住友鉱、フィリピン等での資源高度活用を推進
レアアースのスカンジウム、クロマイトの生産も
2018/09/03
住友金属鉱山(住友鉱、本社:東京都港区)のフィリピンでの事業基盤拡大、資源高度有効活用が進展している。
住友鉱は、このほど発表された2019年3月期第1四半期(2018年4月~6月)報告書において、製錬事業の今後の経営方針に関して、「ニッケル製錬につき、タガニートプロジェクトと電気ニッケル生産能力の6万5千トン/年への増産(2013年完工)によるニッケル10万トン/年体制が完成し、さらに長期ビジョンとして、新規鉱源確保とニッケル生産能力増強により、これを15万トン/年に引き上げる構想を描いている」、「スカンジウムやクロマイトといった新たな資源回収の事業化を推進する。銅製錬は、安定操業の維持、二次原料の増処理、固定費の削減等により、 収益力の向上を図る。製錬事業の 競争力をさらに強化するべく、資源・精錬開発センターにおいて、資源・製錬 技術の革新に取り組んでいく」と説明している。
世界のニッケル資源の確保には、低品位鉱石からのニッケル分の回収が必須となっている。住友鉱は従来回収困難であった低品位のニッケル酸化鉱からニッケルおよびコバルトを回収する技術である HPAL(High Pressure Acid Leach =高圧硫酸浸出)の商業生産化に世界で初めて成功し、2005年からフィリピンのコーラルベイ・ニッケル・コーポレーション(CBNC、所在地:パラワン島)で、ニッケル中間製品であるMS(ニッケル・コバルト混合硫化物)の生産を開始した。2009年4月にはCBNC における第2工場の垂直立ち上げを完了し、同社の生産能力を年間1万トンから2万4千トン(ニッケル量換算)へ増加させた 。
このような実績を背景として、住友鉱はHPAL技術を用いたタガニート・プロジェクトを2013年に完成させ、世界トップクラスのニッケル製錬メーカーの地位を固めた。タガニート・プロジェクトにおいては、傘下のタガニートHPAL社(THPAL)がミンダナオ島北東部タガニート地区にて、MS(ニッケル品位約57%)を年間3万トン(ニッケル量換算、以下同様)から3万6千トンへと高めている。THPALの資本金は40億9,500万ペソ、出資比率は住友金属鉱山75%、ニッケル・アジア(NAC)10%、三井物産15%となっている。
住友鉱は、HPALからの新たな有価金属の回収を事業化し、競争力強化に努めつつある。具体的には、希土類元素(レアアース)の一つであるスカンジウムの生産を開始する。スカンジウム(元素記号:Sc)は希土類元素の一つで、1879年に発見された。銀白色の金属で比重は2.99。アルミニウムの強度、耐熱性、耐食性を高めるための添加物、固体酸化物形燃料電池の電解質のほか、メタルハライドランプ、アルカリ電池の電極等に使用される。
タガニートなどではHPAL法によりMSが生産されているが、その原料鉱石中に微量のスカンジウムが含まれている。住友鉱は、新居浜研究所(愛媛県新居浜市)でその回収方法の開発に取り組んできたが、ニッケル・コバルト混合硫化物の製造工程からスカンジウムを効率的に回収する技術を確立、2018年度にスカンジウムの商業生産を開始する予定である。
スカンジウムは、現在はアメリカ、ウクライナ、ロシア、中国等を中心に年間10トン程度生産されていると推定される。生産量が少なく、かつ高価であることからこれまでは需要が限定されているが、安定的な供給により主な用途であるアルミニウムへの添加剤や固体酸化物形燃料電池の電解質等の分野での伸びが期待される。
住友鉱は、2017年12月には、主にステンレス鋼の原料となるクロマイトの回収事業への参入も決定した。タガニートHPAL ニッケル社にクロマイトの回収プラントを建設し、2020年より生産を開始する予定である。クロマイトは、中間製品であるフェロクロムに製錬加工され、ステンレス鋼をはじめ特殊鋼向け原料として幅広く使用されており、住友鉱はこのクロマイトをTHPALのニッケル・コバルト混合硫化物の製造工程から回収する。
住友鉱は、ニッケル・コバルトのみならずスカンジウムやクロマイトなどの副産物を効率的に回収することでHPAL技術のコスト競争力を高める。また、ニッケル事業の主要な製品供給先であるステンレス業界向けに新たな素材を提供することで、世界のニッケル事業における存在感を更に向上させて行く方針である(住友金属鉱山株式会社の2019年3月期第1四半期報告書などより)。
住友鉱は、このほど発表された2019年3月期第1四半期(2018年4月~6月)報告書において、製錬事業の今後の経営方針に関して、「ニッケル製錬につき、タガニートプロジェクトと電気ニッケル生産能力の6万5千トン/年への増産(2013年完工)によるニッケル10万トン/年体制が完成し、さらに長期ビジョンとして、新規鉱源確保とニッケル生産能力増強により、これを15万トン/年に引き上げる構想を描いている」、「スカンジウムやクロマイトといった新たな資源回収の事業化を推進する。銅製錬は、安定操業の維持、二次原料の増処理、固定費の削減等により、 収益力の向上を図る。製錬事業の 競争力をさらに強化するべく、資源・精錬開発センターにおいて、資源・製錬 技術の革新に取り組んでいく」と説明している。
世界のニッケル資源の確保には、低品位鉱石からのニッケル分の回収が必須となっている。住友鉱は従来回収困難であった低品位のニッケル酸化鉱からニッケルおよびコバルトを回収する技術である HPAL(High Pressure Acid Leach =高圧硫酸浸出)の商業生産化に世界で初めて成功し、2005年からフィリピンのコーラルベイ・ニッケル・コーポレーション(CBNC、所在地:パラワン島)で、ニッケル中間製品であるMS(ニッケル・コバルト混合硫化物)の生産を開始した。2009年4月にはCBNC における第2工場の垂直立ち上げを完了し、同社の生産能力を年間1万トンから2万4千トン(ニッケル量換算)へ増加させた 。
このような実績を背景として、住友鉱はHPAL技術を用いたタガニート・プロジェクトを2013年に完成させ、世界トップクラスのニッケル製錬メーカーの地位を固めた。タガニート・プロジェクトにおいては、傘下のタガニートHPAL社(THPAL)がミンダナオ島北東部タガニート地区にて、MS(ニッケル品位約57%)を年間3万トン(ニッケル量換算、以下同様)から3万6千トンへと高めている。THPALの資本金は40億9,500万ペソ、出資比率は住友金属鉱山75%、ニッケル・アジア(NAC)10%、三井物産15%となっている。
住友鉱は、HPALからの新たな有価金属の回収を事業化し、競争力強化に努めつつある。具体的には、希土類元素(レアアース)の一つであるスカンジウムの生産を開始する。スカンジウム(元素記号:Sc)は希土類元素の一つで、1879年に発見された。銀白色の金属で比重は2.99。アルミニウムの強度、耐熱性、耐食性を高めるための添加物、固体酸化物形燃料電池の電解質のほか、メタルハライドランプ、アルカリ電池の電極等に使用される。
タガニートなどではHPAL法によりMSが生産されているが、その原料鉱石中に微量のスカンジウムが含まれている。住友鉱は、新居浜研究所(愛媛県新居浜市)でその回収方法の開発に取り組んできたが、ニッケル・コバルト混合硫化物の製造工程からスカンジウムを効率的に回収する技術を確立、2018年度にスカンジウムの商業生産を開始する予定である。
スカンジウムは、現在はアメリカ、ウクライナ、ロシア、中国等を中心に年間10トン程度生産されていると推定される。生産量が少なく、かつ高価であることからこれまでは需要が限定されているが、安定的な供給により主な用途であるアルミニウムへの添加剤や固体酸化物形燃料電池の電解質等の分野での伸びが期待される。
住友鉱は、2017年12月には、主にステンレス鋼の原料となるクロマイトの回収事業への参入も決定した。タガニートHPAL ニッケル社にクロマイトの回収プラントを建設し、2020年より生産を開始する予定である。クロマイトは、中間製品であるフェロクロムに製錬加工され、ステンレス鋼をはじめ特殊鋼向け原料として幅広く使用されており、住友鉱はこのクロマイトをTHPALのニッケル・コバルト混合硫化物の製造工程から回収する。
住友鉱は、ニッケル・コバルトのみならずスカンジウムやクロマイトなどの副産物を効率的に回収することでHPAL技術のコスト競争力を高める。また、ニッケル事業の主要な製品供給先であるステンレス業界向けに新たな素材を提供することで、世界のニッケル事業における存在感を更に向上させて行く方針である(住友金属鉱山株式会社の2019年3月期第1四半期報告書などより)。