マスクの横井定、フィリピン生産能力倍増へ

クラークにて、不織布等の原料製造開始も計画

2020/06/28

  フィリピン貿易産業省によると、マスク専門メーカーである横井定(本社:名古屋市瑞穂区)は、フィリピン事業を拡大、フェイスマスクの現在の生産能力を倍増する計画を発表した。また、中国からの原料輸入依存度を低下すべく、マスク用の不織布とイヤループの原料の製造を開始する予定である。
 
 横井定のフィリピン拠点は、2013年10月設立のYOKOISADA (PHILS.) CORPORATION(横井定フィリピン、本社:パンパンガ州アンヘレス市クラーク自由港区、従業員約180名)。世界的な新型コロナ感染拡大に伴うマスク需要の拡大・良質なマスク供給不足という状況下でのマスク増産依頼を受け、横井定フィリピンでの大幅増産を決定するに至った。

 なお、横井定フィリピン工場で生産されるマスクの基本性能は、アメリカ医療マスク規格(ASTM-F2100)に準拠したもので、燃焼性・圧力損失・血液バリア性の数値基準準拠に加え、PFE(微粒子濾過効率)99%・VFE(ウイルス濾過効率)99%・BFE(細菌濾過効率)99%となっている。今回の新型コロナウイルス感染拡大前までは、フィリピンで輸出規格を満たす外科用フェイスマスクを生産できるのは2社のみであったが、そのうちの1社が横井定フィリピンである。ただし、原料は現地調達が困難なため輸入に依存してきたという経緯がある。

 新型コロナウイルス対策としての今年3月央の地域隔離措置により、横井定フィリピンも、作業員の確保、原材料の物流、人員の移動などの操業の問題に直面した。しかし、貿易産業省、投資委員会、クラーク開発公社、大阪のフィリピン総領事館の協力もあって、生産体制は正常化されつつある。フィリピン側も「横井定のフィリピン事業環境に対する信認に感謝する。横井定の増産は、フィリピンのマスク製造サプライチェーンの改善、良質なマスクの安定供給に貢献することになろう」との謝意と期待を表明した。

 横井定本社は1950年創業、「日本マスク」のブランドで半世紀以上マスクを製造販売してきた。この「日本マスク」は、日本という国名と一般商品名であるマスクを併せた登録商標になっており、商標でこのような例はほとんど認められていない。横井定に認められたのは、日本で使われているマスクの普及に大きく関与してきた経歴があるからとのことである。

 横井定の不織布マスクのマスク生産には、マスク本体が出来上がるまで人の手が触れない全自動機を使用されている。製造・検品・箱詰めまでの全てがクリーンルーム内で生産管理されている。生産拠点は、横井定フィリピンのほか、中国南通市の南通三喜横井定衛生材料有限公司(従業員約40名)である。まず、1996年に中国進出、そして、上記のように2013年にフィリピンに進出した。