ホンダのフィリピン生産撤退表明が波紋

輸入車規制の動き加速化の可能性

2020/02/26

 先頃、フィリピン自動車工業会(CAMPI)は、「2019年のフィリピン国内四輪車新車販売台数(CAMPIとトラック工業会加盟企業分:以下工業会加盟企業分と記す)は、前年比3.5%増の36万9,941台へと小幅増加した」と発表した。 このような工業会加盟企業分と自動車輸入販売企業協会(AVID)加盟企業分の合計から重複加盟分(フォードなど)を調整し、非加盟独立系企分を加えた2019年のフィリピン新車総販売台数は前年比3.7%増の約41万6,640台に達したと見られる。

 フィリピン新車販売台数は2017年まで大幅増加が続き、同年の総販売台数は約47万4千台に達した。それからは足踏み状態となってはいるが、40万台超という高水準のペースで推移している。その一方、生産台数は非常に低水準である。ASEAN自動車連盟(AAF)発表によると、フィリピンの生産台数は2018年7万9,673台、2019年9万5,094台と10万台以下の水準で推移している。ASEAN主要生産国で最低であり、ベトナムの半分程度に過ぎない。

 すなわち、フィリピンの新車販売の大半は輸入車である。労働組合「フィリピン・メタルワーカーズ・アライアンス(PMA)」による「2014年に15万3,000台だったフィリピンの完成車輸入は2018年に20万7,000台に増加した」との発表があるが、統計上は、それ以上の輸入車が流入している。このような状況下、フィリピン貿易産業省(DTI)は、輸入車流入を抑え現地生産を活発化すべく、輸入完成車に対するセーフガード発動に向けた調査を開始したと表明している。


 こうしたなか、本田技研工業(ホンダ)と、フィリピンにおける四輪車生産・販売拠点であるホンダカーズ・フィリピン・インコーポレーテッド(HCPI、本社:ラグナ州サンタロサ市)は、2月22日、「フィリピンでの四輪車生産を2020年3月で終了する」と発表した。HCPIの2019年の販売台数は、下表のとおり、前年比12.7%減の2万0,388台と低調、シェアも4.9%で第7位と後退している。このようななか、フィリピンでの現地生産中止、全て輸入販売へとシフトすることを決定した。

 
このホンダの発表が現地で波紋を広げている。貿易産業省のラモン・ロペス長官は、HCPIに生産中止の決定の再考を促すとともに、輸入車セーフガード措置発動を仄めかし、輸入への転換はプラスにならないと訴えている。しかし、輸入を抑制するのではなく、生産拡大のための根本的かつ本格的な対策が必要な状況であると考えられる。

表1.2019年フィリピン新車販売における上位10ブランド
順位 ブランド名 販売台数 シェア 前年比
1位 トヨタ 161,395 38.7% 5.9%
2位 三菱 64,065 15.4% -3.0%
3位 日産 42,694 10.3% 22.2%
4位 現代 33,762 8.1% -4.6%
5位 スズキ 23,319 5.7% 21.2%
6位 フォード 21,900 5.3% -7.1%
7位 ホンダ 20,388 4.9% -12.7%
8位 いすゞ 13,971 3.4% -16.5%
9位 MG 5,085 1.2% -
10位 起亜 5,019 1.2% 124.3%
総販売 416,640 100.0% 3.7%
(出所:CAMP等の資料から作成:トヨタにレクサス含まれず)

 2019年ASEAN自動車生産台数比較
国名 12月 1-12月
インドネシア 2019 98,295 1,286,848
2018 98,461 1,343,714
伸び率 -0.2% -4.2%
マレーシア 2019 43,299 571,632
2018 42,400 564,971
伸び率 2.1% 1.2%
ミャンマー 2019 1,404 15,496
2018 1,429 12,292
伸び率 -1.7% 26.1%
フィリピン 2019 7,230 95,094
2018 4,109 79,763
伸び率 76.0% 19.2%
タイ 2019 134,208 2,013,710
2018 169,355 2,167,694
伸び率 -20.8% -7.1%
ベトナム 2019 15,564 176,203
2018 16,263 200,436
伸び率 -4.3% -12.1%
合計 2019 300,000 4,158,983
2018 332,017 4,368,870
伸び率 -9.6% -4.8%
(出所:ASEAN自動車連盟資料より作成)