ドゥテルテ大統領も富士フイルムのアビガン重視

ASEAN+3にて臨床試験開始を既に用意と発言

2020/04/17

 4月14日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するASEAN+3(日中韓)特別首脳テレビ会議が開催された。今回の会合は、本年のASEAN議長国であるベトナムの呼びかけで開催された。ASEAN+3首脳間でテレビ会議が行われるのは初めてである。

 本会合では、COVID-19に関し、日中韓及びASEANの各国内の経済状況や地域における感染拡大防止策について議論が行われた。安倍総理大臣は、日本の状況を紹介の上、COVID-19が猛威を振るう中、事態を収束するためには、ASEAN及びアジア地域における協力の拡大がきわめて重要であること、また、その前提として、自由、透明、迅速な形で各国が持っている情報や知見を共有すべきと述べた。そして、ASEAN感染症対策センターの設立等、強固な連携を通じ、国境を超えて感染が拡大しているウイルスと対峙すべきであると述べ、各国の賛同を得た。本会合では、富士フイルム富山化学のアビガン(一般名:ファビピラビル)への言及も多く、安倍総理大臣は、アビガンの臨床研究を拡大していくことを説明し、ウイルスとの闘いの切り札ともなる治療薬の早期開発の重要性について一致した。

 4月16日付けフィリピン政府通信社ニュースによると、フィリピンのドゥテルテ大統領も、「COVID-19と戦うには、ワクチンと抗ウイルス治療の研究開発の分野で科学的協力を強化する必要がある。各国や関連する多国間機関の義務は、すべての国がワクチンと治療に公平かつ容易にアクセスできるようにすることである。モダリティ医療に関する議論を開始すべきだ」と強調した。

 そして、「COVID-19疾患の治療の可能性がある日本の抗ウイルス薬であるアビガンのCOVID-19治療の臨床試験を開始、他の国々と協力する用意がある。フィリピンは、アビガンなどの潜在的な医薬品やワクチンの臨床試験や医学研究に参加する準備ができている。地域内外の科学者や専門家がこの巨大な課題に立ち向かうとも確信している」と協調した。

 なお、富士フイルムは、4月15日、富士フイルム富山化学にて、COVID-19向けに抗インフルエンザウイルス薬「アビガン」の生産体制を拡大し、増産を開始したと発表した。「アビガン」は、既に国内では抗インフルエンザウイルス薬として製造販売承認を取得している薬剤で、ウイルスのRNAポリメラーゼを選択的に阻害することでウイルスの増殖を防ぐというメカニズムを有している。このようなメカニズムの特徴から、インフルエンザウイルスと同種のRNAウイルスであるCOVID-19に対しても効果が期待されており、既に臨床研究や観察研究の枠組みの中でCOVID-19患者に対する「アビガン」投与が開始されている。
 
 日本政府は、COVID-19がますます拡大する中、緊急経済対策の1つとして「アビガン」の備蓄量を200万人分まで拡大することを決定した。「アビガン」は富士フイルム富山化学が開発し、2014年3月に新型又は再興型インフルエンザウイルスを適応症として国内で製造販売承認を取得した抗インフルエンザウイルス薬である。既に日本政府は、新型インフルエンザに備えて「アビガン」を備蓄している。

 今回、富士フイルムは、グループ会社である富士フイルム和光純薬にて医薬品中間体の生産設備を増強するとともに、原料メーカーや各生産工程における協力会社など国内外の企業との連携により「アビガン」の増産を推進。今後、段階的に生産能力を向上させて、本年7月には約10万人分/月(生産を開始した3月上旬と比べて約2.5倍)、同9月には約30万人分/月(同約7倍)の生産を実現していく。さらに、「アビガン」の原薬製造設備も増強して生産能力のさらなる拡大を図り、日本政府の備蓄増や海外からの提供要請に対応していく。