ソフトバンクとNEDO、比で新公共交通システム実証

電動三輪車活用等でエネルギー消費量85%以上削減

2018/10/31

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)とソフトバンクは、フィリピンのマニラ市内で電動三輪自動車と、充電設備や課金システムなどで構成するEVエコシステムを組み合わせた新公共交通システムの実証事業を実施し、その結果として「正確な定期運行」、「車両の稼働率管理」、「充電管理」、「システム(技術)の汎用化」を実現し、従来のガソリン三輪車と比べて85%以上のエネルギー消費量削減を達成した。
 
 今後、本実証事業の成果をもとに、同国への新公共交通システムの普及を図り、エネルギー消費量削減に貢献していく方針である。
 
 フィリピンは、ガソリン車またはディーゼル車の排気ガスによる大気汚染、騒音、交通渋滞といった交通に起因する環境負荷問題の解決方法の一つとして、電気自動車(EV)とITを用いた効率的な公共交通機関の実現に強い関心を示しており、同国で広く普及しているガソリン三輪車(バイクにサイドカーを付けた乗り物)に着目し、これらをEVに変えて環境負荷低減を図る動きがある。一方でEV普及のためには、EVのみならず普及に必要なインフラ(充電インフラ、利用を支えるITや運用サービスなどの仕組み、車両のメンテナンス体制、資金面の仕組み)を整える必要がある。 
 
 このような背景のもと、NEDOは、2016年4月にフィリピン共和国貿易産業省(DTI)とイントラムロス監督庁(IA)との間で、電動三輪自動車とEVエコシステムを組み合わせた新公共交通システムの導入・普及に向けた実証事業を実施することに合意し、それぞれ省庁との間で基本協定書(MOU)を締結した。
 
 本実証事業では、ソフトバンクを委託先として選定し、2016年10月から2018年9月まで約2年間、マニラ市内の観光・文教地区であるイントラムロスに実証サイトを設けて実施した。今回の実証で用いたEVエコシステムは、「サービスプラットホーム」、「個別認証を含む充電インフラ」、「運行管理・アセット管理をするテレマティクス」、「車両に搭載する通信機器」の4つから構成されるものであり、これらを一つにパッケージ化してサービスとして提供することにより、「正確な定期運行」、「車両の稼働率管理」、「充電管理」、「システム(技術)の汎用化」を実現し、公共交通機関と して従来のガソリン三輪車を導入した場合と比べ、85%以上のエネルギー消費量削減を達成した。
 
 テレマティクスとは、自動車などの移動体に無線通信や情報システムを統合し、何らかの機能を実現したりサービスを提供したりすることで、“telecommunications”(遠隔通信)と“informatics”(情報科学)の造語である。
 
 なお10月30、イントラムロスでNEDO、DTI、IA、ソフトバンクは成果報告会を催行し、日本およびフィリピン政府機関関係者らが出席した。
 
<今回の成果>
1.新たに導入する電動三輪自動車とEVエコシステムを組み合わせた新公共交通システムの導入に関して実証を行い、同システムの有効性と省エネ効果を検証して3つの成果を得た。1つ目は、車載IT技術を駆使し車両間隔の自動調整の仕組みを導入することに成功し、正確な定期運行を実現。2つ目は、テレマティクス技術を用いて都度発生する不具合を素早く発見し、早急に対応策を打つことにより車両故障や充電計画不備などによる配車計画への支障をなくし、運行スケジュールの遵守率90%以上を達成した。3つ目は、バッテリー残量や充放電状況をリアルタイムでモニタリングすることに より、バッテリーが切れることなく運行することに成功した。
 
2.電動三輪自動車普及の代表的な阻害要因である充電環境問題に対して、個別認証、個別充電量および個別機器状態などの情報を、ネットワーク経由でデータベース化して、管理・制御する仕組みを確立した。
 
3.車両システムを旅客運行事業者に対してサービスとして一括提供できる仕組みを構築し、さらには、旅客運行事業者ごとの多様なニーズにマッチできるように多様な契約形態への対応を可能にした。
 
 これら実証内容を通して、「正確な定期運行」、「車両の稼働率管理」、「充電管理」、「システム(技術)の汎用化」を実現した。実証サイトであるイントラムロスにおいて、公共交通機関として従来のガソリン三輪車を導入した場合と比べ、本システムを導入した場合の方がエネルギー消費量85%以上を削減できることを実証した。
 
<今後の予定>
 ソフトバンクは、今回の実証事業サイトをショールームとして活用することで、フィリピン国内への新公共交通システムの導入・普及を図り、大幅な排気ガス削減、エネルギー消費量の削減に貢献するとともに、大気汚染、騒音、交通渋滞といった交通に起因する環境負荷問題の解決に貢献していく方針である。
(18年10月30日の国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構のニュースリリースなどより)