経常収支3年連続赤字へ、比経済の強みに陰り
中央銀行、今年の赤字23%増の31億ドルと予想
2018/06/18
中央銀行(BSP)は6月14日、最新の2018年の対外収支予想を発表した。これは、昨年12月に発表された予想値を修正したものであり、最新データを含むとともに国内外の最近の経済動向及び将来の経済見通しなどを踏まえたものである。
最新予想では、物資貿易赤字の拡大などで、2018年の経常収支は31億米ドルの赤字(前年25億1,800万米ドルの赤字から23%増加)となり、経常収支赤字の対GDP比率は0.9%(前年0.8%)となると見込んでいる。物資輸入の増加率予想は、昨年12月時点での10%増から11%増に上方修正された。経常収支は、今後もフィリピン人海外就労者(OFW)からの安定した送金や、躍進するビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)や観光収入で下支えされるというパターンは続きそうなものの、2018年は、物資貿易赤字の急ピッチの拡大をカバーするには至らず、3年連続の赤字となると懸念される。
金融収支は、予想される外資直接投資(FDI)の純流入の増加とその他投資における純流出の減少により、全体として純流入となる見通し。官民連携事業の実施に相まって、世界の経済状況が2017年に比べ良くなるとの見込みから、国内経済においてポジティブな展開が持続し、2018年のFDI純流入額は92億米ドルに達すると予想されている。
これらの結果、2018年の国際総合収支の赤字予想は、昨年12月時点の10億米ドルから15億米ドル(対GDP比率0.4%)に上方修正された。2018年末の総外貨準備高(GIR)は約800億米ドル(輸入の7か月分に相当)と予想されている。
なお、6月14日に発表された対外収支速報値では、2018年第1四半期の経常収支赤字は、サービス貿易収支の改善などで前年同期比75.8%減の2億0,800万米ドル(速報値)へ縮小した。しかし、国際総合収支赤字は、金融収支純流出増加などで同23.4%増の12億2,700万米ドルへと拡大した(詳細は別掲)。
[対外収支の長期的な動き]
フィリピンの貿易収支は慢性的大幅赤字であるものの、経常収支はOFW送金効果などで2003年に黒字転換した後、黒字拡大基調が続き、2013年には113億8,400万米ドル(対GDP比4.2% )という史上最高の黒字を記録、2015年まで13年連続で黒字を継続してきた。しかし、2016年に11億9,900万米ドルの赤字に転落、黒字継続が途切れてしまった。そして、2017年も25億1,800万米ドルの赤字となり、上記のように2018年も3年連続の赤字と予想されている。すなわち、OFW効送金効果で経常収支黒字継続というフィリピン経済の強みが、一時的にしても消えている状況は要注意といえよう。
一方、国際総合収支は2005年から2013年まで9年連続で黒字が続いたが、2014年に28億5,800万米ドルの赤字に転落した。2015年には一旦黒字に復帰したが、2016年と2017年連続の赤字となり、経常収支と同様に、2018年3年連続で赤字となると予想されている。OFW送金は順調に増加してきているが、今後、貿易収支拡大をどの程度カバーしていくか、その結果対外収支がどのように推移していくかが注目される。
フィリピン対外収支推移(単位:百万米ドル:BPM6方式)
(出所:中央銀行資料より作成、2017年は速報値)
最新予想では、物資貿易赤字の拡大などで、2018年の経常収支は31億米ドルの赤字(前年25億1,800万米ドルの赤字から23%増加)となり、経常収支赤字の対GDP比率は0.9%(前年0.8%)となると見込んでいる。
金融収支は、予想される外資直接投資(FDI)
これらの結果、2018年の国際総合収支の赤字予想は、
なお、6月14日に発表された対外収支速報値では、2018年第1四半期の経常収支赤字は、サービス貿易収支の改善などで前年同期比75.8%減の2億0,800万米ドル(速報値)へ縮小した。しかし、国際総合収支赤字は、金融収支純流出増加などで同23.4%増の12億2,700万米ドルへと拡大した(詳細は別掲)。
[対外収支の長期的な動き]
フィリピンの貿易収支は慢性的大幅赤字であるものの、経常収支はOFW送金効果などで2003年に黒字転換した後、黒字拡大基調が続き、2013年には113億8,400万米ドル(対GDP比4.2% )という史上最高の黒字を記録、2015年まで13年連続で黒字を継続してきた。しかし、2016年に11億9,900万米ドルの赤字に転落、黒字継続が途切れてしまった。そして、2017年も25億1,800万米ドルの赤字となり、上記のように2018年も3年連続の赤字と予想されている。すなわち、OFW効送金効果で経常収支黒字継続というフィリピン経済の強みが、一時的にしても消えている状況は要注意といえよう。
一方、国際総合収支は2005年から2013年まで9年連続で黒字が続いたが、2014年に28億5,800万米ドルの赤字に転落した。2015年には一旦黒字に復帰したが、2016年と2017年連続の赤字となり、経常収支と同様に、2018年3年連続で赤字となると予想されている。OFW送金は順調に増加してきているが、今後、貿易収支拡大をどの程度カバーしていくか、その結果対外収支がどのように推移していくかが注目される。
フィリピン対外収支推移(単位:百万米ドル:BPM6方式)
年 | 09年 | 10年 | 11年 | 12年 | 13年 | 14年 | 15年 | 16年 | 17年 |
貿易収支 | -13860 | -16859 | -20428 | -18926 | -17662 | -17730 | -23309 | -35549 | -41191 |
対GNI比 | 6.2% | 7.0% | 7.6% | 6.3% | 5.3% | 5.0% | 6.6% | 9.7% | -10.9% |
対GDP比 | 8.2% | 8.4% | 9.1% | 7.6% | 6.5% | 6.1% | 8.0% | 11.7% | -13.1% |
貿易・サービス収支 | -8962 | -11094 | -13866 | -12747 | -10647 | -12754 | -17854 | -28506 | -31695 |
対GNI比 | -4.0% | -4.6% | -5.1% | -4.2% | -3.2% | -3.7% | -5.0% | -7.8% | -8.4% |
対GDP比 | -5.3% | -5.6% | -6.2% | -5.1% | -3.9% | -4.5% | -6.1% | -9.3% | -10.1% |
経常収支 | 8448 | 7179 | 5643 | 6949 | 11384 | 10756 | 7266 | -1199 | -2518 |
対GNI比 | 3.8% | 3.0% | 2.1% | 2.3% | 3.4% | 3.1% | 2.1% | -0.3% | -0.7% |
対GDP比 | 5.0% | 3.6% | 2.5% | 2.8% | 4.2% | 3.8% | 2.5% | -0.4% | -0.8% |
国際総合収支 | 6421 | 15243 | 11400 | 9236 | 5085 | -2858 | 2616 | -420 | -863 |
対GNI比 | 2.9% | 6.4% | 4.2% | 3.1% | 1.5% | -0.8% | 0.7% | -0.1% | -0.2% |
対GDP比 | 3.8% | 7.6% | 5.1% | 3.7% | 1.9% | -1.0% | 0.9% | -0.1% | -0.3% |