住友金属鉱山出資のニッケル・アジア、41%増益

帰属純利益28億ペソ、出荷額157億ペソ:2017年

2018/03/15

 有力ニッケル鉱山会社であるニッケル・アジア・コーポレーション社(NAC社)は3月14日、2017年の決算・業績(監査済み)を発表した。

 2017年の鉱石出荷量は、3つの鉱山を操業しているフィリピン南部における長雨や鉱石ニーズの変化などで前年比8%減の1,770万トン(WMT)にとどまった。しかし、二ッケル市況上昇やドル高ペソ安効果により、鉱石出荷額は同11%増の157億4千万ペソへと二桁増加した。出荷された鉱石のうち、900万トン(WMT)がサプロライト鉱で、870万トンがリモナイト鉱石(そのうち810万トンがコーラルベイとタガニートの加工プラントへの出荷)。輸出に関しては、1トン当たり平均出荷価格は24.42米ドルで、前年の20.77米 ドルから18%上昇した。
 
 増収効果にくわえ、生産コストが前年比6%増の82億2千万ペソと一桁増加にとどまったことなどで、純利益は同42%増の38億5千万ペソ、帰属損益は同41%増の27億7千万ペソへと大幅増益となった。利払い・税金・償却前利益(EBITDA)は同23%増の70億ペソであった(18年3月14日のフィリピン証券取引所回覧01648-2018号などより)。
 
 NAC社は世界有数のニッケル資源国であるフィリピンにおいて、最大規模のニッケル鉱石生産を行う鉱山会社である。そして、住友金属鉱山(住友鉱)の重要な戦略 パートナーとなっている。

 ニッケルは、日常生活からハイテク分野まで非常に幅広い分野で使用されている。したがって、ニッケル資源の確保には、低品位鉱石からのニッケル分の回収が必須となっている。住友鉱は従来回収困難であった低品位のニッケル酸化鉱からニッケルおよびコバルトを回収する技術である HPAL(High Pressure Acid Leach =高圧硫酸浸出)の商業生産化に世界で初めて成功し、2005年からフィリピンのコーラルベイ・ニッケル・コーポレーション(CBNC)で、ニッケル中間製品であるMS(ニッケル・コバルト混合硫化物)の生産を開始した。 2009年4月にはCBNC における第2工場の垂直立ち上げを完了し、同社の生産能力を年間1万トンから2万4千トン(ニッケル量換算)へ増加させた。CBNCの資本金は5億8,750万ペソ、出資比率は住友鉱54%、三井物産 18%、双日18%、NAC社10%である。 
 
 CBNCの実績を背景として、住友鉱はHPAL技術を用いたタガニート・プロジェクトを2013年に完成させ世界トップクラスのニッケル製錬メーカーの地位を固めた。タガニート・プロジェクトにおいては、傘下のタガニートHPAL社(THPAL)がミンダナオ島北東部タガニート地区にて、現時点でMS( ニッケル品位約57%)の年間生産能力3万6千トン(ニッケル量換算)体制を構築している。THPALの資本金は40億9,500万ペソ、出資比率は住友鉱75%、NAC社10%、三井物産15%となっている。

 住友鉱は、NAC社に2009年に資本参加した。現時時点で、100%子会社である住友金属鉱山フィリピン・ホールディングス(SMMPH)などを通じてNAC社株式約26%を保有している。SMMPHは2010年に、フィリピンでのニッケル事業に関する地域統括会社として設立された。