大手銀行決算:BDOが純利益額、増益率とも首位

ROEや純金利率も1位、総資産は唯一の3兆ペソ超

2019/11/28

 フィリピンの銀行業界の業績は2019年9カ月間(1月~9月)も底堅く推移、事業基盤もさらに拡充されつつある。
 
 ビジネスワールド紙によるフィリピン商業銀行レポートによると、2019年9月末の商業銀行(拡大商業銀行{ユニバーサバンク}含む46行)の総資産は前年同月比9.9%増の17兆3,020憶ペソに達した。融資残高は同9.1%増の9兆5,040億ペソとなった。商業銀行の事業基盤は順調に拡大しているといえよう。
 
 健全性においても、不良債権(NPL)比率は1.66%と依然低水準。韓国の韓進重工業の現地法人である韓進重工業フィリピン(HHICP、スービック造船所)の経営破綻などにより、前年同月末の1.40%というほぼ過去最低水準からは小幅上昇したが、11年前の4.52%、アジア通貨危機後の最悪であった2002年第1四半期末の17.60%から大幅に改善している。NPL引当率も107.97%と良好な水準である。また、第3四半期の自己資本利益率は(ROE)は6.95%で第2四半期の9.13%を下回ったが、前年同期の4.82%からは上昇した。

 フィリピン証券取引所(PSE)上場の民間銀行の2019年9カ月間(1月~9月)決算が出そろった。上位行の動向は以下のとおり。
 
 資産規模では、BDOユニバンク(BDO)が総資産(3兆0,922億ペソ)、純資産(3,640億ペソ)、受け入れ預金残高(2兆4,090億ペソ)、融資残高(2兆1,414億ペソ)いずれもトップとなっている。総資産2位はメトロポリタンバンク&トラスト(メトロバンク)の2兆3,293憶ペソ、3位はバンク・オブ・ザ・フィリピン・アイランズ(BPI)の2兆1,258億ペソとなっている。バーゼル3基準のリスク加味自己資本比率(CAR)では、セキュリティバンクが17.97%と非常に高水準であることが目立つ。
 
 今9カ月間の帰属純利益はBDOが321億ペソで断トツ、2位がBPIの220億ペソ、3位がメトロバンクの216億ペソと続く。増益率トップはBDOの49.2%、以下リサール商業銀行(RCBC)の40.6%、ユニオンバンク(UOB)の40.2%と続く。純金利マージン(純金利収入対収益資産比率)首位もBDOの4.12%、自己資本利益率(ROE)でもBDOが12.53%で首位となっている。
 
 BDOは近年事業規模、収益ともに急成長を続けてきており、今9カ月間決算、9月末の各資産規模でほぼ断トツとなっている。それに次いで、メトロバンクやBPIの総合力の強さ、セキュリティバンクの財務内容の良好さ、RCBCの業績回復などが目立っている。

 
フィリピン民間上位銀行の2019年9月末の資産等の状況(単位:億ペソ)
銀行名 総資産 純資産 自己資本比率(CAR) 預金残高 融資残高
BDOユニバンク 30,922 3,640 14.63% 24,090 21,414
メトロバンク 23,293 3,136 17.60% 15,766 14,124
BPI 21,258 2,712 17.00% 16,199 13,718
PNB 11,795 1,519 14.58% 8,210 6,448
チャイナバンク 9,537 929 12.73% 7,772 5,525
セキュリティバンク 8,069 1,178 17.97% 4,865 4,438
ユニオンバンク 6,858 970 15.50% 4,183 3,463
RCBC 6,707 847 14.07% 4,242 4,336
 
 
フィリピン民間上位銀行の2019年9カ月間の収益動向(単位:億ペソ)
銀行名  純金利収入 伸び率 帰属純利益 伸び率 純金利率 ROE ROA
BDOユニバンク 884.6 23.7% 321.1 49.2% 4.12% 12.53% 1.40%
メトロバンク 562.4 10.3% 215.8 28.8% 3.91% 9.79% 1.26%
BPI 486.6 19.8% 220.3 29.5% 3.10% 10.40% 1.20%
PNB 233.8 16.9% 53.4 -28.3% 3.18% 6.11% 0.79%
チャイナバンク 186.5 9.2% 67.0 20.6% 3.29% 9.92% 0.99%
セキュリティバンク 188.6 23.4% 76.9 17.7% 3.69% 9.03% 1.33%
ユニオンバンク 157.4 8.3% 85.2 40.2% 3.70% 12.20% 1.70%
RCBC 164.0 10.4% 45.1 40.6% 3.86% 7.26% 0.92%
(出所:各銀行の事業報告書などより作成)