自衛隊練習機5機、比海軍への無償譲渡完了

法改正で当初の有償貸与方式から変更

2018/03/27

    3月26日、マニラ南方のカビテ州ヘラクレオ・アラノ・サングレーポイント(サングレーポイント)海軍基地において、海上自衛隊練習機「TC-90」3機のフィリピン海軍への引き渡し(移転)式典が開催された。

 日本防衛省では、2016年9月の日フィリピン首脳会談における合意を受け、「TC-90」の移転に向けた調整を進め、2017年3月に機体2機をフィリピン側に引き渡した。これに続き、3月26日(月)に残りの機体3機
が引き渡され、予定されていた5機の引き渡しが完了した。

 2017年3月の2機の引き渡し時点では貸与という形式であったが、2017年6月 不用装備品等の無償譲渡等を可能とする改正自衛隊法が施行され、同年10月 日比防衛相会談において、「TC-90」(5機)の移転の条件を有償貸付けから無償譲渡に変更することを確認、同年11月 日比首脳会談に合わせて、無償譲渡への変更に係る防衛当局間の取決めに署名・交換されたという経緯がある。そして、フィリピンへの5機のの引き渡しは、自衛隊の防衛装備品を外国に無償で譲渡するのは初めてのケースとなった。

 「TC-90」5機のフィリピンへの移転は、1.機体の移転に加えて、2.パイロット教育及び、3.維持整備分野における支援を含めたパッケージでの協力である。
1.機体の移転
・ 2017年3月、「TC-90」2機をフィリピンへ引渡し、2018年3月26日、残り3機を引き渡し。
② パイロット教育
・2016年11月から2018年3月までの間に、海上自衛隊徳島航空基地でフィリピン海軍パイロット6名に対する教育を実施
3.維持整備分野における支援
・2017年4月から、日本の整備企業の技術者をフィリピンへ派遣し、フィリピン海軍が実施する維持整備業務を支援

 上記の様に、今回の「TC-90」無償譲渡は、機体のフィリピンへの移転を行うとともに、フィリピン海軍要員の教育・訓練の支援と、フィリピン海軍による運用を持続していくための維持整備分野に係る支援を行うものである。フィリピン海軍は、人道支援・災害救援、輸送及び海洋状況把握に関係する任務の遂行のために、TC-90を運用することとしており、、救難、輸送、警戒及び監視に係る協力として、友好国であるフィリピンとの安全保障・防衛協力の強化に資することから、日本の安全保障の観点から積極的な意義を有するものと考えられるとのことである。

 さらに、仕向先はフィリピンであり、最終需要者はフィリピン海軍及びその契約者であって、適正管理の確実性は高い。加えて、移転されるTC-90等は適正管理が確保されることとなっている他、TC-90は民生品で使用されている汎用的な技術を用いて民間航空機(米国ビーチクラフト社製キングエアC90)を改造したものであること等を考慮すれば、日本の安全保障上の問題はないと認められるとのことでもある。

 <TC-90の概要>
海上自衛隊練習機TC-90は、気象条件の制約のため、目視に頼ることなく、航空機の姿勢、高度、位置及び進路の測定を計器のみに依存して行う、「計器飛行」の教育に使用されている。米国から輸入された民間航空機であるC90を国内企業が民生品で使用されている汎用的な技術を用いて改造されたものである(日本防衛省や外務省の資料などより)。