新たな素材を提供することで、世界のニッケル事業における当社の存在感を更に向上させて行く方針である。
上記のようなフィリピン事業の核となるCBNCやタガニートHPAL社が現地でも高い評価を得ている。CBNCは、このほど、フィリピン環境天然資源省より、「2017年鉱物産業環境大統領賞(The 2017 Presidential Mineral Industry Environmental Award,以下「 PMIEA」)を受賞した。2017年11月24日にフィリピン・バギオ市で開催された第64回全国鉱山安全環境会議にて表彰が執り行われ、2014年度、2015年度、2016年度に引き続き4年連続での受賞となった。
この鉱物産業環境大統領賞は、フィリピンの鉱物産業において最も栄誉ある賞である。本件は金属製錬部門での受賞であるが、プラントにおける環境管理・安全管理・地域環境保護および地域貢献などを総合的に評価された上で決定される。PMIEAの受賞とあわせて、CBNCは鉱業森林計画優秀賞および最優秀鉱山安全賞も受賞しており、2016年に続いて3賞同時の受賞となった。
世界のニッケル資源の確保には、
このような実績を背景として、
住友鉱は、HPALからの新たな有価金属の回収を事業化し、
タガニートなどではHPAL法によりニッケル・
スカンジウムは、現在はアメリカ、ウクライナ、ロシア、
住友鉱は、2017年12月には、
住友鉱は、ニッケル・
上記のようなフィリピン事業の核となるCBNCやタガニートHP
この鉱物産業環境大統領賞は、
また、タガニートHPALニッケル社についてもチタン賞(
CBNCおよびTHPALは、