第1四半期の経常収支、赤字3.6倍の12億ドル

3年連続の赤字に続く不振、総合収支は黒字転換

2019/06/16

 フィリピン中央銀行(BSP)は6月14日、国際通貨基金(IMF)の国際収支マニュアル第6版(BPM6)に準拠した、2019年第1四半期(1月~3月)の国際総合収支(BOP)統計の詳細速報値を発表した。

 第1四半期の経常収支は12億米ドルの赤字で、前年同期から赤字が3.6倍に拡大した。物資の貿易赤字を、サービス貿易収支の黒字や海外フィリピン人就労者(OFW)の送金等では相殺できなかった。年間の経常収支はOFW送金効果などで2003年に黒字転換した後、黒字拡大基調が続き、2013年には113億8,400万米ドルという史上最高の黒字を記録、2015年まで13年連続で黒字を継続してきた。しかし、2016年に11億9,900万米ドルの赤字に転落、黒字継続が途切れてしまった。そして、2017年が21億4,300万米ドルの赤字、2018年が78億7,900万米ドルの赤字と3年連続の赤字となってしまった。2019年第1四半期の赤字額も大幅増加、すなわち、OFW効送金効果で経常収支黒字が継続したというフィリピン経済の強みが、最近は消えてしまっていることは要注意といえよう。

 しかし、投資純流入額が増加したことで、国際収支は37億9,700万米ドルの黒字となり、前年同期の12億2,700万米ドルの赤字から急改善した。このような展開で、2019年3月末現在の外貨準備高(GIR)は836億米ドルとなり、前年同月末の805億米ドルを上回った。輸入の7.3カ月分、元本ベース短期対外負債の5倍、残存ベース短期対外負債の3.3倍に相当する水準である。

 [国際総合収支発表について]
 中央銀行は国際収支(BOP)積み上げ方式統計に関して、2003年10月にそれまでの毎月発表から四半期毎の発表へ変更することを決定した。これは、統計内容の確認、モニター、調整を強化し、より精度の高い統計を発表することが目的である。ただし中央銀行は、毎月、純外貨準備高(NIR)変動から算出した国際総合収支推計速報値を発表している。ちなみに、最新数値は、6月19日に発表される予定。


            国際総合収支の詳細内訳(単位:百万米ドル、伸び率%)

項目 第1四半期
18年 19年 伸び率(%)
経常収支 -335 -1216 -263.2
  対GNI比(%) -0.4 -1.2 -
  対GDP比(%) -0.4 -1.5 -
貿易・サービス・第一次所得収支 -6918 -7858 -13.6
  貿易・サービス収支 -7716 -9209 -19.3
     貿易収支 -10561 -12389 -17.3
     対GNI比(%) -11.4 -12.7 -
     対GDP比(%) -13.9 -15.4 -
      輸出 12292 12197 -0.8
      輸入 22853 24585 7.6
    サービス収支 2845 3180 11.8
  第一次所得収支 798 1351 69.3
第二次所得収支 6583 6642 0.9
資本移転等収支 14 15 6.2
 
金融収支(マイナス勘定) -816 -4711 -477.1
  直接投資 -1025 -1074 -4.7
  証券投資 1612 -1795 -211.4
  金融派生商品 -69 -40 41.9
  その他投資 -1335 -1802 -35.0
 
誤差脱漏 -1722 287 116.7
 
国際総合収支 -1227 3797 409.5
  対GNI比(%) -1.3 3.9 -
  対GDP比(%) -1.6 4.7 -
 
参考:OFW等の個人送金額合計 7809 8098 3.7
 うち銀行経由分 7006 7299 4.2
(出所:BSP資料より作成、注:19年は全て速報値、伸び率表示はBSP方式による)