長大等のミンダナオ島小水力発電所完工

栗本鐵工所等と協働で上水供給能力強化も

2018/05/10

 長大(本社:東京都中央区)は 4月30日に、フィリピンのミンダナオ島カラガ地域において進めている8MWアシガ川小水力発電事業( 北アグサン州ディゴス地区)およびタギボ川上水供給コンセッション事業(ブトゥアン市アンティカラ地区)の竣工式を執り行った。

    アシガ川小水力発電事業(出力 8MW)は、事業パートナーであるエクイパルコ・コンストラクション・カンパニー(エクイパルコ)並びにツインピーク・ハイドロ・リソーシス・コーポレーション(ツインピーク)と協働して開発を進める 3 河川での小水力発電事業のひとつであり、2012 年に着工し、この度無事完工となった。 総事業費は約 35 億円で、建設にあたっては JBIC ツーステップローンを活用した資金調達を実施しており、発電設備については、日本の富士・フォイトハイドロ社の水車発電機を採用している。

   長大は、これまで、経済開発のポテンシャルを持ちながら、ミンダナオ島の中でも特に経済開発が立ち遅れているカラガ地域において、同発電事業が経済開発推進に不可欠な基幹インフラであるとの認識の下、当社の事業推進戦略における第 2 の事業軸「環境・新エネルギー分野」において、一層の事業拡大に向けた鍵となるプロジェクトとして位置付けて、出資参画を通して事業開発を進めてきた。同発電事業の中で長大は、(ア)プロジェクト全体のエンジニアリングレビュー、(イ)施工管理に関するコンサルティング、(ウ)O&M に関するコンサルティング、(エ)日本メーカーの発電機器調達に関するコンサルティング、(オ)日本の金融機関の情報提供、の5つのコンサルティングを受注・担当している。

    同日に併せて竣工式が執り行われたタギボ川上水供給コンセッション事業は、上述のアシガ川小水力発電事業と同様に事業パートナーであるエクイパルコ社並びにツインピーク社と実施する比地方公共団体における初のコンセッション事業であり、2017年から暫定運用を開始している。同施設の建設にあたっては、事業パートナーと共にF/Sを実施し、導水管に栗本鐵工所、バルブ・弁類に前澤工業、継手にコスモ工機の製品を採用するなど、アシガ川小水力発電所と同様に日本の質の高いインフラ設備が導入されている。 現在、日量3万立米の供給能力を有するが、ブトゥアン市の水需要増加が著しく、上水供給能力強化は喫緊の課題となっている。このため、2017年度に経済産業省の支援の下、浄水設備導入検討調査を実施し、年内 に日本政府が掲げる「インフラシステム輸出戦略」に即した、日量5万立米の供給能力を有する浄水施設建設に着工する予定である。

    長大は2011年からミンダナオ島で、アシガ川小水力発電事業、タギボ川小水力発電事業、ワワ川小水力発電事業、の 3 つを推進してきた。この程、完工式を終えたアシガ川小水力発電事業に次ぎ、タギボ川小水力発電事業(4MW)は2017 年 1 月に日比両国間で締結された二国間クレジット制度(JCM)の設備補助事業として2017 年度に採択を得て、2019 年度中の完工を目指している事業である。先行するアシガ川小水力発電事業にて培った事業開発ノウハウを生かし、JCM 設備補助により、発電に係る設備調達費の最大 50%の支援を受けると共に、JBIC のツーステップローンならびに日系企業の水車発電機調達に向けて交渉を進めている。ワワ川小水力発電事業(10MW)は、2013 年度に経済産業省の支援と、2014年度から2015年度にかけて国際協力 機構(JICA)の支援を受けて開発を進めている事業。気候変動による気象条件の激化が指摘される中、小水力発電設備で最も被害を受けやすい水路をトンネル構造とすることで、気候変動対策を図りながら、ミンダナオ島において将来的に見込まれるトンネル掘削技術の移転を含む事業として推進している。

    また、これら 3 河川での小水力発電事業とは別に、風力発電事業、バイオマス発電事業等の再生可能エネルギー事業を進めている。同時にこれらの電力や、上水供給事業による安定的な上水供給を受け、地域内の雇用機会を創出する工業団地開発を進めると共に、ブトゥアン市と北アグサン州が主導する形でカラガ地域全体の最優先プロジェクトとして推進している周辺工業団地と物流拠点となる港を結ぶ産業道路整備を支援している。さらに、これらの事業と並行し、工業団地での加工対象品となる農業・水産養殖業における効率的・安定的な生産支援にも取り組んでいる。

    このような活動の中、長大は一貫して日本に関係する主体が可能な限り関与・協働する機会を創出し、日本からのヒト・モノ・カネを取り込んでいくつなぎ役を実践してきた。本年には、つなぎ役を一層強化し、より多くの日本企業の参画機会を提供することを目的に一般社団法人を設立し、この活動を通してミンダナオ島カラガ地域における経済開発に貢献していく方針である。

    今後も日本政府が推し進める質の高いインフラ輸出や低炭素社会の構築にも沿う形 で事業の推進を図り、低炭素型経済開発を通して地球温暖化問題や日本国温室効果ガス (GHG)排出削減量獲得とミンダナオ島における和平構築に貢献していきたいと考えている。 また、日本や日本企業とのつなぎ役としての機能を担い、引き続き、日本の政府系機関や地方自治体、民間企業の参画機会を最大限に増やしつつ、ブトゥアン市周辺エリアをはじめ、ミンダナオ島の経済発展に強く貢献すると共に、日本の地方にある優れた技術やノウハウの輸出を通して、 日本の地方創生にも貢献していく方針である(18年5月9日の株式会社長大ニュースリリースより)。