アイ・ピー・エス、比通信事業売上高5倍に急増

第1四半期約2億円に、最大手PLDTとも提携へ

2019/08/13

 情報通信事業などを展開する株式会社アイ・ピー・エス(IPS、本社:東京都中央区、東証マザーズ上場)のフィリピン子会社インフィニVAN社は、フィリピン最大の通信企業であるPLDTとの間で、国際通信役務提供に関して合意、8月9日に契約調印が行われた。PLDTによる国際通信回線の帯域の供給だけでなく、インフィニVAN社が有するマニラ首都圏地域の鉄道網を使った回線ネットワークを、PLDTグループに提供して、PLDTグループが5Gネットワークをマニラ首都圏地域に拡大させることなど広範囲な事業について検討も開始した。 

 なお、1991年10月設立のIPSは、フィリピンでCATV事業者等への国際通信回線提供や法人向けインターネット接続サービス(ISP)提供など積極的に通信事業を展開しており、上記のインフィニVAN社のほか、BPO企業KEYSQUARE(キースクエア、本社:マニラ首都圏オルティガス)を有している。インフィニVAN社は2015年に設立され、2016年に制定されたフィリピン共和国法第10898号によりフィリピン国内で通信事業を営むことができる権利(フランチャイズ)を持つ通信事業者である。固定通信のほか、無線通信サービスも提供することができる。

 このインフィニVAN社は、今年6月、フィリピン国家通信委員会(NTC)より、 24GHz帯の周波数の割当を受けた。この周波数を用いて、次世代無線通信システム(5G)の実証実験を行う。7月にはマニラ首都圏ケソン市にあるアラネタコロシアムで、5Gの実証実験を行うことにつき、アラネタコーポレーションと合意した。

 また、インフィニVAN社は、今年6月、MRTデベロップメント社との間で、マニラ首都圏地域の主要都市を結ぶMRT3線の設備上に、(1)光ファイバーを最大8通信事業者分収容できるマイクロ ダクトを鉄道設備内に設置 (2)各駅・駅間に5Gを含めたマイクロセル(省力型携帯電話基地局)を設置することで合意した。

 また、今年7月には、LRT庁(Light Railway Transit Authority)との間でも、高架鉄道LRT2号線の鉄道設備に、マイクロセル等の設備を設置する契約を締結した。既にLRT庁との間では、2018年9月、LRT2号線の線路設備使用契約が締結され。、2018年12月にLRT2号線全区間に、インフィニVAN社ほか、最大7事業者が光ファイバー回線を敷設できるダクトが完成している。インフィニVAN社は、現在大手CATV通信事業者に対してLRT2号線の光ファイバーの長期リースを供用している。今回の契約では、光ファイバー敷設の権利とは別に、マイクロセルやアンテナを設置する権利が与えられた。このように、高架鉄道に光ファイバーを敷設して等間隔で駅や線路に携帯電話の基地局を設置することで、乗客だけでなく、沿線の住民などへも電波を効率的に届けることができるようになる。

 このような積極展開により、IPSのフィリピン通信事業の収益は急拡大しつつある。IPSの2020年度第1四半期(2019年4月~6月)の決算補足資料などによると、今第1四半期のフィリピン国内通信事業の売上高は前年同期比394.5%増(約5倍)の1億8,800万円、営業損益は600万円の黒字転換(前年同期は300万円の赤字)となった。

 なお、IPS及びインフィニVAN社は、7月23日に ミンダナオ島カガヤン・デ・オロ市、同24日にダバオ市で、 CATV事業者向けに、ミンダナオ島内回線敷設の説明会及びダバオーグアム回線提供に関する説明会を実施した。 各社との協議の結果、ミンダナオ島で広範な回線敷設に着工し、開通した部分から随時使用を開始することで合意した。 敷設工事に参加する事業者は12社、今回の説明会を通じて、ダバオーグアム間の国際回線を、新規で発注した事業者は15社となった。このほか、ビサヤ地域においても、ネグロス島などで回線事業を展開する計画である。すなわち、マニラ首都圏以外でも事業基盤を構築しつつある。