比の年金制度、健全性評価で最下位(37カ国中)

総合指数34位、日本も31位と低評価:マーサー調査

2019/10/23

 年金、資産運用など幅広いコンサルティングサービスを提供するグローバル企業であるマーサー(本社:ニューヨーク)が、「マーサー・メルボルン・グローバル年金指数ランキング」 (2019年度)を発表した。

 調査査開始から今年で11年目となる今回のマーサー・メルボルン・グローバル年金指数 (MMGPI)では、世界人口のほぼ3分の2を網羅する37カ国の年金制度を比較検証している。そして、世界の年金制度の多種多様性を顕在化し、世界最高水準の制度でさえ欠点を内包することを示している。それぞれの年金制度には独自の事情があるが、当研究レポートは、すべての地域が直面している課題に対し共通する改善点があることを明らかにしている。2019年度の指数は調査対象として新たにフィリピン、タイ、トルコの制度を追加した。

 各国の制度の総合指数は、「十分性 (Adequacy)」、「持続性 (Sustainability)」、「健全性 (Integrity)」に大別される40以上の項目から構成され、この3つの項目指数を加重平均して算出している。2019年度の指数は、純所得代替率、すなわち、退職前雇用所得に対する年金給付額の比率の計算において新しいアプローチが採用されている。これまでの殆どの指数レポートでは、純所得代替率は所得の中央値に基づいて計算されていたが、本レポートでは、所得水準の範囲について経済協力開発機構のデータを使用し、より幅広い退職者グループのデータが反映されている。

<37カ国・地域の数値による分析>
 オランダは指数が最も高く(81.0)、過去11年のMMGPIレポートのうち10年において一貫して1位または2位の座を維持している。最も指数が低かったのはタイであった(39.4)。 日本は48.3で37カ国中31位と低い評価であった。初めて評価対象となったフィリピンは43.7で34位とランクされた。

 各サブ指数で最も高い指数となったのは、十分性ではアイルランド(81.5)、持続性ではデンマーク(82.0)、健全性ではフィンランド(92.3)であった。最低指数は、十分性ではタイ(35.8)、持続性ではイタリア(19.0)、健全性ではフィリピン(34.7)だった。フィリピンは最下位の健全性のほか、十分性でも39.0で35位と非常に低い評価であった。持続性だけが55.5で平均の50.4を上回っただけである。

 今回の日本の結果について、マーサージャパンのプリンシパルである北野信太郎氏は、「日本の数値は各指数も総合指数も、昨年と大きな変化はなかった。一方で、今年の6月に金融庁が発表した報告書、いわゆる「老後2,000万円」問題が大きく話題を呼んだように、当指標の十分性が低い、というのも、国民一人一人が実感しているのではないかと思う」とコメントしている(19年10月21日のマーサージャパン株式会社ニュースリリースより)。