住友鉱出資のニッケル・アジア、第1四半期53%増益

ペソ安効果等で純利益5.8億ペソ、収入は13%減少

2018/05/04

 フィリピンの有力ニッケル鉱山会社であるニッケル・アジア・コーポレーション社(ナック社)が、5月3日、2018年第1四半期(1~3月)の決算速報を発表した。

 今第1四半期の鉱石出荷量は前年同期比1.3%増の309万トンと堅調であった。しかしながら、鉱石輸出価格下落や低品位鉱の比率拡大などにより、収入は同13%減の21億6,000万ペソへと二桁減少した。ちなみに、中国などへの直接輸出分109万トンの1トン当たり平均出荷価格は17.07米ドルで、前年同期の31.67米 ドルから46%急落した。この急落は、ニッケル鉱石輸出を解禁したインドネシアがその輸出を拡大させていることなどが背景となっている。

 二桁減少となったが、ペソ安効果にくわえ、出資先のコーラルベイ・ニッケル・コーポレーション(CBNC)やタガニートHPAL社(THPAL)の採算向上などで、純利益は同53%増の5億7,600万ペソへと大幅増加した。CBNCやHPALは、住友金属鉱山(住友鉱)のフィリピンにおけるニッケル中間品拠点である。
 
 ナック社は世界有数のニッケル資源国であるフィリピンにおいて、最大規模のニッケル鉱石生産を行う鉱山会社である。そして、住友金属鉱山の重要な戦略パートナーとなっている。

 ニッケルは、日常生活からハイテク分野まで非常に幅広い分野で使用されている。したがって、ニッケル資源の確保には、低品位鉱石からのニッケル分の回収が必須となっている。住友鉱は従来回収困難であった低品位のニッケル酸化鉱からニッケルおよびコバルトを回収する技術である HPAL(High Pressure Acid Leach =高圧硫酸浸出)の商業生産化に世界で初めて成功し、2005年からフィリピンCBNCで、ニッケル中間製品であるMS(ニッケル・コバルト混合硫化物)の生産を開始した。 2009年4月にはCBNC における第2工場の垂直立ち上げを完了し、同社の生産能力を年間1万トンから2万4千トン(ニッケル量換算)へ増加させた。現在のCBNCの資本金は5億8,750万ペソ、出資比率は住友鉱54%、三井物産 18%、双日18%、ナック社10%である。 
 
 CBNCの実績を背景として、住友鉱はHPAL技術を用いたタガニート・プロジェクトを2013年に完成させ世界トップクラスのニッケル製錬メーカーの地位を固めた。タガニート・プロジェクトにおいては、傘下のTHPALがミンダナオ島北東部タガニート地区にて、現時点でMS( ニッケル品位約57%)の年間生産能力3万6千トン(ニッケル量換算)体制を構築している。THPALの資本金は40億9,500万ペソ、出資比率は住友鉱75%、ナック社10%、三井物産15%となっている。

 住友鉱は、ナック社に2009年に資本参加した。現時点で、100%子会社である住友金属鉱山フィリピン・ホールディングス(SMMPH)などを通じてナック社株式約26%を保有している。SMMPHは2010年に、フィリピンでのニッケル事業に関する地域統括会社として設立された(18年5月3日のフィリピン証券取引所回覧03022-2018号などより)。