上半期の経常収支、赤字54%減の17億ドルと改善
総合収支48億ドルの黒字に(前年同期33億ドルの赤字)
2019/09/15
フィリピン中央銀行(BSP)は9月13日、国際通貨基金(IMF)の国際収支マニュアル第6版(BPM6)に準拠した、2019年第2四半期(4月~6月)及び上半期(1月~6月)の国際総合収支(BOP)統計の詳細速報値を発表した。
第2四半期の経常収支は1億4,500万米ドルの赤字で、前年同期から赤字幅が95.6%急減した。物資貿易赤字の31.1%縮小、サービス貿易、第一次所得、第二次所得(主にOFW送金)の黒字が寄与したが、経常収支の黒字転換までには至らなかった。しかし、証券投資純流入額拡大などにより、国際総合収支は9億9,100万米ドルの黒字に転換した(前年同期は20億3,000万米ドルの赤字)。
2019年上半期の経常収支の赤字は前年同期比53.7%減の17億4,100万米ドルへと半減した。第2四半期と同様、物資貿易赤字が11.2減少したが、サービス貿易、第一次所得、第二次所得の黒字で経常収支赤字を相殺するには至らなかった。しかし、経常収支赤字半減と証券投資純流入の大幅拡大などにより、国際総合収支は44億8,800万米ドルの黒字へと急改善した(前年同期は32億5,700万米ドルの赤字)。
このような展開で、2019年6月末現在の外貨準備高(GIR)は849億米ドルにとどまり、前年同月末の775億米ドルを9.5%上回った。輸入の7.4カ月分、元本ベース短期対外負債の5.5倍、残存ベース短期対外負債の3.9倍に相当する水準である。
[国際総合収支発表について]
中央銀行は国際収支(BOP)積み上げ方式統計に関して、2003年10月にそれまでの毎月発表から四半期毎の発表へ変更することを決定した。これは、統計内容の確認、モニター、調整を強化し、より精度の高い統計を発表することが目的である。ただし中央銀行は、毎月、純外貨準備高(NIR)変動から算出した国際総合収支推計速報値を発表している。ちなみに、最新数値は、9月19日に発表される予定。
国際総合収支の詳細内訳(単位:百万米ドル、伸び率%)
(出所:BSP資料より作成、注:18年は改定値、19年は全て速報値、伸び率表示はBSP方式による)
[対外収支の長期的な動き]
フィリピンの貿易収支は慢性的大幅赤字であるものの、経常収支はOFW送金効果などで2003年に黒字転換した後、黒字拡大基調が続き、2013年には113億8,400万米ドル(対GDP比4.2% )という史上最高の黒字を記録、2015年まで13年連続で黒字を継続してきた。しかし、2016年に11億9,900万米ドルの赤字に転落、黒字継続が途切れてしまった。そして、2017年、2018年と3年連続の赤字となってしまった。すなわち、OFW効送金効果で経常収支黒字継続というフィリピン経済の強みが、一時的にしても消えている状況は要注意といえよう。
一方、国際総合収支も2005年から2013年まで9年連続で黒字が続いたが、2014年に28億5,800万米ドルの赤字に転落した。2015年には一旦黒字に復帰したが、2016年、2017年連続の赤字となり、経常収支と同様に、2018年も3年連続の赤字となってしまった。OFW送金は底堅く推移しているが、今後、物資貿易収支赤字をどの程度カバーしていくか、その結果対外収支がどのように推移していくかが注目される。
第2四半期の経常収支は1億4,500万米ドルの赤字で、前年同期から赤字幅が95.6%急減した。物資貿易赤字の31.1%縮小、サービス貿易、第一次所得、第二次所得(主にOFW送金)の黒字が寄与したが、経常収支の黒字転換までには至らなかった。しかし、証券投資純流入額拡大などにより、国際総合収支は9億9,100万米ドルの黒字に転換した(前年同期は20億3,000万米ドルの赤字)。
2019年上半期の経常収支の赤字は前年同期比53.7%減の17億4,100万米ドルへと半減した。第2四半期と同様、物資貿易赤字が11.2減少したが、サービス貿易、第一次所得、第二次所得の黒字で経常収支赤字を相殺するには至らなかった。しかし、経常収支赤字半減と証券投資純流入の大幅拡大などにより、国際総合収支は44億8,800万米ドルの黒字へと急改善した(前年同期は32億5,700万米ドルの赤字)。
このような展開で、2019年6月末現在の外貨準備高(GIR)は849億米ドルにとどまり、前年同月末の775億米ドルを9.5%上回った。
[国際総合収支発表について]
中央銀行は国際収支(BOP)積み上げ方式統計に関して、
国際総合収支の詳細内訳(単位:百万米ドル、伸び率%)
項目 | 第2四半期 | 1-6月 | ||||
年 | 18年 | 19年 | 伸び率(%) | 18年 | 19年 | 伸び率(%) |
経常収支 | -3284 | -145 | 95.6 | -3756 | -1714 | 53.7 |
対GNI比(%) | -3.3 | -0.1 | - | -2.0 | -0.9 | - |
対GDP比(%) | -4.0 | -0.2 | - | -2.4 | -1.0 | - |
貿易・サービス・第一次所得収支 | -9893 | -6815 | 31.1 | -16950 | -15054 | 11.2 |
貿易・サービス収支 | -10606 | -8039 | 24.2 | -18420 | -17586 | 4.5 |
貿易収支 | -12785 | -11290 | 11.7 | -23334 | -23527 | -0.8 |
対GNI比(%) | -12.9 | -10.6 | - | -12.2 | -11.5 | - |
対GDP比(%) | -15.4 | -12.7 | - | -14.7 | -13.9 | - |
輸出 | 13366 | 13740 | 2.8 | 25971 | 25937 | -0.1 |
輸入 | 26151 | 25031 | -4.3 | 49305 | 49465 | 0.3 |
サービス収支 | 2180 | 3251 | 49.2 | 4914 | 5941 | 20.9 |
第一次所得収支 | 712 | 1224 | 71.8 | 1470 | 2532 | 72.3 |
第二次所得収支 | 6609 | 6670 | 0.9 | 13194 | 13314 | 0.9 |
資本移転等収支 | 16 | 18 | 15.4 | 30 | 33 | 10.4 |
金融収支(マイナス勘定) | -1682 | -225 | 86.6 | -2536 | -5719 | -125.5 |
直接投資 | -2671 | -666 | 75.1 | -3702 | -1756 | 52.6 |
証券投資 | 1021 | -1343 | -231.5 | 2633 | -4372 | -266.0 |
金融派生商品 | 16 | -47 | -394.3 | -53 | -87 | -66.0 |
その他投資 | -48 | 1831 | 3898.8 | -1415 | 496 | 135.0 |
誤差脱漏 | -443 | 893 | 301.4 | -2066 | 777 | 137.6 |
国際総合収支 | -2030 | 991 | 148.8 | -3257 | 4788 | 247.0 |
対GNI比(%) | -2.0 | 0.9 | - | -1.7 | 2.3 | - |
対GDP比(%) | -2.5 | 1.1 | - | -2.0 | 2.8 | - |
参考:OFW等の個人送金額合計 | 7978 | 8154 | 2.2 | 15787 | 16252 | 2.9 |
うち銀行経由分 | 7173 | 7340 | 2.3 | 14179 | 14638 | 3.2 |
[対外収支の長期的な動き]
フィリピンの貿易収支は慢性的大幅赤字であるものの、経常収支はOFW送金効果などで2003年に黒字転換した後、黒字拡大基調が続き、2013年には113億8,400万米ドル(対GDP比4.2% )という史上最高の黒字を記録、2015年まで13年連続で黒字を継続してきた。しかし、2016年に11億9,900万米ドルの赤字に転落、黒字継続が途切れてしまった。そして、2017年、2018年と3年連続の赤字となってしまった。すなわち、OFW効送金効果で経常収支黒字継続というフィリピン経済の強みが、一時的にしても消えている状況は要注意といえよう。
一方、国際総合収支も2005年から2013年まで9年連続で黒字が続いたが、2014年に28億5,800万米ドルの赤字に転落した。2015年には一旦黒字に復帰したが、2016年、2017年連続の赤字となり、経常収支と同様に、2018年も3年連続の赤字となってしまった。OFW送金は底堅く推移しているが、今後、物資貿易収支赤字をどの程度カバーしていくか、その結果対外収支がどのように推移していくかが注目される。