9カ月間の経常収支、65億ドルの赤字に転落
3年連続の赤字懸念、比経済の強みに陰り
2018/12/17
フィリピン中央銀行(BSP)は12月14日、国際通貨基金(IMF)の国際収支マニュアル第6版(BPM6)に準拠した、2018年第3四半期(7-9月)及び年初9カ月間の国際総合収支(BOP)統計の詳細速報値を発表した。
第3四半期の経常収支は29億0,700万米ドルの赤字に転落。貿易赤字を海外フィリピン人就労者(OFW)からの送金等では相殺できなかった。この結果、第3四半期の国際総合収支(BOP)は18億7,900万米ドルの赤字となり、前年同期から赤字が2.8倍拡大した。一方、堅実なマクロ経済基盤に支えられて、金融収支が純流入に転じ、赤字削減に寄与した。
9カ月間の経常収支は64億7,100万米ドルの赤字に転落(前年同期は9億6,800万米ドルの黒字)、国際収支は51億3,600万米ドルの赤字となり、前年同期の13億6,700万米ドルから赤字が2.8倍に拡大した。
このような状況下で、2018年9月末現在の外貨準備高(GIR)は前年同月末比8%減の749億米ドルとなったが、輸入の6.6カ月分、元本ベース短期対外負債の5.6倍、残存ベース短期対外負債の4.0倍に相当する水準である。
[国際総合収支発表について]
中央銀行は国際収支(BOP)積み上げ方式統計に関して、2003年10月にそれまでの毎月発表から四半期毎の発表へ変更することを決定した。これは、統計内容の確認、モニター、調整を強化し、より精度の高い統計を発表することが目的である。ただし中央銀行は、毎月、純外貨準備高(NIR)変動から算出した国際総合収支推計速報値を発表している。ちなみに、最新数値は、12月19日に発表される予定。
国際総合収支の詳細内訳(単位:百万米ドル、伸び率%)
(出所:BSP資料より作成、注:17年は改定値、18年は全て速報値、伸び率表示はBSP方式による)
[対外収支の長期的な動き]
フィリピンの貿易収支は慢性的大幅赤字であるものの、経常収支はOFW送金効果などで2003年に黒字転換した後、黒字拡大基調が続き、2013年には113億8,400万米ドル(対GDP比4.2% )という史上最高の黒字を記録、2015年まで13年連続で黒字を継続してきた。しかし、2016年に11億9,900万米ドルの赤字に転落、黒字継続が途切れてしまった。そして、2017年も21億6,300万米ドルの赤字となり、上記のように2018年も3年連続の赤字となることが懸念される。すなわち、OFW効送金効果で経常収支黒字継続というフィリピン経済の強みが、一時的にしても消えている状況は要注意といえよう。
一方、国際総合収支は2005年から2013年まで9年連続で黒字が続いたが、2014年に28億5,800万米ドルの赤字に転落した。2015年には一旦黒字に復帰したが、2016年と2017年連続の赤字となり、経常収支と同様に、2018年も3年連続で赤字となることが懸念される。OFW送金は底堅く推移しているが、今後、貿易収支拡大をどの程度カバーしていくか、その結果対外収支がどのように推移していくかが注目される。
フィリピン対外収支推移(単位:百万米ドル)
(出所:フィリピン中央銀行資料より作成)
第3四半期の経常収支は29億0,700万米ドルの赤字に転落。貿易赤字を海外フィリピン人就労者(OFW)からの送金等では相殺できなかった。この結果、第3四半期の国際総合収支(BOP)は18億7,900万米ドルの赤字となり、前年同期から赤字が2.8倍拡大した。一方、堅実なマクロ経済基盤に支えられて、金融収支が純流入に転じ、赤字削減に寄与した。
9カ月間の経常収支は64億7,100万米ドルの赤字に転落(前年同期は9億6,800万米ドルの黒字)、国際収支は51億3,600万米ドルの赤字となり、前年同期の13億6,700万米ドルから赤字が2.8倍に拡大した。
このような状況下で、2018年9月末現在の外貨準備高(GIR)は前年同月末比8%減の749億米ドルとなったが、
[国際総合収支発表について]
中央銀行は国際収支(BOP)積み上げ方式統計に関して、
国際総合収支の詳細内訳(単位:百万米ドル、伸び率%)
項目 | 第3四半期 | 1-9月 | ||||
年 | 17年 | 18年 | 伸び率(%) | 17年 | 18年 | 伸び率(%) |
経常収支 | 1100 | -2907 | -364.2 | 968 | -6471 | -768.6 |
対GNI比(%) | 1.2 | -3.0 | - | 0.4 | -2.3 | - |
対GDP比(%) | 1.5 | -3.7 | - | 0.4 | -2.7 | - |
貿易・サービス・第一次所得収支 | -5400 | -9342 | -73.0 | -18310 | -25913 | -41.5 |
貿易・サービス収支 | -6100 | -10388 | -70.3 | -20553 | -28443 | -38.4 |
貿易収支 | -9442 | -13546 | -43.5 | -27680 | -36870 | -33.2 |
対GNI比(%) | -10.4 | -14.2 | - | -10.1 | -12.8 | - |
対GDP比(%) | -12.6 | -17.2 | - | -12.3 | -15.5 | - |
輸出 | 13445 | 13474 | 0.2 | 39183 | 38813 | -0.9 |
輸入 | 22887 | 27020 | 18.1 | 66864 | 75683 | 13.2 |
サービス収支 | 3342 | 3158 | -5.5 | 7127 | 8427 | 18.2 |
第一次所得収支 | 700 | 1046 | 49.5 | 2244 | 2530 | 12.8 |
第二次所得収支 | 6501 | 6435 | -1.0 | 19277 | 19443 | 0.9 |
資本移転等収支 | 18 | -3 | -113.8 | 42 | -5 | -111.9 |
金融収支(マイナス勘定) | 1335 | -1975 | -247.9 | 615 | -4027 | -755.0 |
直接投資 | -929 | -1300 | -39.8 | -4089 | -5038 | -23.2 |
証券投資 | 605 | -447 | -173.9 | 3471 | 2823 | -18.7 |
金融派生商品 | 45 | 33 | -26.5 | -92 | -19 | 79.0 |
その他投資 | 1615 | -262 | -116.2 | 1325 | -1794 | -235.4 |
誤差脱漏 | -445 | -945 | -112.3 | -1763 | -2687 | -52.5 |
国際総合収支 | -662 | -1879 | -184.0 | -1367 | -5136 | -275.6 |
対GNI比(%) | -0.7 | -2.0 | - | -0.5 | -1.8 | - |
対GDP比(%) | -0.9 | -2.4 | - | -0.6 | -2.2 | - |
参考:OFW等の個人送金額合計 | 7800 | 7926 | 1.6 | 23164 | 23713 | 2.4 |
うち銀行経由分 | 6968 | 7114 | 2.1 | 20781 | 21294 | 2.5 |
[対外収支の長期的な動き]
フィリピンの貿易収支は慢性的大幅赤字であるものの、経常収支はOFW送金効果などで2003年に黒字転換した後、黒字拡大基調が続き、2013年には113億8,400万米ドル(対GDP比4.2% )という史上最高の黒字を記録、2015年まで13年連続で黒字を継続してきた。しかし、2016年に11億9,900万米ドルの赤字に転落、黒字継続が途切れてしまった。そして、2017年も21億6,300万米ドルの赤字となり、上記のように2018年も3年連続の赤字となることが懸念される。すなわち、OFW効送金効果で経常収支黒字継続というフィリピン経済の強みが、一時的にしても消えている状況は要注意といえよう。
一方、国際総合収支は2005年から2013年まで9年連続で黒字が続いたが、2014年に28億5,800万米ドルの赤字に転落した。2015年には一旦黒字に復帰したが、2016年と2017年連続の赤字となり、経常収支と同様に、2018年も3年連続で赤字となることが懸念される。OFW送金は底堅く推移しているが、今後、貿易収支拡大をどの程度カバーしていくか、その結果対外収支がどのように推移していくかが注目される。
フィリピン対外収支推移(単位:百万米ドル)
年 | 10年 | 11年 | 12年 | 13年 | 14年 | 15年 | 16年 | 17年 |
経常収支 | 7179 | 5643 | 6949 | 11384 | 10756 | 7266 | -1199 | -2163 |
対GNI比 | 3.0% | 2.1% | 2.3% | 3.4% | 3.1% | 2.1% | -0.3% | -0.6% |
対GDP比 | 3.6% | 2.5% | 2.8% | 4.2% | 3.8% | 2.5% | -0.4% | -0.7% |
貿易・サービス収支 | -11094 | -13866 | -12747 | -10647 | -12754 | -17854 | -28506 | -31256 |
対GNI比 | -4.6% | -5.2% | -4.2% | -3.2% | -3.7% | -5.0% | -7.8% | -8.3% |
対GDP比 | -5.6% | -6.2% | -5.1% | -3.9% | -4.5% | -6.2% | -9.3% | -10.0% |
国際総合収支 | 15243 | 11400 | 9236 | 5085 | -2858 | 2616 | -1038 | -863 |
対GNI比 | 6.3% | 4.2% | 3.1% | 1.5% | -0.8% | 0.7% | -0.3% | -0.2% |
対GDP比 | 7.6% | 5.1% | 3.7% | 1.9% | -1.0% | 0.9% | -0.3% | -0.3% |