日系企業の中期的有望展開先、比が7位に上昇
長期的でも8位に上昇:JBIC日系製造業調査
2019/11/29
国際協力銀行(JBIC)は、日本の製造業企業の海外事業展開の動向に関するアンケート調査を実施し、11月27日に結果を発表した。
今回の調査は、本年6月に調査票を発送し、7月から9月にかけて回収したものである(対象企業数1,004社、有効回答数588社、有効回答率58.6%)。本調査は、海外事業に実績のある日本の製造業企業の海外事業展開の現況や課題、今後の展望を把握する目的で1989年から実施しており、今回で31回目となる
本年度調査では、「事業実績評価」、「事業展開見通し」、「中期的な有望事業展開先国・地域」などの定例テーマに加え、個別テーマとして「米中摩擦の影響」と「オープン・イノベーションの海外展開」につき調査を実施した。 本調査結果の要旨は以下のとおり。
(1)海外事業は不透明な情勢の中での模索が続く。
(2)有望国調査ではインドが首位。中国の2位転落がアジア各国に再評価の機会をもたらしている。
(3)米中摩擦の影響が広がる中、日本企業は両国との共存の道を模索している。
(4)イノベーションは海外展開への期待を高めており、とりわけ上海に注目が集まっている。
(5)今後は、技術の探索力と課題解決を提案する訴求力、それを支える組織力が海外で試される。
(2)の有望国調査における、今後3年程度の有望な事業展開先国については、下表のとおり、インドが3年ぶりに首位に返り咲いた。中国の得票率が大幅に低下する中で相対的に浮上したという側面もあるが、日本企業によるインド事業が幅広い業種で本格化する兆候も確認できており、今回の順位変動が一時的なものとは言い切れない可能性もある。同時に、アジア各国、とりわけベトナム、タイをはじめ、フィリピン、ミャンマーなど、次なる有望国も見え始めており、中国の後退がアジア各国に再評価の機会をもたらしている。
東南アジア諸国では、2017年を境にベトナム、タイの上位陣と、その他の下位陣という構造が定着しており、今年もその構造は継続した。ただし今年度の調査では、足元の得票率は低いものの次世代の有望国候補として、フィリピン、ミャンマー、マレーシアが底堅く推移しており、浮上の機会を待っている様子がうかがえた。今年は既にフィリピンがメキシコをわずかに上回っており、今後、こうした国々が順位を上げられるか期待される。フィリピンでは「現地マーケットの収益性」が有望理由の上位となっており、内需への期待の高さもうかがえる。
なお、フィリピンは中期的有望事業展開先として、2001年にベストテン入りを逃して以来、2008年まで順位の下落傾向が続いた。特に、2008年は、21位とベスト20からも転落した。その後は、2009年13位、2010年と2011年ともに14位、2012年15位であったが、2013年は11位へと上昇、2014年も連続で11位となった。そして、2015年は8位に上昇、15年ぶりのベスト10入りとなり、2018年まで4年連続で8位が続いてきた。そして、2019年はメキシコを抜き7位となった。2019年の得票率は11.9%で、2014年から6年連続で10%を上回った。しかし、3位のベトナム(36.4%)、4位のタイ(32.9%)、5位のインドネシア(25.2%)という他のASEAN主要国に水を開けられている。ちなみに、フィリピンは2001年度以前は1997年度が7位、1998年度が6位、1999年度が7位、2000年度10位と推移していた。
長期的(10年程度)有望事業展開先に関しても、フィリピンに対する近年の評価は高くなかった。速報資料では総合10位までの順位が明示されているが。近年ではフィリピンは2015年までランク外であった。しかし、2016年は10位にランクイン、2018年まで10位(が続いてきた。そして、2019年は8位(得票率11.8%)へと上昇した。ただし、中期的有望事業展開先と同様に、3位のベトナム(34.8%)、4位のとインドネシア(28.4%)、5位のタイ(24.7%)とは大きな差が付いている。また、7位のミャンマー(13.2%)の後塵を拝している。
なおJBICは、今回の調査結果を踏まえ、国際的な競争にさらされている日本企業の海外事業展開支援及び各国・地域の投資環境改善に向けた現地政府当局や関係機関との対話などを引き続き行っていく方針である(19年11月27日の株式会社国際協力銀行プレスリリースなどより)。
日本製造業企業の中期的有望事業展開先国・地域の推移(1企業5カ国までの複数回答:JBIC調査)
(出所:JBIC発表資料より)
日本製造業企業の長期的有望事業展開先国・地域の推移(1企業5カ国までの複数回答:JBIC調査)
(出所:JBIC発表資料より)
今回の調査は、本年6月に調査票を発送し、7月から9月にかけて回収したものである(対象企業数1,004社、有効回答数588社、有効回答率58.6%)。本調査は、海外事業に実績のある日本の製造業企業の海外事業展開の現況や課題、今後の展望を把握する目的で1989年から実施しており、今回で31回目となる
本年度調査では、「事業実績評価」、「事業展開見通し」、「中期的な有望事業展開先国・地域」などの定例テーマに加え、個別テーマとして「米中摩擦の影響」と「オープン・イノベーションの海外展開」につき調査を実施した。 本調査結果の要旨は以下のとおり。
(1)海外事業は不透明な情勢の中での模索が続く。
(2)有望国調査ではインドが首位。中国の2位転落がアジア各国に再評価の機会をもたらしている。
(3)米中摩擦の影響が広がる中、日本企業は両国との共存の道を模索している。
(4)イノベーションは海外展開への期待を高めており、とりわけ上海に注目が集まっている。
(5)今後は、技術の探索力と課題解決を提案する訴求力、それを支える組織力が海外で試される。
(2)の有望国調査における、今後3年程度の有望な事業展開先国については、下表のとおり、インドが3年ぶりに首位に返り咲いた。中国の得票率が大幅に低下する中で相対的に浮上したという側面もあるが、日本企業によるインド事業が幅広い業種で本格化する兆候も確認できており、今回の順位変動が一時的なものとは言い切れない可能性もある。同時に、アジア各国、とりわけベトナム、タイをはじめ、フィリピン、ミャンマーなど、次なる有望国も見え始めており、中国の後退がアジア各国に再評価の機会をもたらしている。
東南アジア諸国では、2017年を境にベトナム、タイの上位陣と、その他の下位陣という構造が定着しており、今年もその構造は継続した。ただし今年度の調査では、足元の得票率は低いものの次世代の有望国候補として、フィリピン、ミャンマー、マレーシアが底堅く推移しており、浮上の機会を待っている様子がうかがえた。今年は既にフィリピンがメキシコをわずかに上回っており、今後、こうした国々が順位を上げられるか期待される。フィリピンでは「現地マーケットの収益性」が有望理由の上位となっており、内需への期待の高さもうかがえる。
なお、フィリピンは中期的有望事業展開先として、2001年にベストテン入りを逃して以来、2008年まで順位の下落傾向が続いた。特に、2008年は、21位とベスト20からも転落した。その後は、2009年13位、2010年と2011年ともに14位、2012年15位であったが、2013年は11位へと上昇、2014年も連続で11位となった。そして、2015年は8位に上昇、15年ぶりのベスト10入りとなり、2018年まで4年連続で8位が続いてきた。そして、2019年はメキシコを抜き7位となった。2019年の得票率は11.9%で、2014年から6年連続で10%を上回った。しかし、3位のベトナム(36.4%)、4位のタイ(32.9%)、5位のインドネシア(25.2%)という他のASEAN主要国に水を開けられている。ちなみに、フィリピンは2001年度以前は1997年度が7位、1998年度が6位、1999年度が7位、2000年度10位と推移していた。
長期的(10年程度)有望事業展開先に関しても、フィリピンに対する近年の評価は高くなかった。速報資料では総合10位までの順位が明示されているが。近年ではフィリピンは2015年までランク外であった。しかし、2016年は10位にランクイン、2018年まで10位(が続いてきた。そして、2019年は8位(得票率11.8%)へと上昇した。ただし、中期的有望事業展開先と同様に、3位のベトナム(34.8%)、4位のとインドネシア(28.4%)、5位のタイ(24.7%)とは大きな差が付いている。また、7位のミャンマー(13.2%)の後塵を拝している。
なおJBICは、今回の調査結果を踏まえ、国際的な競争にさらされている日本企業の海外事業展開支援及び各国・地域の投資環境改善に向けた現地政府当局や関係機関との対話などを引き続き行っていく方針である(19年11月27日の株式会社国際協力銀行プレスリリースなどより)。
日本製造業企業の中期的有望事業展開先国・地域の推移(1企業5カ国までの複数回答:JBIC調査)
中期的(今後3年程度) | |||||
調査年度 | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 2019年度 |
回答社数 | 433社 | 483社 | 444社 | 431社 | 404社 |
1位 | インド(175社) | インド(230社) | 中国(203社) | 中国(225社) | インド(193社) |
2位 | インドネシア(168社) 中国(168社) |
中国(203社) | インド(195社) | インド(199社) | 中国(180社) |
3位 | インドネシア(173社) | ベトナム(169社) | タイ(160社) | ベトナム(147社) | |
4位 | タイ(133社) | ベトナム(158社) | タイ(153社) | ベトナム(146社) | タイ(133社) |
5位 | ベトナム(119社) | タイ(142社) | インドネシア(147社) | インドネシア(131社) | インドネシア(102社) |
6位 | メキシコ(102社) | メキシコ(125社) | 米国(116社) | 米国(124社) | 米国(93社) |
7位 | 米国(72社) | 米国(93社) | メキシコ(81社) | メキシコ(59社) | フィリピン(48社) |
8位 | フィリピン(50社) | フィリピン(51社) | フィリピン(47社) | フィリピン(43社) | メキシコ(47社) |
9位 | ブラジル(48社) | ミャンマー(49社) | ミャンマー(40社) | ミャンマー(37社) | ミャンマー(41社) マレーシア(41社) |
10位 | ミャンマー(34社) | ブラジル(35社) | ブラジル(28社) 韓国(28社) |
マレーシア(36社) | |
比順位 | 8位(50社) | 8位(51社) | 8位(47社) | 8位(43社) | 7位(48社) |
日本製造業企業の長期的有望事業展開先国・地域の推移(1企業5カ国までの複数回答:JBIC調査)
長期的(今後10年程度) | |||||
調査年度 | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 2019年度 |
回答社数 | 301社 | 364社 | 337社 | 350社 | 296社 |
1位 | インド(165社) | インド(226社) | インド(214社) | インド(205社) | インド(155社) |
2位 | インドネシア(109社) | 中国(143社) | 中国(146社) | 中国(164社) | 中国(119社) |
3位 | 中国(105社) | インドネシア(137社) | ベトナム(115社) | インドネシア ベトナム(115社) |
ベトナム(103社) |
4位 | ベトナム(82社) | ベトナム(119社) | インドネシア(109社) | インドネシア(84社) | |
5位 | タイ(70社) | タイ(89社) | タイ(80社) | タイ(105社) | タイ(73社) |
6位 | ブラジル(61社) | メキシコ(59社) | 米国(78社) | 米国(76社) | 米国(62社) |
7位 | ミャンマー(57社) | ミャンマー(58社) | ミャンマー(48社) | ミャンマー メキシコ ブラジル(41社) |
ミャンマー(39社) |
8位 | メキシコ(50社) | 米国(55社) | メキシコ(45社) | フィリピン(35社) メキシコ(35社) |
|
9位 | 米国(43社) | ブラジル(48社) | ブラジル(43社) | ||
10位 | ロシア(31社) | フィリピン(33社) | フィリピン(33社) | フィリピン(30社) | マレーシア(25社) |
比順位 | 記載なし | 10位(33社) | 10位(33社) | 10位(30社) | 8位(35社) |